北京オリンピック
女子フィギュアスケートは、
誰もが望まない結果となってしまいました。
ワリエワ選手を見たのはジュニアで世界一になったとき。
とんでもない実力はあったものの、
その時ロシア女子はすでにコストルナヤ選手、

今回金メダルを取ったシェルバコワ選手、
銀メダルのトゥルソワ選手の3人がシニアデビューを果たしていて、
その3人を飛び越えて北京オリンピックに出場するとは、
当時はまったく予想していませんでした。
本音を言えば、ワリエワ選手が出なくても、
コストルナヤ選手が出ていれば、
結局ロシアがメダル独占だったと思います。
12月末のロシア大会のテスト結果について、
オリンピック前のギリギリな段階になってから陽性違反の連絡。
選手を選出し送り込んだ立場のロシアとしては、
裁定に不満を持ち出場許可を求めるのは、
ある意味当然の行為だと思います。
ましてや金メダル最有力候補ですから。
ドーピング問題については、
どこまでがドーピングで、どこまでがサプリメントなのか?
ここ数年のサプリメントの発達と科学的エビデンスが合致していないのでは?
と、考えることもあります。
前回の平昌オリンピックでも
ショートトラックの日本人選手が同様に
ドーピング違反で自主的に選手団から抜けましたが、
個人でCSAに無罪を提訴し、その後
和解しています。
サイクルロードレースを見ても、
何年か後に薬物違反で永久失格という例がありましたが、
以前のステロイドのような筋肉増強をするのとは違って、
進化し続ける薬と、それに対応するWADAの仕事(検査も含めた)の遅さ。
医療の薬や漢方だって違反になるわけですから、
今回のコロナワクチン開発のスピードを見ても、
調査機関がそこに追いつくのは不可能だと思います。
このギャップが今回のワリエワ選手の悲劇の原因の1つと言えます。
今回の報道で、
トリメタジジンとともに検出された
L-カルニチンとハイポキセンについて、
あたかもドーピングのようなまぎらわしい表現。
悪意あるメディアも問題ありでしょう。
ワリエワ選手側は、
L-カルニチンとハイポキセンについては、
事前に飲んでいるサプリメントとして提出済み。
L-カルニチンなんて今どき誰でも飲んでるというか、
スーパーでもドラッグストアでもどこでも売っている商品。
普通にVAAMアスリートにも入ってますから。

L-カルニチンは、脂肪燃焼効果が高く、
中でもラム肉に豊富に入ってることで、
昨今のジンギスカンブームはL-カルニチンのおかげ(笑)。
ハイポキセンは疲労効果があるとされており、
ロシアではポピュラーなサプリメントのようで、
30粒で22ドルぐらいの商品。
そこに今回陽性反応が出たと言われる、
心筋症の治療薬に入っている
トリメタジジンが加わると、
より心肺機能が高められる可能性があるという話です。
ワリエワ選手のトリプルアクセルや4回転を跳ぶ技術と、
陽性になった薬とはまったく関係ないと考えられます。
もし、それで跳べるようになるとすれば、
もっとたくさんの人が使っていてもおかしくないはず(笑)。
トリメタジジンの効果があるとすれば、
フリースケーティングでの体力切れを防ぎ、
最後まで高難度のジャンプを入れながら滑りきれるということでしょう。
ロシアや旧ソビエトと東欧はドーピングを繰り返していた事実もあり
国ぐるみで行っていると思われがちですが、
コーチのエテリさんが率先して
ドーピングを推奨していたとは考えにくいでしょう。
同じように教えているシェルパコワ選手、トゥルソワ選手、
過去にもザギトワ選手やメドベージェワ選手いましたから。
ただ、チームスタッフの中のメディカル、
もしくは食事関係のスタッフの中に、
そうしたことが行える人がいたとは考えられます。
エテリさんというか、フィギュアスケートのコーチの役割ですが、
マンツーマンの師弟関係のように思われがちですが、
メダルを獲るような選手は完全にチーム体制です。
メインコーチ、サブコーチ、
回転不足などジャッジ視点でチェックをするコーチなどの他、
振り付け師、個人でフィジカルコーチ、表現力を上げるコーチ、
栄養士など多種多彩なコーチを付けます。
とはいえメインコーチは子供の頃から持ち上がりで教えることが多く、
それは親子関係を超える場合もあります。
ただし、チームで動く以上、選手の順列が明確になります。
例えばシェルバコワ選手がそれまで1番だったのが、
今はワリエワ選手が1番に。
その順列は、教える順番だったり、
細々とそれぞれのチームでルールがあるようです。
選手の多くはまだ10代の子供ですから敏感に反応します。
一方で、フィギュアスケートほど選手が自由にコーチを選べる権利があり、
他のスポーツよりもはるかに自由です。
浅田真央さんがジュニア時代は山田満知子コーチ。
シニアに上がってからは、
アルトゥニアンコーチ、タラソワコーチ、
そして佐藤信夫コーチと変わっているのを見てもわかります。
ロシアの場合、次々と有望選手が出てくるので、
選手の使い捨てのように見えるかもしれませんが、
決してそんなことはなく、
チーム内の順列と選手の感情の変化、
親離れをする子供みたいなところもあります。
ワリエワ選手はこれまでジャンプでステップアウトや両足着氷自体はあっても、
転倒自体が珍しく、しかも何度も転ぶというのはありえません。
彼女の意識の中に、「自分は跳んではいけない!」
というものに体が反応してしまったのは間違いないでしょう。
今回、ワリエワ選手がわざと転倒したというような
うがった見方もありますが、
4回転やトリプルアクセルを跳ぶのに、
わざと転ぶほど難しいものはないでしょう。
恐怖感も相当なものですから、
回転数を落として失敗するのならともかく…。
彼女の演技に対し、コーチのエテリさんが「なぜあきらめたの?」
と、極めて厳しい言葉を投げかけたことに否定的な見解も多く聞かれます。
試合に送り出した以上、ベストを尽くすのは当たり前のことで、
それができなかったことに対して、
厳しい言葉を投げかけことに違和感はありません。
一方で、その舞台に上がっただけでも
褒め称えるべきという考えもすごくわかります。
世界一を目指すには、本当はどちらも必要です。
それをどう感じて次につなげるのかは選手次第。
フィギュアスケート女子フリースケーティング最終組の5人は、
どの選手もベストな滑りでした。
ユヨン選手と樋口選手のトリプルアクセルは、
ここまでの努力の形がしっかりと出ていました。
4年間、自分の演技を磨き続けた坂本選手も最高の演技。
トゥルソワ選手は女子4回転をリードした選手。
一時期は低迷したものの、彼女の本領を発揮したプログラムをやり遂げました。

シェルバコワ選手の美しい滑りもメダルにふさわしいものでした。
ところが、ワリエワ選手の悲しい顔だけが記憶に残り、
誰も勝者のいない北京オリンピックになってしまいました。
PS.ドーピングに関するアレコレとして
JADA

スポーツ仲裁機構の
JSAA

のリンクを貼っておきます(笑)。
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Posted at
2022/02/19 23:22:41