Bリーグチャンピオンシップファイナルズ
琉球ゴールデンキングスが2戦連勝で、
初のBリーグ王者に輝きました。
これは日本のバスケ界にとってとても意味のある出来事です。
Bリーグ以前の日本バスケは、
協会主導のNBLに対して、
独自にスタートしたbj.リーグがあり、
相容れることのない2つのリーグに分裂したことで、
五輪予選出場すら危うい状況になったのです。
この原因の大本となったのは、
プロか?実業団か?実という、
日本のスポーツが抱える根本的な問題でした。
実業団チームは、企業の部活として
会社の福利厚生部門ということで成り立っています。
社内のファミリー的な関係性を築くための象徴、
体外的には企業イメージのアップ等、
部を持つことはメリットが多いにあったのです。
特にバスケはそもそも人数が少ないので、
部活として考えたら運営費も安上がり。
当時、年間2~3億程度の支出でまかなえたのです。
福利厚生費として税金対策にもなりますから、
企業にとっては一石二鳥だったのですが、
時代の変化による2つ出来事ががその関係性を崩しました。
1つは企業が福利厚生として部活を抱えるだけの余裕がなくなったこと。
もう1つはJリーグの誕生です。
1993年に華々しく誕生したJリーグでしたが、
実際は企業スポーツチームが前身であったため、
採算の見込みが曖昧なまま、
年俸だけで10億や20億の赤字を抱えるチームが出てきました。
Jリーグもバスケもバレーもほぼ同じ企業が前身です。
トヨタ、三菱、日立、松下、東芝…。
特にバスケはトヨタリーグと呼ばれるほど、
トヨタ、自動車関連の企業チームが多く、
Jリーグ初年度に名古屋グランパスが低迷の上、大赤字。
そうした影響もあり、プロ化には絶対的に反対でした。
プロ化して何十億もの赤字を出したらチームそのものがなくなる。
2~3億で部活の運営費をもらっていた方がいい。
協会、クラブ内でもその考え方が主流を占め、
Jリーグのプロ化が他スポーツのプロ化を滞らせるという、
なんとも皮肉なことが起きてしまいました。
選手の意識もまちまちで、
バレーなどはせっかくいい企業に就職できたのに、
プロで食べて行けなくなったらどうするの?!
という選手側からのプロに対する拒否反応もありました。
バスケは、1992年にバルセロナ五輪で生まれたドリームチームを機に、
NBAの世界的人気、さらにマンガ「スラムダンク」の人気、
2006年の世界選手権さいたまアリーナ開催も決まっていたのに、
そうした追い風を一切いかせないまま、
福利厚生型の企業スポーツはどんどん廃部に追い込まれ、
選手たちは行き場を失いました。
そこで2004年に誕生したbj.でした。
NBA型のショーアップしたスタイル、
バック企業がなくとも、独自にスポンサーを付けて、
2006年にリーグがスタート。
そこに2007年から沖縄のチーム、
琉球ゴールデンキングスが参加。
bj.時代、知人が「バスケがおもしろくて沖縄まで見に行っている友達がいる」
との話を聞いていて、エイサー踊りやら指笛など、
沖縄文化のそのままアリーナにそのまま持ち込んだ応援はとても新鮮でした。
以来、ゴールデンキングスは沖縄のバスケの象徴的存在になっていったのです。
Bリーグはようやく和解したNBLとbj.の混成リーグとも言えるのですが、
これまでのチャンピオンシップ王者はいずれもNBL時代からのチームでした。
ちなみに千葉ジェッツはbj.からNBLへと移籍したチーム。
Bリーグの開幕戦は、アルバルク東京vs琉球ゴールデンキングスでした。
東京の大企業がバックについたかつての色を強く残すチームと、
東京から遠く離れた大企業を持たないクラブとの対決でもあり、
NBL代表 vs.bj.代表の対決でもありました。
日本バスケの転換期を象徴するチームだったキングスですが、
Bリーグになって以降、毎年結果は出すものの王座には届かず。
昨季もファイナルまで進みながら宇都宮ブレックスに敗れており、
今シーズン、無敵とも言える戦いを見せたジェッツに対して、
キングスが勝つ確率は低いという大方の予想でした。
ところがフタを開けてみれば、
キングスがダブルオーバータイムを制して1勝。
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昨日、会場に行っていた自分でさえ、千葉ジェッツが1勝は取るだろう。
3戦目はテレビで見るかと思っていました。
圧倒的な得点力を誇るジェッツなら必ず修正してくると。
ところがキングスはそれを上回る綿密な分析によって、
千葉の得点源である冨樫選手以外のところは、
ロー選手、エドワーズ選手らを軒並み抑えていきました。
ディフェンスではローテーションしながら、
ストレスを掛け続けて相手のシュート確率を落としていきました。
一方、オフェンスは2ndユニットと呼ばれるスターター以外の選手が大活躍。
昨日も得点88点の内の45点が2ndユニットから。
中でも21点を上げたのがゲームMVPのフリッピン選手。
マッチアップした冨樫選手に対してはドライブを仕掛け、
原選手がついたときは3Pを放つなど、
彼の良さが存分に活かされていました。
フリッピン選手は高いアスリート力から繰り出す
ドライブとダンクに魅力がある選手ですが、
これまで3P成功率は約27%。
1試合打っても3~4本で、4本に1本ぐらいしか入らないとなると、
ジェッツ側はフリッピン選手の3Pはある程度打たせてもOK!
程度の指示は出ていたのかもしれません(笑)。
それが3/6。50%ですから、想定外だったと言えるでしょう。
松脇選手、牧選手も含め、ベンチメンバーの活躍がゲームを左右しました。
対する冨樫選手がクーリー選手に対してスピードで振り切る攻撃を仕掛けて、
なんとか追いつこうとするものの、彼一人ではどうにもなりません。
選手のコンディション、ベンチワークも含め、
琉球ゴールデンキングスが勝つべくして勝った内容でした。
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Bリーグでは関東以外のチームでは初の王者の誕生。
そしてbj.組からの初の王者に輝いたことになります。
キングスの優勝は日本のバスケとしては、
最良のシナリオだったのかもしれません。
今年、沖縄で育った宮城リョータの物語
「ザ・ファーストスラムダンク」が爆発的ヒット。
そして今回のキングスの優勝、
この夏には沖縄でのバスケワールドカップ開催が待っています。
さらに来年のBリーグオールスターの沖縄開催。
素晴らしい沖縄アリーナの誕生とともに、
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沖縄のバスケ文化が日本中に知れ渡るときが来た感じですね。
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沖縄には基地があるのでバスケがさかんなことは知っていましたが、
何十年も前に沖縄初のJリーガー 喜名哲裕さんの
お父さんに会った際、ご自身は若い頃バスケをされていて
沖縄にはいい選手がいっぱいると話していました。
もちろん、息子の喜名哲裕さんはサッカーもバスケも上手かったそう。
今、喜名哲裕さん沖縄のサッカーのために尽力していますが、
当時、Jリーガーのお父さんがバスケ好きということに対して、
とても沖縄らしいなと思ったのを記憶しています。
今回のキングス優勝を契機に、沖縄とバスケの関係が
ますますクローズアップされていきそうです。