プロレスは子ども時代の通過儀礼…
そんな風に思っていた時期がありました。
勧善懲悪の世界観で体現する強さは子どもにとってはとてもかっこよく、
強くて正義に満ち溢れたレスラーは誰よりも憧れの存在であると。
ある程度まで成長していくと、その世界観から卒業していってしまう。
プロレスにはそんなところがあります…。
ところが大人になって、再びプロレスラーに接してみると、
そのプロフェッショナルぶりに驚かされるとともに、
人間臭さにもまた惹かれます。
リングの上ではヒールとベビーフェイスを演じ分け、
リングを下りてもレスラーと生身の人園との差を瞬時に見せる。
プロレスのことを「本気じゃない」と嘲笑するような輩もいますが、
本気じゃなきゃあんなことはできません。
BOOKと呼ばれるストーリーは存在します。
ただ、リングの上では完全にアドリブ。
命をかけて相手の技を受け、自分の命をかけて技を繰り出す。
そのクレイジーさも含めて、プロレスラーにはリスペクトしかありません。
例えばこの試合、生で見てましたが、
ダイビングを受けた選手(エッジ)はそのまま担架で退場。
これはマジで病院送りだなと思っていたところ、
ホテルに戻ったらファンに囲まれて平気な顔でサインしてました(笑)
これも有名なシーンですが、ストーリーがあるからと言って、
練習をするわけでもないし、本当の一発勝負なわけです。
プロレスラーはリングの上で魅せるプロフェッショナルなんです。
ダーレン・アロノフスキー監督の映画「レスラー」の主人公のラムは、
ファンの期待に応えようとおそらく死ぬであろうことがわかっていながら、
トップロープからのダイビングシーンで終わります。
リングに上がった瞬間から大衆の望む世界を体現する。
これこそプロレスラーの本質だと思っています。
アントニオ猪木さんは世界でもっともそれを体現していたプロレスラーでした。
レスラー時代はもちろん、その後プロデューサー的な立場に立っても、
常識をとらわれないどころかそれをぶち壊すことで、
熱く激しい戦いの世界を創造する天才でもありました。
政治家にも進出しましたが、
プロレスラーは政治家には向いていると思います。
ミネソタ州知事になったジェシーベンチュラをはじめ、
有名レスラーのスピーチを何度も聞いているのですが、
もっとも一般大衆に近い目線の中で、
ベビーフェイスとヒールを使い分け、アジテーターとしても超一流です。
政治家として優秀かどうかは別にして、
政治的調整せずとも力技でなにかをやりきれる雰囲気もありますから(笑)。
まさにアントニオ猪木そのものです。
リング外でも大活躍した猪木氏ですが、晩年は病気の影響で様変わり。
それでもなに一つ隠すことなく病床から発信し続け、
人生という名のリングを降りるその瞬間まで
エンターテイナーとして魅せ続けた人でした。

Posted at 2022/10/02 01:40:03 | |
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