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映画「カセットテープダイアリーズ」











ブルース・スプリングスティーンに影響を受けた
イギリスのパキスタン移民少年の実話を下に作られた映画で、
時代背景といい、
スプリングスティーンに影響を受けたことといい、
とてもシンパシーを感じる内容。


もっとも主人公がスプリングスティーンと出会うのは
「Born in the USA」がすでに出た後。・
自分はアルバム「The River」、
もっと言うとシングル・カットされた「Hungry Heart」が原体験で、


その後、「Born to Run」やその他も後追いで聴いてからの
「Born in the USA」世代なので、
ちょっとだけ主人公より先輩です（笑）。

舞台がイギリスで、
サッチャリズム旋風吹き荒れる時代。
落ちぶれた大英帝国と言われ、
若者の失業率は10％以上だった記憶が…。

パンクと対抗するように
ナショナルフロント（右翼）が生まれ、社会は大荒れ。

主人公はパキスタン移民でムスリム。
強権的な父親の支配から抜け出すこともできず、
ただ唯一の自己表現が書くことだけ。
それを武器に街を離れて、都会の大学に行くことを夢見ている。
行き場のない閉塞感の中で、
救いとなったのがスプリングスティーンの歌でした。

ブルーワーカーのリアルを歌うスプリングスティーンの歌と、
主人公の心情がシンクロしながら、物語は進行していくのですが、
特にBorn to Runの入り方が秀逸です。



ロックの中でも、
BEST OF疾走感とも言える歌で、
サウンド的にも歌詞的にもかなり重厚なのですが、
疾走感を損なうことなく、今どきのミュージカル風に軽やかに映像化。
イントロを聴いただけで走り出したくなる感じがうまく表現されていて、
とてもいい！


青春成長物語としてもよくできているだけでなく、
サッチャリズムがもたらした労働者階級を描いた名作の流れを組みつつ、
現代のトランプ・アメリカを代表するレイシズムや分断の問題点にも
フォーカスしています。

スプリングスティーンの曲と対比するように流れる
80’sのユーロビート系の歌やファッションも
その世代の人なら全部知っていてそれだけでも笑えます。
もちろん、スプリングスティーンの歌詞や曲を知らなくても、
十分楽しめます。

最終的にはHappy Endな展開ですが、
「プロミスト・ランド」約束の地が、
スプリングスティーンの出身地のNJというオチもGOOD。

NJニューアーク空港からNYマンハッタンに入るとき、
いつもスプリングスティーンの歌を口付さみながら入る自分としては、
主人公の気持ちが痛いほどわかります（笑）。


ところでスプリングスティーンは、
一度だけ来日公演を代々木第一体育館で行っています。


その日のチケットは持っていて、
すでにお昼すぎに渋谷に行っていました。

とある用事で渋谷109の公衆電話から親に電話をかけたら、
一緒にそのコンサートに行くはずだった友達が死んだので、
「今すぐ帰ってこい！」とのこと…。

そんなこと、あります？

「帰らないでコンサートを見る」と言ったものの、
結局、お通夜はその日で火葬が早いとのことで、
コンサートを諦めました。
現実を受け入れたくない気持ちやせめて友達の分までという思いも…。
今でもあのコンサート、見たかったなと思うことがあります。

その後、いろいろなアーティストを見たけど、
未だにスプリングスティーンのコンサートは見られてません。

しかも、盟友のクラレンス・クレモンズも死んでしまったので、
もうBOSSとのKISSのシーンは見られません（涙）。


映画の中で、主人公がなんとか手に入れた
スプリングスティーンのコンサートのチケットを
父親が破り捨てるシーンがあって、
「それだけは止めて！」
と、ちょっと心が痛くなりました。