初のセンバツ高校野球。
東海地区の選抜枠決定後、
いろいろと話題になっています。
本来であれば東海大会の上位2高校が選ばれるはずが、
準優勝した静岡の聖隷クリストファーを選出せず、
ベスト4のうちの1つを選んだことに、「なぜ」という声が上がっているのです。
過去40年以上も優勝・準優勝高校を選抜しているだけに、
それをひるがえすだけの選考理由があまりに説得力がありません。
「個人の力量に勝る大垣日大か、
粘り強さの聖隷クリストファーかで
賛否が分かれましたが、
投打に勝る大垣日大を推薦校とします」
との選考委員の発言に対し、
「個人の力量に勝る」という点で、チームスポーツのあり方、
野球のあり方そのものに対してもネガティブな発言であり、
プロ野球関係者からも異論が出てきています。
偶然にも、今年の静岡秋季大会の準決勝は生観戦する機会がありました。
B3のベルテックスの試合が静岡であり、野球、バスケのダブルヘッダー観戦。
(ただし高校野球もう1試合は途中で抜けて残りはケーブルテレビ録画観戦)
決勝もケーブルテレビ録画で見ました。
その流れで、東海大会の結果も知っています。
静岡秋季大会を見て感じたのでは、上位3高校であっても未完成ということ。
そもそも秋の大会自体、3年生が抜けて新チームとして始動した時期。
どこの高校であっても未完成なのは当たり前なんですが。
それでも静岡県大会を制した日大三島は、
松永選手が投打で大事な場面で活躍。
チームとして声もよく出ていて勢いがあり、
みんなが楽しそうに野球をやっていて、
率いて2年めながら名将として知られる永田裕治氏の手腕の確かさを感じました。
2位の聖隷クリストファーは、スーパーな選手はいないのですが、
とにかく粘り強く戦い点を取っていくチームで、あきらめない姿勢が素晴らしい。
試合後半の得点力は特筆すべきものがあり、他に例を見ないタイプのチーム。
3位の静高は夏の甲子園に出た選手も残り、優勝候補筆頭で、
吉田優飛投手は最速147キロを誇ると前評判も高かったのですが、
ポテンシャルはプロにいける素材感はあるものの、
静高自体も、吉田投手も未完成感が強く、
夏までに仕上げていくチームという印象でした。
今回、大垣日大を選んだ理由の1つに
「特に前評判の高かった静岡高校の吉田投手を
打ち崩した連打は見事」
これを聞いたとき、正直「えっ?」と思いました。
静岡秋季大会を見て、完全に前評判倒れという印象しかなかったのです。
ちなみに大垣日大は、その後享栄高校の藤本投手を足も絡めた攻撃で
勝ったところ見てもそのチーム力は本物でしょう。
吉田投手に関して言えば、
11月オータムフレッシュカップという
静岡の高校と大学が対戦するエキシビションマッチで
慶応大学相手に7回2安打という見事なピッチングをしました。
その時の映像です。
186cmあるパワー系の投手ですが、まだ完全に体を使いきれておらず、
どこがぎこちなさがあります。
それでも140キロ台を出せるのだから、逸材であることには間違いありませんが、
ストレートですらフィニッシュの足の上げ方(角度)にバラツキがあり、
下半身の使い方が完全でないのかなという感じです。
また変化球とストレートで、テイクバック、腕の振りの速さが違う印象です。
慶応戦は、スライダーと落差のあるカーブを効果的に使い、
ストレートで仕留める配給が功を奏して結果が伴ったのだと思いますが、
秋季大会ではそこまでストレートも伸びず、変化球もまとまっていない。
江川や松坂といったような1年生から高校伝説を作るぐらいの
何十年に1度の選手なら別ですが、
前評判を理由に他高校との対戦結果を評価しているわりには
本当に静高の試合を見ていたのだろうか? という疑問が出てきてしまいます。
この発言をした東海地区の選考委員長が慶応大学OBと聞くと、
11月のこの試合の評価が多分に乗っているのではないかと思ってしまいます。
スポーツ選手、特に高校生ぐらいの年代の伸びしろはまちまちで、
この先プロに行ける可能性はもちろんあるけれど、
成長の止まってしまう選手もいる。
また、秋の会時点では選手の基礎体力もまだまだで、
チームとしてここからスタートという段階です。
静高の吉田投手のポテンシャルは高く、
その可能性を否定するものではありませんし、
今夏にはドラフトの声が掛かるレベルに成長して、
静岡は夏の甲子園本命というところまでチーム力も上がると予想します。
ですが、成長途中の秋大会の選手を、選考する側が過大評価して
さらに対戦相手との相対的な評価を下すのは間違っています。
聖隷クリストファーではなく大垣日大を選んだ最終的な理由として、
「特に投手力で差があった。
春の選抜大会では失点の多いチームは厳しい。
甲子園で勝つ可能性が高いのはどちらか。
それを基準に判断した」
エースをケガで欠き、
2番手、3番手投手で東海大会に挑んだ聖隷クリストファーの試合で、
もっとも印象的だったのが、東海大会の至学館との準決勝です。
ネットで結果を追っていたのですが、
0-5になった時点で聖隷クリストファーの勝つ可能性はない!と思い、
その後結果は追いませんでした(笑)。
その時のスコアです。
聖隷クリストファーの失点が多いという感想がでるわけもなく、
よく勝ったなという言葉しかありませんでした。
甲子園で勝つ可能性。
マー君レベルの投手でもいればわかりますが、
そうであっても一方が勝つ可能性が高いと選考委員が言った時点で間違い。
今回、聖隷クリストファーが選抜されなかったことに対して、
静岡高野連のある理事から出されたコメントがありました。
役員としてではなくあくまでも個人の発言として。
「(聖隷クリストファーは)戦力がそれほどなくても
頭や知恵を使って勝っていく。それを見事に体現した。
それを評価されなかった。
いったい高校野球って何なんだろうって混乱してます。
今まで信じていたものが崩れてしまった」
実はこの発言をされた理事、
聖隷クリストファー監督である上村監督の下で指導を受けた方です。
「いったい高校野球って何なんだろう?」
ほんとそう思います。
夏の甲子園予選、1回戦から見に行くと、ろくでもない指導者が溢れています。
1球1球サインを出し、顔色を伺うようにプレーをする選手たちばかり。
甲子園常連のミスが許されない高校ならまた別でしょうが、
サインの裏に明確な理論の裏付けがあるのだろうか?
勝負どころでサイン通りプレーできるレベルまで鍛え上げているのだろうか?
自分も考えて野球をやってこなかったから、ただ過去のやり方を模倣するだけ。
指導者のマネごとをして自分で正しい指導法を学ばない人たちが
日本のスポーツ界、特に野球には多すぎると感じています。
以前見た夏の予選試合では、
1回からブルペンでサウスポーのサイドスロー投球練習していた投手。
ワンポイントでも使えそうなので、
いつ交代させるのかと思いきや、5回コールド負けで投げる機会なし。
負けたら終わりの夏の大会で、コールド負けの試合のために
1回から5回までブルペンで投げさせ続けた意味は?
実は弱ければ弱いほどこんなことが日常茶飯事であります。
勝つための才能、勝つための環境の差は明確にあります。
そうであっても、聖隷クリストファーの上村監督の信条でもある
「頭や知恵を使って勝っていく」。
自分の頭で考えることを否定してサインを出しまくったり、
個人の力が上とチームの力を否定しまった時点で、
野球本来の楽しさを否定している。
高校野球はそういうことがありあすぎる!
と、常々思っています(笑)。
今日の1曲はこの歌。
ブルース・スプリングスティーンのGlory Days。
高校時代スターだった野球選手の栄光と挫折を、
アメリカの凋落になぞられて歌ったのですが、
Glory Daysの言葉と響きがとてもキャッチーです。
そういえば、かなり年代が上の草野球チームで一緒にプレーしたが、
高校時代に大洋・横浜で活躍した平松政次さんと対戦したことがあり、
一球だけカスッたという話、毎度酒の席の話に出てきました。
確かに、子供時代に、桑田、松坂、マー君、ダルビッシュあたりの
打席に立ったというだけで、例え結果が見送り三球三振であろうと、
一目置かれそうです。
ましてや、昔大谷翔平と対戦したことがあるなんて言ったら、
アメリカのバーあたりで死ぬほど酒をおごってもらえそう。
それだけで一生話ができる人生というのも、ある意味幸せです(笑)。