ついに連続可変作用角カムが登場の続きみたいなものです。
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浜田基彦の「走る 曲がる 止まる」
三菱「新MIVEC」が予感させる、DOHC全盛期の終わりの始まり
http://business.nikkeibp.co.jp/article/tech/20111212/225115/
「これじゃDOHCの意味ないですね」。ちょっとうなった。三菱自動車が開発し、「RVR」「ギャラン フォルティス」「ギャラン フォルティス スポーツバック」に一斉に採用した「新MIVEC」エンジン(図1)。SOHCで吸気弁の可変リフト、可変タイミングを実現した(図2)。
「ギャラン フォルティス」に積んだ「4J10」エンジン。SOHCとしたため、可変バルブ機構を入れたにもかかわらずエンジン高は従来通り。フードは部分改良前と共通だ
制御シャフトの角度を変える機構。右のモータでウオームを回し、扇形のウオームホイールが制御軸につながっている。手前は可変タイミング機構とカムスプロケット。可変タイミング機構は本文で紹介したDOHCとは別の理由で付けている。
横文字の略語が並んで申し訳ない。OHCというのはOver Head Camshaftの略。昔、カム軸がエンジンの下の方にあった頃についた名前で、今は普通のエンジンだ。その前のSとDはSingleとDoubleで、カム軸が1本か2本かを示す。MIVECは三菱の商品名でMitsubishi Innovative Valve timing Electronic Control systemの略。ご存知だろうが念のため、RVRは略語でなくクルマの名前だ。
SOHCというのは先入観として昔のエンジンと思ってほしい。今のエンジンはほとんどがDOHCだ。往復運動する部品が軽く、高回転に向くエンジンである。1980年代、SOHCからDOHCへ移行した頃、この“高回転”が重要だった。ヒュンヒュン回るエンジンがもてはやされ、「DOHC」、または同じ意味の「TwinCam」というステッカーを貼ったクルマが街を走り回った。
ちょうどDOHCが普及したころ、1気筒に吸気弁2本、排気弁2本を並べる4弁エンジンも普及してきた。皮肉なことだが、弁が4本になると、DOHCの必要性はガックリ落ちる。
その頃、エンジンで最優先にしていたのは「(高回転で)どれだけ多くの空気を吸い込めるか」だった。吸気量を増やすのに、吸気弁を大きくする、吸気弁を2本並べる…の2つの選択肢があった。
吸気弁を大きくするためには燃焼室を深くする必要がある。そうすると吸気弁と排気弁を大きく傾けることになる。弁のてっぺん、押すところの間隔が広くなるので、SOHCではカムの力を受けて弁を押すロッカアームがとんでもなく長くなる。DOHCの出番だった。
吸い込める空気の量は吸気弁の面積でなく、周長に比例する。小さな吸気弁でも2本並べれば吸気量を増やすことができる。それなら燃焼室を浅くして燃焼を良くした方がいい。吸気弁と排気弁は平行に近くなり、弁のてっぺんの間隔は狭くなる。それならばSOHCで成立する。
それでもSOHCに戻ることはなかった。軸の配置を設計するのが難しいということはあるのだが、DOHCという言葉にユーザーが飛びついてしまったことが大きい。冷静に、技術的に考えるとSOHCで十分なのだが、もう語感としてSOHCでは情けない。たちまち世の中はDOHCだらけになった。ステッカーは消えた。みんなDOHCだからだ。
その後、DOHCをやめられない理由がもう1つできた。可変タイミング機構が普及したことである。自動車業界の悪いクセで、同じものに各社の名前があるのだが、VVTとかVTCとかカムフェイザーとか呼んでいるものだ。カム軸と、それを回すスプロケットとの間に置いた機構で、スプロケットに対するカム軸の向きを変える。こうすると、ピストンの位置に対して、弁が開いたり閉じたりするタイミングを変えることができる。
それで何ができるか。今はEGRがどうの、アトキンソンがどうのといろいろな要求に合わせているのだが、分かりやすく昔のように「オーバーラップ」1本で説明してしまおう。排気が済んで排気弁が閉じると、次の仕事に取り掛かるべく、吸気弁が開く。回転数が低い時はこれでいいのだが、回転数が上がり、吸気、排気に勢いがついてくると、それでは間に合わない。遅めに排気弁を閉じ、早めに吸気弁を開かないと間に合わない。両方の弁が同時に開いている時間ができ、それをオーバーラップと呼ぶ。エンジンの性格を決める重要な指標だ。
まず吸気弁だけに可変タイミング機構を取り付ける。吸気弁だけの場合、吸気タイミングを早めればオーバーラップが大きく、遅らせれば小さくなる。それで不足な車種は排気弁にも取り付ける。タイミングは自由に別々に動かせる。
この可変タイミング機構、SOHCとは相性が悪い。SOHCはカム軸が1本だから、吸気弁のタイミングを早めると、排気弁のタイミングまで早まってしまう。それではオーバーラップは変わらない。DOHCの時代はしばらく続くことになる。
その後、クルマの燃費志向が進んできた。高回転でヒュンヒュン回るのを付加価値にしようという勢力は依然としてあるのだが、本当は高回転なんてどうでもいいことに、みんなが気づいてきた。エンジンでは回転数よりもトルクの方が重要なのである。
燃費志向が進むにつれ、問題が起きた。DOHCエンジンは背が高くなるのである。燃費志向のエンジンで重視するのは吸い込む空気の量ではなく燃焼だ。そうなると燃焼室はますます小さく、平たくしたい。となると弁を立てたい。ところがDOHCで弁を立てるには、カム軸の間隔を狭くするか、カム軸を燃焼室から遠い、高い所に置くかしかない。カム軸の端にはスプロケットを2個並べるので、間隔はスプロケットの直径より小さくはできない。となればエンジンの背を高くするか、スイングアームを使ってカムと弁の位置関係をずらすかしかない。DOHCの問題点が表面化したのだが、やめることはできない。依然としてSOHCで可変バルブタイミングが使えないという問題があるからだ。
三菱の新MIVECは巧妙な機構である。雑誌「日経Automotive Technology」の最新号にガッチリ書いた。かなりディープなメカニズムの話なので、興味のある方向けにセミナー
「30km/Lを目指すエンジンのつくり方~開発者が語る設計と思想」を用意した。
ここでは断片だけを並べる。斜面がローラを押し上げる/半分がなだらかな丘、半分が山のようなカム/平野と山裾の間を往復するローラ/山裾と山頂の間を往復するローラ/ローラがカム山を迎えに行く…想像はつくだろうか。
説明ははしょったが、やりたいことはリフトとタイミングを1つの機構で変えることだ。可変タイミングは常識になったが、可変リフトはまだまだ先端技術。さまざまな方法があるが、可変リフトと可変タイミングはセットで使うのが普通だ。リフトを小さくするにつれてタイミングが早くなるという特性が欲しいからだ。その副次効果として、吸気のタイミングを変えても、排気のタイミングが変わらないSOHCが実現してしまった。
これができると、DOHCが存在価値を問われることになる。可変タイミングの問題がないのなら、燃焼を重視し、弁を立てても背が高くならないSOHCが見直されることになる。ユーザーの意識の中に「SOHCでは情けない」という気持ちが残っていなければいいのだが。
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街乗り回転数ならOHCどころかOHVでも十分なんだけど、アイドリングと低/中回転域ではバルブタイミングを変えたいからDOHCなんてのは今の御時勢のエンジン。
昔は高回転でのバルブトレーンの軽量化/高速追従性のためのDOHCだったのだけど、今は燃費や排ガス規制のためのDOHC。
これがOHCで出来る様になる、ってことはとても良い事だ。OHCで出来るってことは
OHVでも出来るってことだ。
ヘッドが軽くなれば重心が下がる。コルベットがOHVに回帰したり、イルモア/メルセデスがレース用のOHVエンジンをわざわざ開発した、なーんて事もあったよね。
モーターファンイラストレーテッドのバルブトレインマニアックスでも扱っちゃいるけど、ちょっとこっちの説明の方がわかり易いかな。
で、技術解説ってのは良いんだけど、
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エンジン技術大全
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この本って15000円もするの?
過去記事をまとめてるだけなら買わないな。かなり古い記事までウェブで見れるしね。
モーターファンイラストレーテッドより技術オリエンテッドってのは良いんだけど、トイレでキバリながら読むには向いてないだろうな。(笑)
Posted at 2011/12/16 00:13:20 | |
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