8月にモントレーで行われる、Broad Arrow Auctionsに
私の大好きなイスパノスイザJ12が出品されるようです。
J12は1931年から1938年の間に作られた車ですが、これは1936年式だそうです。
やっぱり恰好イイナァ。
昔、SUPER CGの2号のJ12の特集記事を見て(って事は高3の時か)、
なんて美しい車なんだろうと思い、
記事で技術面、性能面でも優れた車である事を知って、
それ以来ずっとファンなのですよね。
一寸余談ですけど、大学時代に友人からスポーツ型の自転車を貰って
それの再塗装をしようと思い立ち、
フレームに何らかの名称を入れないと一寸寂しいよな、、、
と思った私は『HISPANO SUIZA』と入れたのでした。
要はその位好きだったという事で御座います(笑)。
無論、MBの方が好きなわけですけど、さすがにそれを入れるのは少々恥ずかしいかと思い、
その点、HISPANO SUIZAなんて知っている人は世間にそれほど居らんやろ、、、
と思ったわけなのですよね(笑)。
んで、話を本題に戻しますが、
この車、なかなか市場に出てくるのを見掛ける事がなく、
多分、私がネットをやり出してから、見掛けた売り物は1~2台位だったんじゃないかと思います。
100台が作られて現存が確認されているのが46台というので、
生産台数が49台の300ScカブリオレAの売り物があれだけあるのだから、
もう少し見掛けても良さそうな物だけど、、、って気がするのですけどね。
まぁ、それだけ素晴らしい車でオーナーさんが手放したがらないのかもですね。
因みに噂によると、ビル・ゲイツ氏もこの車をお持ちだとか。
幌姿。
何故か前からの幌姿が1枚もないという(笑)。
似た角度からのオープン姿。
これで珍しいなぁと思ったのは、2ドアでリアの乗客用の風防が装備されている事ですね。
これがあって、サイドウインドウを上げると、
ひょっとして近年のウインドウデフレクター的な効果があるんじゃないかという気がしますよね。
こっちの方がリアの風防が判りやすいかな?
正面。
この顔つきが溜まらなく好きなのですよねぇ。
真後ろ。
真横。
有名なコーチビルダーの作だと書いてあるだけで、
具体的にどこなのかが書かれていないのですよね。
因みにヴァン・ヴーレンが作ったボディが一番多いらしく、
全生産台数100台の内の37台がそれで、
4種類あったホイールベースのそれぞれにボディを架装しているのも
ヴァン・ヴーレンだけだそうです。
シゴーニュ・ヴォラント(飛翔するこうのとり)とイスパノスイザのエンブレム。
このマスコットだけでも欲しいなぁ。
スペアホイール。
上のグリルもそうですけど、クロームの類いにデラデラ感があるのが、
個人的には少々残念に思う所だったりします。
内装。
革のヌメ感がイイですねぇ。
ドアを一周しているお洒落なウッドパネルも
いかにも高級材といった雰囲気を持っていますよねぇ。
ひとつ気になっているのはドア内張りの
シートのバックレストよりも後方に見えるクロームのレバーです。
これ、ひょっとして、後部座席からのドアオープナーハンドルだったりするのかしら?
と思っていますが、どうなんでしょうね。
エンジン。
これはT68というエンジンなのですが、60度V型12気筒OHVで、
標準が9.4ℓ、T68bisという、レイルカー用に開発された物が11.3ℓで
前者の圧縮比5バージョンが190馬力、圧縮比6バージョンが220馬力、
後者が250馬力だったそうです。
因みに後から換装された物は結構あるようですが、
オリジナル装備としてT68bisを搭載されたJ12はたったの2台だったらしいです。
ヘッドが一体のエンジンブロックもクランクケースも鋳造アルミ製なのですが、
この時代の鋳造は巣が多かったのか、そのままだと冷却水が浸みだしてしまうらしく、
そこをイスパノスイザの生みの親のマルク・ビルキヒトは
圧力下で表面にエナメル塗装を施して止める『加圧エナメル』という工法を考案したのですよね。
谷間の中央に見えるのはソレックスのキャブレターだそうです。
画像では1個に見えますが、片バンクに1個ずつ使われているらしいです。
点火はツインマグネトーでそれぞれがインテーク側とエグゾースト側のプラグを
点火させるようになっているらしいです。
つまりツインスパークって事ですね。
この車の唯一?且つ最大の弱点は乾式多板クラッチなのだそうで、
J12をお持ちのSUPER CGの記事の著者の方によると、
上り坂でのスタートは厳禁だそうです(そんな馬鹿な)。
クラッチのスリップによって膨大な熱が生じ、
ついにはライナーを失ったクラッチプレートが歪んでクラッチがロックして
切れなくなるらしいです(汗)。
渋滞の多い日本では絶対に乗り回せない車ですな(苦笑)。
でもその著者の方は一度だけ張り替えたオリジナルクラッチで
16000キロ以上走る事が出来ているとの事でした(笑)。
(ってか、アメリカではこの時代の車でもその位乗っちゃう(乗れちゃう)のですね~)
その方、サンフランシスコ在住の方らしいですけど、
あれ?サンフランシスコって坂の街じゃありませんでしたっけ(汗)?
因みに最後期のモデルには2枚プレートの
ラ・ドブル・コメートというクラッチが採用されているらしく、
文脈からするとそれの場合は問題がないっぽいです。
この車に関しては後期に当たると思われるのですが、どちらが使われているか判りません。
さて、そろそろお値段の方の話に移ろうかと思うのですが、
先述の通り、殆ど世に流通しているのを見掛けた事がないって事で、
私自身もどの程度で取引されている物かさっぱり判らないので
興味があったのですよね。
オークションなのでESTIMATEになりますが、140万~180万ドル、
今のレートで、ざっくり2億円弱から2億5千万円強って感じのようです。
私的には、あら?思った程行かないなという感じでした。
この感じだと、MBの500/540KのカブリオレA辺りを確実に下回っていますからね。
で、このJ12、上でなかなか市場に出ないって言っていたわけですけれども、
実は今、もう一台、オークションに掛けられる予定になっているのですよね。
そのもう一台の方なのですが、
GOODING COMPANYのオークションに出る事が先に判っていたんですけど、
ESTIMATEを含む詳細が後日となっていて、
その詳細が出るのを待ってブログを書く積りだったのが、
なかなか出ず、その内に上の車が出てきた、という訳なのでした。
ってなわけで、そのもう一台の方もこの機会にご紹介してしまいましょう。
こちらも年式は1936年式で、コーチビルダーはSAOUTCHIKだそうです。
これね~、さっきのとどっちが好み?って言われると、断然コッチですね。
MBでSAOUTCHIKのコーチビルドっていうと私の中ではこんな感じの、、、
ギンギラギンのホイールキャップを履かせたド派手なイメージなんですけど、
この車はシックで且つこの時代のフランス車らしいデザインを有しているのですよね。
こりゃ、滅茶滅茶イイナァ。
幌姿3連発。
幌姿もまた好くて、ホント、溜息しか出ませんな。
MB式にいうと幌を畳んだ状態ではカブリオレCのように見せつつ、
幌を上げると実はカブリオレBでしたって所もまた面白いですねぇ。
幌を降ろした時にはなかった太目のBピラーの様な物が見えているので、
オープン時にはこの部分が後ろに折れ込んで
幌カバーの下に収まるようになっているのかもですね。
正面から。
やっぱりイイナァ。
後ろから。
シンプルな造形だけれども凛とした美しさがあって好いですよねぇ。
シゴーニュ・ヴォラント。
グリルエンブレム。
こうしてみると、どうやら3つのマイナスネジで固定されているようですね。
RRがマイナスの切れ込みの方向を合わせるというのを聞いたことがありますが、
これも全て水平方向に統一されているようです。
コックピット。
更にクローズアップ。
計器は右から時計、その左隣の上が電流計、その下が油圧計、
その左隣がスピードメーター、その左隣の上が電圧計、その下が水温計、
その左隣がNIVEXだそうです。
NIVEXってなんぞや?って所なのですが、
これに付いてはSUPER CGの方に説明があって、
これは燃料タンク内の気圧を感知するアネロイド気圧計らしく、
それがどういう理屈でそう出来るのかが全然理解出来ていないのですけど、
その測定値をタンク内の燃料量に置き換えているって感じらしいです。
上にNIVEXと書かれたノブらしき物があるので、これってひょっとすると常時表示ではなく、
確認する時にわざわざノブを引っ張るように出来ているのかもですね。
シート。
生地は恐らく良質なものなのでしょうけれども、
シートのデザインは意外と普通な感じですね。
縫製は流石に綺麗ですけど、雰囲気としては好い味にヘたった部分まで含めて
前出の車両の方が良いかも?と思う所であります。
こちらは全然へたりが見られないので、
恐らくこの車はレストア後に使われていないのでしょうね。
それじゃあ車としてつまんないなァ。
エンジン。
前出の車ではエキマニが焼けていましたが、これは綺麗なので、
やはりあまり使われていないのでしょうね。
キャブのクローズアップ。
鏡に映った物が見えるような錯覚を覚えますが、
こちらの画像ではちゃんとキャブが2個並んでいるのを確認出来ますね(笑)。
イスパノスイザと書かれた下にライセンス・ソレックスと書かれているので、
ひょっとするとソレックスのライセンスの下で、
イスパノスイザ自身で作られた物って事なのかもですね。
SAOUTCHIKのプレート。
あっ、これはマイナスネジの方向が一本だけ狂っていますね(笑)。
このプレートも好いなぁ(笑)。
コチラはHISPANO SUIZAのプレート。
HISPANO-SUIZAの書体がイイですね。
TYPEの欄にちゃんとJ12って入っているのが(ちょっとJが薄いけど)
判ると思いますが、
いかにも生産当時に施された感のある、白々しくない打刻だなぁと思います。
エンブレムの一部に赤味が残っているので少なくともその辺りには
グリルエンブレム同様に元々着色が成されていたのだろうなぁと思われる所ですが、
なんでもかんでもキッチリカッチリ綺麗にしてしまうのではなく、
こうして自然に且つ綺麗に退色したままを残しておくのも雰囲気が良いですよね。
( ゚д゚)ハッ! ここに来て凄い事に気付いてしまいました。
SUPER CGには1988年に行われた、ペブルビーチ・コンクールデレガンスに参加した、
13台のJ12が載っていたのですが、
ここに書かれているシャシー番号の14018という数字をどこかで見かけたような?
と思って探して見た所、、、ありましたよ。
全然違う色だったし、画像も小さかったので気付きませんでした(笑)。
ソーチック・カブリオレだと書いてあるから、同じ車で間違いないでしょう。
いや、最初におかしいなと思ったのは年式で1935年式の車より車体番号が前なのに
1936年式だという話だったからで、そこから、上の様な流れになったのでした。
J12の専門家が言っているので間違いないと思いますが、
1934年式が正解なようです。
アメリカにイスパノスイザ・ソサエティってのがあるらしくて、
そこで年式なんかすぐに判るでしょうに、何故GOODING AND COMPANYは
1936年式だなんて言ってるんでしょうかね???
元々は茶系のダブルトーンだったようで、
画像が小さいからなんともいえないのですけど、
上に載せたようなホイールキャップ?は付いておらず、
ワイヤーホイールとセンターロックがむき出しのように見受けられるのですよね。
今の色もシックで好いとは思うのですが、
前の色も品の好い派手さがあって好かったのに何故塗り替えちゃったのでしょうね。
まぁ、直前に持っていたのは当然超お金持ちなのでしょうから、
飽きちゃったので、気分を変えるために色替えしちゃったのかもですね。
前述の通り、こちらは残念ながらまだESTIMATEが発表されていませんが、
幾らくらい付くものか楽しみにチェックしておこうと思っております。
しかし、なかなか市場に出てこなかったMBの稀少な220aクーペもそうでしたが、
このJ12にしても出る時は出るものなんですねぇ。
J12は恐らく日本国内には1台もないだろうと思うのですが、
こんな車を買えるお金持ちの方自体は沢山居られる事だろうと思うので、
この機会に是非買って頂いて、何かのイベントで披露して頂きたいなぁと思うのでありました。