自分のモトラはエンジンもキャブもマフラーもフルノーマル。普通ならホンダ純正のG1オイルで十分だ。でも同じカブ系のエンジンでもモトラはエンジンに対する負荷が大きい。その理由はまず大きなフロントフェンダーがエンジン前に立ちはだかり、ヘッド横はフレームのサイドプレートで囲まれていて走行風があまり当たらないから冷却が悪い。それでいて全体にローギアードなので計算上では60km/hで9000rpmも回ってしまう。しかも車重が重いしタイヤも低圧タイヤなので転がり抵抗も大きい。
それにモトラのエンジンは50ccで4.5PSだが、これは排気量1リッターあたり出力に換算すると90PS/Lとじつは結構高性能エンジンなのだ。考えてもらうとわかりますが、今でこそリッターあたり出力が100馬力を超えるエンジンは当たり前だけど、1982年当時、4ストロークエンジンではターボエンジンでさえリッター100馬力を超える市販エンジンなんてほとんどなかった。
これらの要素を考えればモトラのエンジンだって十分高出力エンジンと言えるわけで、高性能なオイルを奢ってやってもいいんじゃないかと思うのです。
そこで今日はモトラに使用したいエンジンオイルについて自己流の考えを書きます。
まずは定番のホンダ純正G1。
鉱物油。API-SL、10W-30、JASO-MA。価格は1リッターで980円前後。
まぁ、ふつうに使ってるぶんにはいちばん無難で経済的なオイルだと思います。今の自分のモトラにも現在このオイルを使っています。
次に一気にハイエンドオイル、MOTUL 300V FACTORYLINE 4T。
エステル系全化学合成油。10W-40、JASO-MA。価格は1リッターで3000円前後。
モチュールはAPIの審査を受けていませんがSL相当です。こんな贅沢なオイルはモトラにはもったいないと思う人も多いでしょうけど、自分は車のチューンドターボエンジンでずっとモチュール300Vを使ってきたので個人的にいちばん信頼をおいているオイルです。
次はあまり知られていませんがSilkoline(シルコリン) Pro4。
エステル系全化学合成油。API-SM&SN、10W-40、JASO-MA2。価格は1リッターで3000円前後。
シルコリンはコンコルドなどのジェットエンジン用潤滑油メーカーとして有名。自動車用よりもオートバイ用オイルをメインに販売してます。自分の知り合いのレース屋さんでは「モチュールよりもロングライフで信頼性がある」という人さえいるくらい。これよりハイグレードなオイルもありますが、それはレース用に近いのでライフが短いためストリート向きではないとのことです。
最後に自動車用のMOTUL 300V CHRONO。
エステル系全化学合成油。API-SM相当、10W-40。価格は1リッターあたり3000円前後。
このオイルは自分の車のターボエンジンで使ってきたオイル。ノーマルの倍以上のパワーにチューニングしたエンジンでも抜群の信頼性がおける高性能オイルです。
ただ、これをそのままモトラに用いるのはちょっと冒険。なぜなら潤滑性能が高すぎるため湿式クラッチが滑ってしまう恐れがあるからです。だからこそモチュールも同じ300Vシリーズで四輪用と二輪用とわけているので、湿式クラッチのバイクには使わないほうが安全かと。
●終わりによく語られているオイルの話。
「旧車エンジンには鉱物油がいい。全化学合成油はオイルが漏れる」
これは自分に言わせれば胡散臭い。化学合成油は分子構造が小さいから云々とか知ったかが根拠のない妄言吐いてるとしか思えない。旧車と言っても大昔のまだガスケットがコルクの時代ならいざ知らず、80年代くらいのエンジンであれば粘度さえ間違えなければ化学合成油を使用しても問題ありません。実際、自分の付き合いのあるバイク屋さんや整備工場でも昭和の時代のエンジンに普通にエステル系モチュールずっと使ってて問題出たことはない。もしオイルが漏れるのならばシールが摩耗してるなど他に物理的理由があるはず。
「最近の四輪用エンジンオイルを湿式クラッチのバイクに使うとクラッチが滑る」
これは上記の車用モチュール300Vで書いた通り。最近の車用エンジンオイルには減摩剤として有機モリブデンなどが配合されており、非常にフリクションロスが少なくなっているため、そういったオイルに対応してないバイクにこのようなオイルを使うとクラッチが滑る可能性があります。なのでバイク用オイルにも日本独自の規格JASOでMAとMBに分かれています。MAは湿式クラッチエンジン用、MBは湿式クラッチを持たないエンジン用です。
さらにMAでもMA-1とMA-2がありますが、MA-2のほうがよりクラッチが滑りにくくなっていてどちらかというと大排気量エンジン向けです。モトラにはMAまたはMA-1のほうがフリクションロスが少ないので適しているでしょう。
「オイルはあまり規格にとらわれる必要はない」
よくAPIやSAEなどのグレードでオイルの性能を語る人がいますが、自分はこんなのまったく無視します。正直言うとAPIのグレードでエンジン保護性能にかかわるのはSGくらいまでで、それ以降のグレードはほとんど環境性能や省燃費性能に関するものなので極限状態からエンジンを守ってくれる性能とは無関係と考えたほうがいいです。本当に高性能なオイルを追求する人ほど「規格なんかどうでもいい」と言うものですよ。だからモチュールだってAPIの規格認証を通してないのです。意味ないから。
「エンジンオイル交換サイクルは乗り方で適宜判断しよう」
単純に2000kmごととか半年ごととかではなく、エンジンオイルの劣化を早めるような乗り方をしてるかどうかで交換サイクルは変えるべきです。もちろん全開走行などエンジンに負担がかかるようなハードな乗り方をした場合は早期の交換が望ましいですが、実はエンジンオイルにとってもっとも劣化を促進させるのはいわゆる「短距離のチョイ乗りの繰り返し」なんです。エンジンは冷間始動してしばらくは大量の水分と生ガスがブローバイガスとしてクランクケースに吹き抜けてエンジンオイルに混ざります。長時間連続で走ればこれらは熱でほとんど揮発しますが、短距離走行ではこのような生ガスや水分が抜けずにエンジンオイルを希釈し、それがオイルを劣化させるのです。なので、そういった短距離走行を繰り返す使い方の場合は早め早めのオイル交換が望ましいです。
※あくまで自分の考えなので異論は認めます
Posted at 2017/03/17 20:01:26 | |
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