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2025年02月27日 イイね!

ヤフオクで見たトリシティのワイドトレッドキットの疑問

ヤフオクで見たトリシティのワイドトレッドキットの疑問ヤフオク見てたらなんかやたら剛性を強調してるトリシティ用のワイドトレッドキットが出品されてて気になったので説明読んでみましたが、書いてある内容が素人丸出しでなんだかなぁ…と思ったのでちょっと書きます。(長文になってしまいましたが)

まずアクスルシャフトですが「クロモリH鋼使用」「材料証明書あり」なんて書いてありますが、こんなのは何の強度証明にもなりません。

そもそもクロモリ(SCM材)を使っていようが通常の炭素鋼(S45C等)を使用していようが材料それ自体には強度・剛性に差はありません。

大事なのは「適切な熱処理がしてあるかどうか」なのです。
クロモリ鋼だって材料そのままでは弱いんです。これを適切に焼き入れ・焼戻しすることで必要な硬さ・引っ張り強さにすることではじめて「強さ」が得られるのです。

つまり重要なのは材料証明書ではなく「熱処理の証明書」もしくは「硬さ(硬度)証明書」なのです。焼き入れ硬さがわかれば引っ張り強さ、いわゆる強さもわかります(鋼材のヤング率は決まっているので)。

通常SCM435の場合はロックウェルCスケールつまりHRcで35から38くらいの硬さに焼き入れすることで引っ張り強さ120kg/mm^2くらいにして使用します。こうすることではじめて必要な強度が得られるのです。

一般によく売られている六角穴付きボルトで頭部に「12.9」という刻字があるボルトがそれです。
最初の「12」は引っ張り強さ120kg/mm^2を表し、次の「9」は耐力(実際に破損せずに使用できる限界値と考えてください)がその90%であることを表しています。

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これより下には「10.9」や「8.8」というボルトもありますが、これらの意味もそれぞれ10.9の場合は100kg/mm^2の90%、8.8の場合は80kg/mm^2の80%という意味になります。

ちなみにSCM435Hの最後の「H」の意味ですが、これは「焼き入れ性を保証した鋼材」という意味で通称「H鋼」と呼ばれていますが、これは量産品向けの材料であって決してHがついてるから通常のSCM435より高級な材料というわけではありません。

ワンオフものや少量生産の場合は熱処理後にロックウェル法やヴィッカース法により1点1点規定の硬さに焼きが入ったか検査しますが、何千個、何万個と作る量産品ではそんなことやってられません。
ですので「規定の温度や時間を守った熱処理をすれば検査しなくても必要な硬さが得られることを保証した鋼材」というのがH鋼なのです。

いずれにしろ「クロモリ鋼を使用しているから強い」なんてことはありません。「適切な熱処理がしてあるかどうかが重要」なので、こういう宣伝文句に騙されないようにする必要があります。

それにこのキットのアクスルシャフトには「ユニクロメッキ」が施してあります。
ユニクロメッキというのは一般のボルトナットでも多い安価なメッキで、電気亜鉛メッキにユニクロムディップコンパウンドという耐食性を上げる化成処理をする電解メッキです。

ですが電解メッキには素材の強度を低下させる「水素脆性」という致命的な欠点があるため本当に高強度を必要とするボルトには使いません。前述した六角穴付きボルトでも10.9まではユニクロメッキが存在しますが12.9にはユニクロメッキの製品は存在しない(黒染めのみ)ことからもわかると思います。

つまりこのワイドトレッドキットのアクスルシャフトには少なくとも12.9相当の熱処理はされていないということが推測できます。

ちなみに私のトリシティのアクスルシャフトはクロモリSCM435の強度区分12.9の熱処理素材に水素脆性を起こさない「無電解黒色ニッケルメッキ」で処理しています。

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さらにこのヤフオクのワイドトレッドキットのアルミのスペーサーもおかしいです。
「航空機に使用されているA5052を使用」と書いてありますが、材料について知識のある人が見たら笑いますよ。

A5052なんてホームセンターでも売っているもっとも一般的なアルミ材で、どちらかというとかなり柔らかいアルミであって強度が必要とされる部品には絶対に使いませんよ。

トリシティのワイドスペーサーのように強度・剛性が求められる部品には最低でもA2017のジュラルミン、コストが許せば超々ジュラルミンのA7075を使用します。
私のトリシティのスペーサーはこのA7075を使っていますが、通常航空機用アルミというのはこのA7075のことを指します。零戦の材料で使われたことで有名ですね。

ちなみにA2024という「超ジュラルミン」というのもありますが、A2017とA7075のどちらかで事足りることが多いのであまり一般に多くは流通していないのが現状です。

※A2017やA2024でも航空機用アルミと表現されることもありますので厳格な決まりがあるわけではありません。

それと最近は「A6061」というアルミ材でできているものも多くなっています。
市販の車用のホイールスペーサーやホイールナットでもよく見ます。
A6061はジュラルミンA2017に近い強度を持ちながらコストが安く、カラーアルマイトの発色が良いというのが多くなっている理由でしょう。

ジュラルミンは強度を高くするために合金成分が多くそのせいでカラーアルマイトの発色が良くないという欠点があり、とくに2000番台のジュラルミンは銅の成分が多くてこれのせいでアルマイトの色がくすんだような仕上がりになることが多いです。

ちなみに現状入手可能であるアルミ合金でもっとも「硬い」のは「アルミーゴ(ハード)」という材料で私も過去に何度かブレーキのキャリパーサポート等の製作で使ったことがありますが、ヤスリで削ってみるとわかりますがアルミ合金とは思えないくらい硬いです。
このアルミーゴでトリシティのワイドトレッドスペーサーを作れば最高の強度・剛性が得られるでしょうね。


私は90年代から一般のショップのチューニングパーツはもちろんフォーミュラニッポンやGTレース車のパーツの設計製作をしてきましたのでいい加減なことを書いて宣伝してるのを見るとどうしても一言言いたくなってしまうのです。
Posted at 2025/02/27 15:14:59 | コメント(0) | トラックバック(0) | 日記

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