「あおり運転」厳罰化3年 福島県内で逮捕者、一定の効果も
2023年07月20日 08時15分
あおり運転を「妨害運転」として厳罰化した改正道交法の施行から、3年が経過した。この間、福島県内の6件を含む全国で250件以上の摘発があった一方、あおり運転の元となる車間距離不保持違反の摘発件数は減少するなど、一定の効果もあったとみられる。あおり運転の撲滅に向け、関係者は「自分中心ではなく、思いやりの心を持つことが大切だ」と訴える。
「あおり運転をされた」。南相馬市鹿島区の常磐道下り線で2020年12月21日、走行中の大型トラックの運転手から110番通報があった。大型トラックは後方から来た乗用車に執拗(しつよう)に車間距離を詰められ、左側から強引に追い越された後、道路上に無理やり停車させられた。
通報後、乗用車の運転手の男は県警に逮捕され、道交法違反(妨害運転)と覚醒剤取締法違反の罪で起訴された。裁判で裁判官は、男が追い越しできない状況にいら立ち、進路を妨害されたと一方的に思い込んだ動機を「独善的かつ身勝手」と厳しく非難。懲役3年6月の実刑判決を言い渡した。警察庁や県警によると、改正道交法が施行された20年6月以降の全国の年間摘発件数は【グラフ】の通り。県内6件のうち、高速道路2件、一般道4件だった。
「どうして譲り合いの気持ちが持てないのか」。秋田県仙北市の松田稔さん(70)はあおり運転を巡る現状に、ため息をつく。松田さんは厳罰化前の07年2月、あおり運転をし、前方の車を追い抜くために車線を飛び出した大型トラックと軽乗用車が正面衝突する事故で21歳の長男と11カ月の孫を亡くした。厳罰化されたことで安全運転への意識が少しでも高まると期待していたが「このままではまた犠牲者が出る。常に安全運転を徹底してほしい」と訴える。
車間距離は改善傾向
一方、車間距離不保持違反は減少傾向にある。警察庁と県警によると、全国の摘発件数は20年の1万3062件から22年は6117件に減少。県内でも20年の267件から22年は97件に減少した。県警交通指導課は、厳罰化で一定の効果があったとみている。
あおり運転の立証にはドライブレコーダーの映像が有力な手段になるといわれている。そのため、県警交通指導課は「ハンドルを握る際はいつでも見られているという意識を持ってほしい」と話す。(三沢誠)
専門家「数秒の我慢で冷静に」
臨床心理学などを専門とする福島医大医学部神経精神医学講座の松本貴智助手(50)は、あおり運転をする運転手の心理について「車はプライベートな空間になりやすく、急に割り込みなどをされると、自分の空間を邪魔されたと感じる人が多いのではないか」と分析する。さらに、車から運転手を特定されることが少ないことも、怒りを我慢しないで行動してしまう一因になるという。
あおり運転をしないため、松本助手は「怒りを覚えても数秒の間を置けば冷静になり、自分の心にブレーキをかけられる。あおり運転は危険な行為だという認識を持ち、相手のことを考えて運転することが大切だ」と訴える。
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妨害運転罪 2020年6月に道交法が改正され、ほかの車の通行を妨害する「あおり運転」が妨害運転罪と規定された。「車間距離不保持」や「急ブレーキ禁止違反」など、10の行為を摘発の対象としている。罰則は最高で5年以下の懲役または100万円以下の罰金。高速道路上でほかの車を停車させるといった危険性の高い行為は、罰則が重くなる。
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2023/07/20 12:30:14