~フィットらしくないフィットRS~
今回は大人気フィットの中では最も通好みであろう、RSグレードのMTという車両を試乗しました。モデルチェンジでさらにフィットらしからぬ攻撃的なフロントマスクになり、試乗車は専用カラーのサンセットオレンジⅡということで、車に詳しくない人が見たら完全にフィットには見えないという、新たなフィットRSの試乗記を下記に載せました。
=============================
◆試乗車情報◆
車種:フィット
グレード:RS
排気量:1500cc
ミッション:6MT
車両重量:1050㎏
=============================
◆エクステリアデザイン◆
今回試乗したフィットRSも通常のフィット同様、モデルチェンジでエクステリアデザインが大幅に刷新されました。サイドのラインにはフィットらしさが残ったものの、フロントマスク、リアスタイルともに旧型のイメージはもうありません。旧型のような誰にでも受け入れられる定番デザインと比べ、新型は完全に好みの分かれるデザインになりました。ただRSに限っては、新型のフロントマスクの方がスポーティーというコンセプトに合っている印象です。LEDポジションライトがフォグランプベゼル内に装備されている点は新鮮味が感じられて、良い意味でフィットらしくない意外性があります。リアのデザインはシンプルながらも、テールランプ部を個性的な形状にすることで独自性を出しています。特にこのテールランプは、このクラスにしては珍しく、ボディ側とリアハッチ側の2つに分けられていて、価格競争の激しいコンパクトカークラスとしては、かなり手の込んだデザインと言えます。
=============================
◆インテリアデザイン◆
内装もエクステリア同様、デザインこそ大きく変わりましたが、質感、内装カラー、雰囲気という面ではフィットらしさが感じられます。旧型と最も大きい違いは、エアコン操作部がタッチパネル仕様になった点です。新型オデッセイにも装備され、これから主流になるであろう装備がフィットにも搭載されたかたちです。全体的な質感は150万円クラスのコンパクトカーといったレベルに収まっていて、今回のモデルチェンジは質感の向上というよりは、デザイン変更がメインという感じです。そしてRSに限ってのことですが、RSにはオレンジステッチの専用シートが設定されるのですが、いまいちブルー発色のメーターと合っていない感じです。プッシュタイプのスタートボタンも赤色なので、全体的にオレンジ系統の色が強いにもかかわらず、メーターは通常の1500ccタイプと同様ブルー発光になっています。視認性などの問題やコスト面などの問題があるのかもしれませんが、その色使い一つのために、チグハグな印象が残りました。この辺りはRSでなければシートにオレンジステッチが入らないので感じない部分ですので、RS限定でのウィークポイントということになります。
=============================
◆動力性能◆
エンジンですが、今回のフィットからSOHCではなく、新たにDOHC仕様のエンジンに変わっています。その気になるエンジンですが、中速域を最も得意とするエンジンというのが今回の試乗の印象です。MTとの相性もあるのかどうかは定かではありませんが、0~40㎞/hの間ではやや力強さに欠けるものとなっています。しかしそれ以降の中速域では再加速も含め、コンパクトカーとしてはなかなかのトルクを感じさせるものになっています。小さい排気量の車ほど中速域での再加速を苦手とする車が多い中、この辺りは十分合格点のエンジンと言えます。それから、今回の試乗車はMTでしたが、このMTのシフトの操作性が旧型のMTとはかなり違うものになっています。旧型で感じられたグニャっとした操作感はほぼ無くなり、カチっとハマるシフトになっています。表現としてはアナログな操作感から、機械的なデジタルのような操作感になった印象です。誰にでも扱いやすい操作性に改良されています。MTに慣れている人なら、初めて運転しても、シフトを入れ間違えることはまずないと思われます。クラッチの奥行きはかなり浅く、軽い力で踏み込めます。これもコンパクトカーとして、MT入門と考えれば妥当なセッティングです。シフト、クラッチとも扱いやすいセッティングで、フィットに最適な操作性という点は評価できます。
=============================
◆ステアリング・足回り◆
ステアリングフィールはそれほど旧型と比べ、変わった印象はありませんでした。いわゆるコンパクトカーのスポーツグレードらしい、ある程度キビキビとしたステアリングフィールです。操舵感は軽すぎるというほどではありませんが、重いというほどでもありません。ヴィッツRSよりは軽めです。足回りに関しては、まだ煮詰まっていないというのが感想です。硬い足回りと一言で言っても、路面の凹凸を軽快に捌く嫌味の無い硬さと、路面の凹凸を突き上げるように拾うタイプとがありますが、フィットRSは後者の方にあたります。これが結果として乗り心地、乗り味を悪くしています。日産ノートのライダーのどっしりした足回りと比べてしまうと、まだまだ完成度という点では未熟な部分が感じられました。
=============================
◆居住性・静粛性◆
居住性は多方面から高評価を得ているフィットとあって、このクラスとしては優れた室内空間を誇ります。乗車する際も自然に座ることができます。シートに関しては、質感、座り心地は価格相応、クラス相応といった具合です。静粛性は、やや雑音が室内に入ってくる印象です。こちらは乗り心地と静粛性が良くも悪くもリンクしてしまっている感じです。
=============================
◆総評◆
それぞれ美味しい部分だけを寄せ集めて良いトコ取りしたイメージの強いフィットですが、RSはスポーツタイプとして設定してあるだけあって、万能タイプではなく、やはりスポーツ志向の人向けというのがよく伝わってくる車でした。価格もフィットとしては180万円とかなり高価な部類に入るため、誰にでも“買い”かと言われると、当然そうではないグレードになります。上記のように、バランスの良い量販グレードではないので、良い所も悪い所も理解した上で、それでもRSがいいという人が選ぶグレードです。デザインは旧型RSよりもRSらしさが出ているので、デザインが気に入った場合とMTを選びたいという人にはRSもアリだと思います。数あるフィットのグレードの中でも、最も個性的なグレードがこのRSです。
=============================
◆5段階評価◆
エクステリア:★★★
インテリア:★★★
動力性能:★★★
足回り:★★
静粛性:★★
コストパフォーマンス:★★
Posted at 2013/12/01 19:33:47 | |
トラックバック(0) |
試乗レポート | クルマ