向かいにラーメン屋がある、豚子の家は、中古屋みたいな修理屋みたいなバイク屋で
キムコのヨンフォアも、豚子の実家で、ボロボロのを自分で直す条件で、格安で買ったばかりだった
そして豚子は、店が下取りしたバイクを借りパクして集会に出た事が父親にバレて、
この人は、後に私のバイクの師匠となる凄い人なんだが
その社長という、父親に
「そのバイクを自分で買い取るか」
「バイクに乗れなくなる程、ボコボコの身体にされるか」
の二択をガチでせまられ
ついに豚子は、土日祝だけ、私とキムコが働いてる焼肉屋でバイトをしだしたんだけど
驚く事に、豚子は厨房を希望して、初日からテキパキと料理を作ってしまい
豊子とオバちゃんとキムコをビックリさせた
「おらー!石焼きビビンバあがり!」
「チョレギサラダなんて30秒でやらんかい!」
今日も、豚子が厨房でキムコに怒鳴る声が響く
日曜のランチタイムが終わり
賄いで、豚子が明太パスタを作り、皆で食べてると
「豚子ちゃん、何処で料理覚えたの?」
オバちゃんが指定席から、豚子に尋ねた
「別に〜お爺とお婆の世話してたら、自然と覚えただけや」
「とにかく作るの早いよなー、これも美味っ!」
キムコは明太パスタを頬張りながら、褒める
「パスタはな、茹で加減と塩のさじ加減がキモやねん」
得意気に豚子が解説して、皆、感心しながら、パスタを食べる
「ウチより、オネーの方が作るのは早いでー」
「そうなの?」
「あの女、深底のフライパンでカレーとかシチューを作るような女やで」
「じぇじぇじぇ!」
「麻婆豆腐なんてな、一丁そのまま豆腐を切らずに、ブチ込むんやから!」
「何それー!」
「色は白いが、アソコの匂いは水臭い、豆腐屋の娘!なんてな〜」
「豚子ちゃんて、本当に面白いよねー」
オバちゃんも関心しながら、パスタを食べる
「あの女のボケは、関西人のメータ振り切っとんねん」
「ボケというより、斬新な麻婆豆腐だね」
でな、大阪におった頃は、飯作ると、お爺〜が小遣いくれるし、作った人は皿洗い免除になるさかい、せやから、小さい時から料理は嫌いではなかったんよ
「そうだったんだー」
「俺らのガキの頃は、多摩川に捨てられた、大師のヒヨコが成長した、鶏食ってたよな」
キムコが豊子に振ったので
「残飯のチャンコ鍋がご馳走だったよね」
「今でも、食パンの耳を貰ってきて、揚げて砂糖まぶして、ドーナツって騙して、妹や弟のオヤツにしてるけどな」
「それよっー!私も日本にもちゃんとした、丸い穴の空いたドーナツがあるって事、中二の時初めて知ったんだから」
「豊子さーん!夜はミスド行こうやー」
(T_T)(T_T)
豚子が泣きまねして、大袈裟に、豊子に抱きつく
「私らの子供の頃は、砂糖きび畑から、捨てられたのを舐めて、こっちに来てからは、大師の鳩を、ふん捕まえて、焼き鳥にしてたねー」
オバちゃんが、煙草をふかしながら呟き
「じぇじぇじぇ!」
「雀は不味いけど、鳩は美味しいんだよ、今度焼いてあげようか?」
「いや、イイっす」
「だって、平和の象徴だし」
「鳩サブレでエエわ」
「なんだよ、三人ともつれないねー」
オバちゃんがハイライトをブリキの灰皿で揉み消すと
「そうそう、豊子は雷神と風神どっちが好き?」
いきなり、豚子が話を変えてきた
「なにそれ?」
「ほら、屏風絵であるやろ鬼みたいな」
「ドリフのコントでやってるようなやつか」
「そんな感じや!」
「それがどうしたの?」
「せやから、風神と雷神、どっちが好きやねん?」
「鬼でしょ、どっちも嫌よー」
「豊子さん、風神は、悪神を追い払い、富貴栄達を授ける神とされるんでっせ」
「じゃあ、雷神は?」
キムコが質問した
「一方の雷神は、別名、水神といわれとってな、悪をこらしめ、善を勧めて風雨を調える神なんや」
「へぇー」
「でな、風神雷神つーうのはな、仏法を護る神なんやで」
「何で雷神は水神でもあんの?」
また、キムコが豚子に質問
「雷を鳴らして、雨を降らして、田んぼや畑に水を与える事が出来るんよ」
「おぉぉー理解!」
「ふーん、そうなんだ、逆に聞くけど、豚子はどっちが好きなの?」
「私は雷神やね!」
「でっ、私が風神を選ぶと何があんの?」
「ちょっと待っててや」
豚子は店に奥に行き
「じゃーん!」
スカジャンを着て出て来て、モデルみたいに回転したり、ポーズをとり振り向いたりしだした
「おぉぉ!格好いいじゃん」
キムコが豚子に詰め寄る
「女なのに、そんなチンピラ服、着るの止めなさいよっ!」
豊子が怒鳴ると
「凄えーな、ちゃんと刺繍してるし、絵も上手いから、豊子も見てみろって」
キムコが言うと、豚子は私の前に来て
「ホラ、よう見てみぃ〜」
確かに見ると、絵も刺繍も上手いが、完全に横須賀のチンピラ
「特攻ズボンの上に、コレ着てな、浜川崎の風神雷神で二人で売りだそうや!」
「・・・・」
「イイなー何処で買ったの?」
キムコは、すっかり豚子のスカジャンに魅入られて尋ねる
「知りたいんか?」
「はい!」
「風神雷神は、私と豊子だから、真似したらあかんで」
「はい!絶対にパクりません」
せやったら、教えたってもエエけどな
「お願いします」
🙇🙇🙇🙇
「蒲田のな、西口のプロムナードや」
「おぉぉー!蒲田だったら近いし余裕だな」
「横須賀やハマだったら、殺されるやろ」
「豚子ちゃん、一緒に買いに行くの付き合ってよ」
「そう、思ってな、豊子用にコレの赤を取り置きしてもらってんねん」
「なんだ、話早いじゃん、三人で、明日行く、よし決定だな」
キムコは既に買う気満々で私に言ってきた
「ほんなら、決定やな、明日はヨロシク〜」
「二人共、ちょっとイイカナー」
「なんだよ?」
「なんや?」
そもそも、あの特攻服は京子さんのだし
私は金輪際、二度と集会にも出ないし
そんなの着て、風神なんてやんねーんだよ!
この、暴走馬鹿共がっ!
月曜日の放課後、スカジャン買いに行くのをバックレようと思ったが
私は豚子と同じクラスで・・・
「豊子さ〜ん、今日も一緒に帰りましょー」
帰りのホームルームが終わるなり、豚子が後ろから抱きついてきた
豚子に捕まり、私は渋々一緒に校門を出て
「本当に買いに行くの?」
「ほら、もう待ってはるし」
豚子が指すと、20メートル先にキムコがヨンフォアで待っていて
「お〜い!」
馬鹿がヨンフォアに跨ったまま、叫んで手を振っている
「しょうがないから、付き合うけど、買わないし、風神なんてやらないからね!」
豚子も近くのスーパーにインパルスを停めて来ていて
三人で大師橋を渡り、蒲田駅にバイクを走らせた
駅の近くの路地裏にバイクを止め、プロムナードまで歩きだすと
「ねぇーなんで蒲田は平気なの?」
私はキムコに聞いてみた
「こっちはさ、羽田に野良猫の支部があるし、六郷土手や森ケ崎には部落あるだろ
「そうなんや」
「だから、川崎まで通ってる奴も多くて、友好的なんだよ」
「なるほど~」
「実際にダチもいるし、学芸大の方にも野良猫の支部あるんだぜ」
「そんなんより、撮影所があった、キネマ通りって何処やねん?」
「キネマは反対側だよ」
「後で行ってみようや」
「反対って言っても、京急の向こうだから、歩いてなんか行けないよ、行くなら大師橋渡る前に言ってくれよ」
「ガビーン」━(;´༎ຶД༎ຶ`)━
「キネマの先の運河沿いが森ケ崎なんだけどな、別に何もないよ」
「せやったら、帰りも寄らんでええわ」
キムコが説明してる間に、西口プロムナードのヤンキー服屋に着いた
「おぉぉー品揃いだなー」
キムコは興奮して、キョロキョロしだす
店の中は、援団ジャージにボンタン、タックが入った作業服の特攻ズボン
「ねぇー作業服のズボンと、コレって何が違うの?」
私は特攻ズボンを手に取って、キムコに質問
「ほら、生地が違うだろ、これは学ランのボタンと同じポリ100パーだから、タックの線がバリっとすんだよ」
「なるほど〜」
「裾はダブルにしてな」
「何でダブルなんや?」
「現場で裾ダブルだと、引っかかるから怒られるし、禁止なんだとよ」
「作業中に裾が引っかかると、危ないのね」
「タック入りも、駄目な会社とか今はあるらしいぞ」
「なんや、学校みたいやな」
「だから俺達はツータックで、ダブルの裾上げは3・5が、黒猫の決まりだ」
「ふーん、同じようでも作業服とは微妙に違うのね」
「コレが不良の拘りよ!」
「何が拘りや、ただのアホやろ」
「ガビーン、ねぇスカジャンはどっち?」
「左奥や」
豚子が教えると、キムコは一人で行ってしまい
不良の服ばかり、狭い店内にぎっしり下がっていたが
豚子はズンズン進み
「こんにちはー」
(* ̄∇ ̄)ノ
豚子は関西弁のイントネーションで、レジに座るオジさんに挨拶した
「おお、この前の子!」
店のオジさんは、豚子を覚えていて
「どう、似合ってる?」
豚子はオジさんに、着ているスカジャンを自慢気に見せると
「似合う、似合う、オジさんが若かったら、惚れちゃうねー」
「オッチャンも上手いわー、この前取り置きしたやつ、出したってや」
「OK~ちゃんと、取ってあるって」
オッチャンは振り向いて、他の客が刺繍やら別注文した仕立て済みの棚から、赤い風神雷神のスカジャンを出して、豚子に渡した
「ほら、着てみいー」
豚子に手渡されて、照れながら袖に手を通すと
「彼女は、赤が似合うねー」
「せやろー」
「ちょっと大きい気がするけど」
私は照れながら、鏡に映る自分を見て言うと
「ポケットに両手入れてみぃ〜」
豚子が言ったので、両手を入れると、なんか丁度いい感じ
「MA1みたいにピッタリやとな、ポケットに手を入れた時が、メッチャダサいねん」
「うん、なんか軽いし、楽チンだね」
不良っぽい上着は一枚も持ってなかったので
普段着ならイイかな?
それと、豚子の黒銀や、MA1の軍服色より
断然に、この赤銀が可愛いかったので
さりげなく、値段をみると一万四千円
(; ̄O ̄)(; ̄O ̄)
「やっぱり、ちょっと私には無理かな」
そう言って脱いで、オジサンのレジの前に置くと
「既に、コレはお嬢さんのスカジャンだよ」
「えっ・・・」
「誕生日やろ、私からのプレゼントや」
「なにそれ?」
「今日はサイズだけ、確かめたかったんよ」
「ほら、着て帰りなさい」
オジサンは、私に着せてくれて
「誕生日プレゼントって?」
「ウチの時は、逆に貰うから遠慮せんといてやー」
「うん、可愛いね!ポニーテールにしたら、完璧だよ」
オジサンは、褒めちぎってくれる
「ありがとう・・・」
━(;´༎ຶД༎ຶ`)━(;´༎ຶД༎ຶ`)━
私が声を詰まらせて、豚子に御礼を言うと
「コレでどうよっ!」
虎と龍の刺繍が入ったスカジャンを試着した、キムコが得意げに寄って来た
私と豚子は思わず、吹いてしまうと
「なんだよ!その笑いは」
「ぴちぴち過ぎんねん!」
「ダッサ~」
「似合ってないか?」
キムコが残念そうに、呟き俯いたので
「こういのは、革ジャンと違って矢吹ジョーみたいに、ポケットに両手入れて着るのが、お洒落なのよーん」
私は得意気にやってみせると
「真冬は、もう一枚中に着るやろうが」
「そのサイズだと、単車に乗ったら、腰も手首も、でて逆に寒いよ」
更にオジサンが補足すると
「そうかっ!ちょっとサイズ変えてくる」
三人でスカジャン着て、意気揚々と店を出てると
「豚子ちゃんの言う通り、ポケットに手が入れやすい、大きめサイズだと良い感じだなー」
キムコは両手を突っ込み、スキップで、後ろ歩きしながら、私達に言うから
「転んだら、オニューなのに破けるから、前見て歩きなさいよっ!」
私は注意して、バイクを停めたとこまで歩き、離れた自販機で缶コーヒー飲んでると
ブォーン♫
青いヨンフォアが、私達のバイクの横に止まり
豚子のインパルスとキムコのヨンフォアをマジマジと見出した
「女?男?」
キムコが、小声で私達に聞いた
真っ赤な髪だった・・・
「なんか、ウチらの単車メッチャみてるやん」
今度は豚子
「あの人、女だよね」
「せやな、腰つきが女や」
「男かと思ったよ・・」
キムコが小声でいうと
「ねぇー!この単車って君達の?」
やっぱり彼女は女で、大声で叫びながら。近寄って来た
「そうだけど」
キムコが答えると
「川崎から来たんだ?」
髪が真っ赤だが、かなり可愛いい〜というか
美少年ような綺麗な人だった
「まぁ、川崎だけど」
「どっちの川崎?」
「海側だけど」
キムコが全て答え、豚子は完全にシカトしている
「君のインパルス?」
「いや、俺のはヨンフォア」
「って事は・・?」
彼女は私と豚子を見比べた
「インパルスはウチや」
「あっ、関西弁!」
「なんやねん!コラっ」
豚子がいきなり立ち上がった
この頃、豚子の身長は既に165センチで
スカジャンのサイズは L だったのだが
青いヨンフォアの美少年みたいな彼女も
豚子と同じぐらいで、細身の長身だった
豚子が青いヨンフォアの美少年に、いや彼女に詰め寄ると
「GS乗ってる、京子って知ってるよね?」
「えっ・・・」
「京子とオネーサンに、ドラミがヨロシクって伝えといてね〜」
そう言うと、彼女は、コンチハンの青いヨンフォアで、あっという間に去っていってしまった
私とキムコは、喧嘩にならず、安堵の溜息の後に
「京子さんの事だよね」
「GSだから間違いないだろ」
キムコが答える
「オネーサンって、豚美さんの事じゃないの?」
私が豚子にいうと
「あの女、髪が真っ赤なのに。ヨンフォアは青ってセンスあんねんな」
豚子は、そう言って煙草を投げ捨てた
川向こうの、東京の大田区・・・
彼女が伝説のレディースの頭だったのは
私達は、まだ知るよしがなかった・・・
続きは、来週末で
(m´・ω・`)m ごめんなさい