前回のブログで紹介したエルミーニ1100スポーツ、エントラント兼ドライバーはAlberto Tononi なる人物、通称アルベルト君ですが、彼は自分一人だけのエントリーで、助手席が空いていたのでした。
そこで主催者がその助手席に招いたのが、イタリア語を喋れる日本人たる僕らのコーディネーター、YN女史だったのです。
で、初日の最終ステージは漆黒の闇のなかを走るセクションですが、僕らのフィアット1100TVにはトリップメーターも地図を読むマップランプも備わっていないため、ミスコースしたら一巻の終わりです。
そこで僕らは、アルベルト君のエルミーニをひたすら追走することにしたのですが、片方のバルブが切れていた1100TVのヘッドライトを、地元エンスージアストの心に染みる協力のもとに街のガソリンスタンドで修理したりしていたので、本来のスケジュールに対して大きく遅れて走り出しました。
だからアルベルト君、たぶん僕らを気遣ってそれなりに抑えて走ってくれたのだと思うけれど、それでも彼のクルマは同じ1.1リッターでもツインカム搭載のレーシングスポーツだけに、速い速い。
郊外の道路では街路灯ひとつない闇のなか、エルミーニの小さなテールランプを追走する僕らのフィアットのスピードメーターは常に130km/hを指しっ放しだったのですから、1100TV、やるもんです!
しかもこの1957年1100TV、フロントもベンチスタイルのシートには3点式はおろか2点式のベルトさえ備わっていなかったのですから、考えてみると怖い状況ですが、ま、深く考えないようにしてスロットルを踏んで130km/hを保ち、可能な限り繊細にステアリングやブレーキを操作していたのでした。
上の写真はそういった漆黒のカントリーロードをいくつも抜け、ちょっと大きな街に入る手前で停まって地図の確認をするエルミーニ1100スポーツと、それを追走してきたフィアット1100TV。コーナリング中にホイールが変形でもしたのか、知らない間に左後輪のホイールキャップがなくなっていました。
それにフィアット1100TVの姿勢が後ろ下がりなのは、日本からやってきた僕とG誌N編集長のラゲッジおよびミラノから来たYN女史の荷物を、トランクルームとリアシートに満載しているからなのです。
同じ場所で、エルミーニ1100スポーツのチャーミングな後ろ姿と、アルベルト君それにYN女史。
エルミーニをレンタルして本気で臨んだタルガ・フローリオの初日最終ステージを半分捨てて、僕らに付きあってくれた好漢、イタリア本土からやってきたアルベルト君に感謝、感謝でありました。
ときに現地時間9月29日午後9時ちょうど、しかし目の前に灯りの見える街はまだこの日の終点ではなく、再び漆黒のなかを疾駆する1時間半ほどのドライビングが僕らを待っていたのでした。
Posted at 2011/10/23 13:43:11 | |
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