ヘリコプターに乗ったことのある人で、それが好きな人がどれくらいいるか知りませんが、僕ははっきりいって苦手ですね、ヘリコプター。
今から30年近く前の80年代初頭のこと、栃木県にある某自動車メーカーのテストコースまで、東京郊外からヘリコプターで往復したことがあったのですが、そのとき僕は、これからの自分の人生、できることならヘリなんぞに乗ることなく過ごしたいものだと、本気で思ったのでした。
もともと高所恐怖症の傾向があるのに加えて、ヘリコプターなるもの、飛行機と違ってスタビリティ感が希薄で、不安定に浮遊しながら飛んでいる印象が強く、特にそのときは季節風の強い冬の搭乗だったので、余計に不安定な乗り物に感じられたからです。
ところがカリフォルニアを舞台にした今回の911カレラGTS試乗会で、あれほど乗りたくなかったヘリコプターに乗らざるを得ない事態に陥りました。
試乗会の基地になったパームスプリングスから帰路の成田便に乗るLAX=ロサンジェルス空港までの足として、ポルシェが用意したのがなんとヘリコプターだったのです。
現地時間の11月19日朝、パームスプリングス空港で僕らを待っていたのは3機のヘリで、そこに4人、3人、ラゲッジ、の組み合わせで搭乗、LAXを目指したのでした。
しかも、前日の試乗日には雲ひとつなく晴れ渡っていたカリフォルニアの碧い空にはこの日、一転して雲に覆われ、なにやら嫌な予感が・・・。
案の定、僕ら4人とパイロットの合計5人が乗り組んだヘリは有視界飛行の原則にのっとって、白茶けた色の砂漠のなかを走るフリーウェーの上空を飛んでLAの方向を目指したのですが、およそ1時間と予定されたフライトの15分ほどが過ぎたころ雨雲のなかに入り、視界がかなり限られることに。
すると、ナビではなく手持ちの紙の地図に目をやっていたパイロット君、「リスクの少ない方に進路を変えます」といった意味の言葉を発してヘリをUターンさせ、さらに少し戻ったところで方向を転換、同時にぐんぐん高度を上げ始めたのでした。
そう、雨雲に突っ込む危険を避けるため、距離的には遠回りになるのを承知で、彼は敢えて山越えのルートを選んだのあります。
それからはもう、カリフォルニアにはこんなに山があったのかと呆れるほどの数の峰々を越える高高度の飛行が続き、アクション系のアメリカ映画の主人公になったかのような景色が眼の前と眼下に展開されたのでした。
雲の上を飛んだため、途中まで覚悟していたほど揺れなかったのは幸いでしたが、しかしカリフォルニアの空、そう甘くはありません。
パイロット君が「この先は気流が強く流れているから」と説明してくれた最後の高い峰を越えたところで機体が何度か大きく上下動、やっぱり二度とヘリには乗りたくないと、僕は再び思ったのでした。
ここに埋め込んだ2つ目の動画で画像が激しく上下動しているのが、そのスポットを通過しているところです。
しかし幸い、それを最後に大きな揺れは収まり、ビバリーヒルズの辺りではないかと思われる高台の高級住宅地の上空を過ぎると、今度は埃っぽい印象のLAの街が眼下に広がり、やがてLAX空港が見えてきたのでした。
予定の1・5倍に及んだ1時間半の飛行時間を費やしてヘリコプターはLAXに隣接するヘリポートに着陸、他の2機もほぼ同時に着いて、僕らは無事、シンガポール航空の成田便に間に合ったのです。
今となっては面白い経験をさせてもらったという気分もありますが、300~500㎞レベルの距離までの移動は陸路、それもクルマに限るぜとあらためて思った、スポーツカー親爺でありました。
Posted at 2010/11/23 18:01:40 | |
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