ブーコンの制御について調べてるうちに泥沼にハマってしまい、2JZのシーケンシャル制御の勉強まですることになってしまいました
キッカケはHKS推奨のブーコンの制御配管です
プレッシャータンクってなに?から始まり、もっと簡単に出来ないのかと調べていましたが、HKSの配管に疑問を持ち、答えを求めてネットを徘徊
そして辿り着いたのはクラブアリスト(現クラブレクサス)の過去Voiceのページ
何年前のものかはわかりませんが、OTSIRAさん・TOMさん・701KAZさんという今では大御所が同じ問題を解決するために話し合っている書き込みを発見できました
A4用紙にびっしり6ページにもおよぶ書き込みにて納得できる答えを確認できましたので、忘れないうちに記録しておきたいと思います
なお、今回は図を見ながらでないと分かりにくいと思います
PCやスマホなどフルブラウザで見ることを前提に書かせていただきます
まずはアリストのノーマル制御について解説していきたいと思います
アリストはツインターボですが、シーケンシャルツインターボと呼ばれる制御をしています
低~中回転域まではシングルタービン、中~高回転域はダブルタービンで過給するように電子制御され、またブースト圧についても電気的に管理されています
上図が2JZのターボ構成です
エンジン左側にタービンが2つありますが、下側がプライマリー(最初に動くほう)、上側がセカンダリー(中回転域から動くほう)といいます
この2つのタービンを丸で囲まれた4つのアクチュエーターで制御します
アクチュエーターは下図の色が塗ってある部分です
構成図でオレンジで囲まれたアクチュエーターはこちらからみるとセカンダリータービンの裏側になるので見えません
アクチュエーターは設定された圧力になるとロッドを押して弁を操作するようになっていますが、バネと圧力(ブースト圧)のバランスで動きますので、圧力がかかり始めると徐々にロッドを押してしまい弁が開き始めてしまいます
これでは正確なコントロールが出来ないので、2JZではVSVと呼ばれる電磁弁を使用し、ブースト圧がかかってもVSVの弁から圧力を逃がしたり送り込んだりして、アクチュエーターの動作をコントロールしています(基本的にはブーコンの動作と同じです)
アリストは4つのアクチュエーターを電気的に制御するため、すべてのアクチュエーターにVSVが取り付けられています
実際VSVには2種類あるのですが、今回の説明では省略させていただきます
まずブースト圧をコントロールしている赤で囲まれたアクチュエーターの説明です
設定された圧力になると、動作して排気側にあるウェストゲートを開いて排気をバイパスさせ、タービンの羽に当たる排気ガスを減らしてタービンの回転上昇を抑えブースト圧の上昇を抑えます
通常のツインターボの場合、両方タービンにこのアクチュエーターがそれぞれ付いていて、タービン個別に制御しています
しかし2JZのセカンダリー側を見ると、通常のツインターボのようにアクチュエーターが付いていますが、ウェストゲートではなく排気バイパス弁と書かれています
一見するとブースト圧制御用のアクチュエーターに見えますが、実は2JZの場合はこのアクチュエーター(オレンジで囲まれた部分)はブースト制御用ではありません
ブースト圧のコントロールは赤で囲まれたアクチュエーター1つで行っています
なぜ通常のツインターボのように2つではなく1つで可能かというと
図で比べてもらうと分かると思いますが、エキマニ(排気管)の構成が違います
通常6発のツインターボでは3本ずつまとめて1つのタービンへ送り込むので、個別にアクチュエーターを設けて制御が必要になります
しかし2JZの場合はシーケンシャル制御を行うために、この3本ずつまとめたエキマニがさらに真ん中で繋がっています
このため6本すべての排ガスをプライマリータービンだけに当てることが出来るので、低回転域からタービンを高速で回せるわけです
つまり緑の部分は常にすべて同じ圧力(排ガス)となります
ブーストを制御するためにはタービンの羽に当たる排気ガスの圧力を下げればいいのですから、緑色部分のガスを抜けばいいことになります
つまりどこから抜いても同じ、わざわざ2カ所から別々に抜く必要がないのです
なのでブースト圧の制御はウェストゲート1つ(プライマリー側だけ)だけで行っています
では外観上まったく同じに見えるセカンダリー側のアクチュエーターは何に使用しているのでしょうか
アクチュエーターの繋がった先をよく見ると「排気バイパス弁」と書いてありますね
排気バイパス弁とは何の仕事をしているかというと、それはシーケンシャルの制御に関係してきます
もう一度この図を見てください
青で囲まれたアクチュエーターが2つあります
1つはセカンダリーの排気出口を塞いでいる「排気制御弁」に繋がり、1つはセカンダリーの過給出口を塞いでいる「吸気制御弁」に繋がっています
吸気制御弁はプライマリー単体で過給しているときに、セカンダリー側へ過給圧が逃げてしまわないように栓をしています
排気制御弁はプライマリー単体で過給しているときに排気ガスをセカンダリー側へ流さないようにするためのもので、セカンダリータービンのマフラー側で排気管を塞いで排気の流れを止め、すべてをプライマリーへ行くように栓をしています
セカンダリータービンが動く領域まで来ると、両方の弁が開いてフル回転となりダブルで過給をするようになります
セカンダリーは排気制御弁が開くとフル回転を始めるわけですが、それまでは弁が閉じられ排気の流れが堰き止められているのでタービンに排気ガスが当たっていてもほぼ回っていません
しかしほぼ回転していない状態から過給タイミングだからといって排気ガスを通し始めたのではフル回転になるまでにタイムラグ(ターボラグ)が生じてしまいます
そこである程度ブーストが上がってきたら排気バイパス弁を開いてやり、少しだけ排気ガスをプライマリー側の排気管へ流してやります
そうすると排気の流れができるので、フル回転ではありませんがすこしタービンを回してやることができます
あらかじめタービンを回しておく(助走)ことができるので、素早くフル回転に到達できるようになるのです
これが排気バイパスバルブの役目です
プライマリータービンに付いているアクチュエーターからの弁は
ウェストゲートで、
タービン前からタービン後に配管されています
セカンダリータービンに付いているアクチュエーターからの弁は
バイパスバルブで、
タービン後からプライマリータービンの排気管へと繋がっています
写真の矢印の部分がバイパス管です
この違いを覚えておかないと後の説明で混乱しますので覚えておいてください
2つは同じようなところに付いていますが、全く違う弁なのです
シーケンシャル制御について分かっていただけたでしょうか
いよいよ本題のブーコンの接続についてです
まずはこちらをみてください
HKS推奨のブーコンの配管です
これを先ほどの図に書き直すと
こんな感じになります
お気づきでしょうか
ここが最大に自分が疑問に思ったところです
HKS推奨配管だとプライマリーのアクチュエーターの配管は当たり前ですが、セカンダリー側にある排気バイパス制御用のアクチュエーターにまで配管されてしまいます
つまりこの配管にすると、排気バイパス制御用の弁をブーストコントロールに使おうとするような接続になります
しかしアクチュエーターの位置は同じでも、
バイパスする場所(弁の位置)が違いますからブーストコントロールには使えません
アクチュエーターにはブースト設定圧力になるまでEVCから圧力が来ないため、バイパス弁を開くことが出来ず、セカンダリータービンの助走が出来なくなってしまいます
というよりは殺してしまいます
ブーストが設定圧力になってからバイパス弁が開くという動きになるので、このときにはもう排気制御弁は開いていてセカンダリーはフル回転してるわけですし、この動き自体に意味がない感じがします
どうせならそのまま機能を殺しておいたほうがいいように思うのは自分だけでしょうか
本来は排気制御弁をバイパスするものですが、このタイミングで開けると抜けが良くなったり悪くなったりの変化があるんですかねぇ
抜けが良くなるなら余計にオーバーシュートしやすい感じがします
ってことは排気干渉して逆に悪くなる!?
なぜこんな制御にしたんでしょうか
セカンダリータービンのアクチュエーターをブーストコントロール用と勘違いしているのでしょうか
それともこのほうがブースト制御の安定がいいのでしょうか
このあたりの検討についてクラブアリストの掲示板でも大御所の方々がいろいろと実験をされ、その結果などが多数書き込まれていました
その一文を掲載させていただきます
ちなみにこの件についてHKSに問い合わせたそうですが、要領を得ない回答だったそうです(笑)
<通常配管は、ノーマル同様セカンダリをしっかり助走させるので、3000回転から4000回転あたりのプライマリとセカンダリの連携をスムーズにし、トルクをわりとフラットに保ちます。ブーストの立ち上がり方はノーマルと同じです>
<HKS配管は、セカンダリの助走を減少させ、3000回転までのオンリプライマリ領域では助走分の排気圧もプライマリをまわすために費やすので、ブースト&トルクの立ち上がり方が極端で、3000回転までは、通常配管より早く立ち上がります。その変わり、セカンダリとの連携ではブーストの谷が顕著となります。また、セカンダリの連携が終わって両タービンがフルにまわってからは通常配管と同じです>
これはTOMさんの感想です
TOMさんは3000回転までのブーストの立ち上がりが早いのでHKS配管にしているそうです。ただし、いつでもワンタッチで通常配管に切り替えられるよう細工をしたそうですよ
これはTOMさんが載せてたデータです
数値はブースト圧になります
回転数 助走させる 助走させない
2000 0.0 0.0
2500 0.3 0.5
3000 0.6 1.0
3500 0.8
0.8
4000 1.15 1.15
HKS配管が悪いわけではありませんが、純正の機能を殺しているのは間違いないです
この時のクラブアリストの掲示板では助走はなくさない方がいいだろうという結論になっていました
つまりはこういう配管になります
ブリッツやトラストが推奨している方式ですね
ブーストコントロール用アクチュエーターから繋がっているVSVへの配管ははずさないと純正のブーストコントロールが介在してしまいます
はずしたところには目くら蓋をしておき、アクチュエーターへの圧力が逃げないようにしておきます
もしくはVSVに入っている青いコネクターを抜いておくだけでも大丈夫です
自分はコネクターをはずしてぶら下げておくのはイヤなので目くら蓋を選択したいと思います
なんとなくでも理解していただけたでしょうか
キッカケがなければおそらく勉強することもなく終わっていたと思いますが、今回のブーコン取付に当たっていろいろと調べてみました
結果として通常のプライマリー側の配管のみでもブーストアップやブーストの安定制御には問題ありません
しかしプライマリーの更なるレスポンスアップを期待するならHKS配管がいいかもしれません
シーケンシャルの段付きを気にするなら通常配管でしょうか
ちなみにKSPではHKS配管をしているそうです
今まで特に不具合はなかったのと、HKSの方がオーバーシュートが少ない感じがするとのことでした
実際に両方試してみないと分かりませんね
どちらを取るかはオーナの選択になるかと思いますが、HKS配管に出てくるプレッシャータンクへの配管は車を持ち上げないと厳しそうです
※ふとHKSオフィシャルのEVC6の説明ブログを見たら、現在のHKS推奨配管は以前と違ってブリッツやトラストと同じになっていましたw
よかったら参考にどうぞ (2014.01.31)
EVC6ってナンダ! 第17話
ぜんぜん関係ありませんが、常時ツインのやり方を詳しく書いたページがありましたので、リンクを貼っておきます
車種もエンジンの世代も違いますが、制御は全く変わらないと思います
http://www.geocities.jp/ace_kazukun/twin.html
図で表すと赤の配管へ変更します
プレッシャータンク(ブースト圧力をワンウェイバルブで溜めておくタンクです)からの圧力を常時アクチュエーターにかけておき、吸気および排気制御弁を開きっぱなしにすることで常時ツイン化します
ワンウェイバルブが壊れてない限り、圧力が抜けることはありません
ただしプレシャータンクの出口側のホースを外すと圧力が抜けてしまうので、最初のエンジンスタート時はタンクが空です
一度ブーストをかけて圧力が溜まってからが常時ツインとなります
2012.05.14
ブーストコントローラーの制御圧力取出し位置を、インタークーラー前から後に変更しました
プレッシャータンク充填のための圧力取出し位置も、こちらにしようか検討中です