ある日ふと思いつき、しばらく考えを巡らせていました・・・・
私自身は自分の愛好するクルマや時計たちの一体どこで“自分の愛機”と認識しているのかなぁ、と・・・・
ちょっと意味わからんかもですが、クルマにせよ時計にせよ“最も重要な部分”がすなわちそのクルマあるいは時計の個体同定になっている、と漠然と考えていた一方で、自分自身はとことん考えたことがなかったように思います。
まずクルマですが・・・・
クルマ好きな面々の考え方や車種によってもどの部分が一番重要か(≒個を特定する部分)が違うかもしれませんが、可能性の高いものとしてはエンジンがあると思います。エンジンはそのクルマの性能やフィーリングに大きく関与し、かつドライバーもその調整(調教?)にも心を配り、その良し悪しでクルマの調子は変わるし、好き嫌いや買い替え心理にも大きく影響します。
そういう意味ではエンジンが根幹パーツであり、エンジンが修理不能な故障をきたすとそのオーナーの愛車は終焉を迎える・・・というふうに感じますが実際はそうでもないですよね。エンジンは正直載せ替えも頻繁に行われ、修理コストやチューニングのメリットによっては載せ替えに抵抗がないケースもあります。かくいう自分も8万キロ段階で重大な故障が起き、載せ替えコスト観点と手組みエンジンが入手できる(≒チューニングできる)ことを考え、載せ替えていますので、元々ついていたエンジンはすでに乗っていません。
正直なところ、自分はエンジン以外にもドア、ガラス、リアフェンダーといった取り外し困難なもの以外の外装パーツはことごとく交換してあり、また内装もシートやドア内張、センターコンソールなどが交換されており、オリジナル状態の純度がかなり低いです。
そんな交換済みパーツ(非オリジナルパーツ)だらけの状態でも、自分にとってはこのカプチーノ自体が27年間ずっと維持している愛車であります。そうなると自分にとってのこのカプチーノの個の認識とはおそらくフレームなどの中身(エンジン以外)なんだと思います。あと外装パーツはいつでも戻せるとの認識もあり、余計に(部品交換(オリジナルパーツ温存)は個の認識に影響していないとも言えます。
一方時計ですが・・・・
時計も多くのパーツで構成されていますが、非常に大きいのはムーブメント(キャリバー)でしょう。
純粋な値段の観点なら必ずしもムーブメントのコストが最も高いとは限りませんが、ムーブメントが何なのか(どの機種なのか)やその仕上げによって愛好家の熱意も影響されます。また定期的に行われるオーバーホール(OH)でも基本的にはムーブメントの分解洗浄をすることで初期性能に戻すことが通例であり、故障においても最小限の部品交換で済ませることが多いです。
となると、時計はクルマ以上に個の認識がムーブメントに拠っている可能性が高いように感じます。実際自分は結果論かもしれませんが、エルプリメロ(Zenithのクルのグラフのムーブメント)や各種GSのムーブメントなど、機械にこだわって機種選定をして買い集めてきています。ですので、自分にとってもムーブメントは時計の個を特定するほぼ決定要素に感じています。この個の認識とは修理や調整でもあくまでオリジナル部品に対して施して欲しいし、交換パーツも最小限にして欲しいとも思います(もちろん技術的な可否にもよりますが)。
こういった考えを持ちながら時計を愛でていますので、過去に購入しなかったケースがあります。一つはカルティエのパシャですね。
デザインが気に入ったからと少し前に旧パシャ購入を検討したことがあります(家内の時計)。旧パシャは搭載しているムーブメントは確かETAの機械で、アクセントとして竜頭に石が埋め込んであるのですが、なんとメーカーにオーバーホールを頼むとブーブメントごとごっそり交換し、さらに竜頭まで変わってしまう(石がないタイプになる)と聞いた家内が一気に興味をなくし、結果的にBreguetのマリーンを購入しました。
この機械全とっかえは自分の感覚では個の消失に近く、到底受け入れ難く、家内も似た感覚だったようです(家内は竜頭の石が決め手かもですが)。
同じようにETA7750搭載のクロノグラフでも似たようなことが行われることがあるようです。ETA7750は名機といえる優れたクロノグラフムーブメントではありますが、徹底した大量生産向けの機械であり、生産数も半端ない数です。またコストもかなり安いため、変に分解洗浄などするより、載せ替えちゃったほうがラクなのも頷けます。でも、だからと言って自分にはやはり抵抗感があります。それもあって自分は結局はETA 7750搭載のクロノグラフは買ってこなかったのかもしれません。
この機械全とっかえ手法はSWATCHグループ(ETA社も所属)のみならず、ひょっとしたらETAからムーブメントを仕入れている会社にもあることかもしれません。この手法を取るのは納期が早いことや結果としてコストが安いなどもあるでしょう。でも一方でETAの機械は整備性が良いことも特徴ともされていますので、手間暇ケチりすぎて愛好家心理を損なっていないかな、とも感じます(早くて安けりゃいい、って人もいるでしょうけど)。
画像に写っているOmega SeaMaster GMTも機械はETAのもので、ひょっとしたらメーカーでは機械入れ替えOHをするかもしれません(過去の依頼では少なくともそうではなかったけど)。
自分としては個の消失を避けるために、あえてメーカーに依頼するのではなく、腕のいい時計師にOHが頼めるように色々模索しています。結果として今は3つくらいの依頼先を活用していますが、一方でこの思い入れが融通が効かない要因なのかな、とも思ったりします(だって車ではエンジン載せ替えを許容するのに、時計だとダメなの?みたいな・・・・)。
Posted at 2023/04/15 17:52:02 | |
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カプチーノ | 日記