いわゆる8ナンバー車などの特装車の特集です。8ナンバーではない架装・特装車両もこちらで紹介させていただきます。タイトルは言いたかっただけです。今回は照明車特集です。記事の都合上、画像は過去掲載分を多く含んでおります。
照明電源車は夜間の災害現場等において現場周辺を明るく照らし、消防職員の活動支援を行う車両です。
特装最前線Vol.1や
同シリーズVol.2でも軽く紹介しておりますが、現在はポンプ車や救助工作車等に搭載されている照明装置が高性能なので専用車両が配備されていない本部も存在します。
先ほどの車両は東京消防庁本田消防署奥戸出張所照明電源車の車両で、ブームを最大10m起伏可能です。先端に取り付けられた照明装置はLED式の光源となっており、従来のハロゲン式のものよりも明るく、省電力で照らすことが可能となっています。
奥戸SSはいすゞ5代目後期型フォワードをベースにした照明電源車で、Vol.1で紹介した立川消防署の車両よりも一回り小さな車両となっています。
車体後部には発電装置の操作盤があります。照明電源車の発電機から医療機関等への供給を行うことも可能です。テールランプは小糸製作所のトラック用オールLEDリアコンビネーションランプ2連タイプを採用しています。車体後部に貼られたステッカーから、櫻護謨株式会社が架装したと思われます。
この中型照明電源車は大型照明電源車の特殊なブーム装置と異なり、トラック搭載型の直進式クレーン装置のブームを流用したものとなっています。その為、車載クレーン同様の旋回や伸縮等の操作が容易に可能となっています。クレーン装置は操作部からタダノ製のものじゃないかと推測。
臨港消防署月島出張所にもいすゞ5代目中期型フォワードをベースとした、奥戸SSとほぼ同型の照明電源車が配備されています。月島SSや奥戸SSよりも小型のいすゞ6代目中期型エルフをベースにした照明電源車が下井草出張所や成城消防署に配備されています。
地方本部では山梨県の南アルプス市消防本部に平成15年に日野初代中期型デュトロをベースにした電源車が配備されています。
こちらの電源車には株式会社湘南工作所製の貫通式の照明装置を装備しています。照明装置には周囲照射灯も装備しています。東京消防庁の車両と異なり、照明装置は一基のみとなっています。
同じく山梨県の甲府地区広域行政事務組合消防本部南消防署にも日野初代中期型デュトロをベースにした電源照明車が平成19年に配備されています。
こちらの車両も湘南工作所製の照明装置を使用しています。シングルキャブでシャッター式の荷台となっています。架装はGMいちはら工業株式会社です。
館林地区消防組合館林消防署には三菱ふそう6代目前期型キャンターをベースにした照明車。平成10年に配備された車両です。消防年報によると、資材輸送車を兼任しているようです。
松戸市消防局六実消防署にも同じく6代目前期型キャンターをベースにした車両が配備されています。こちらも平成10年に配備された車両ですが、照明装置の形状が異なります。
こういった照明車は消防機関だけではなく、国土交通省地方整備局にも配備されています。こちらの車両は2016年に行われた
静岡県総合防災訓練に参加した中部地方整備局浜松河川国道事務所のいすゞ6代目前期型エルフをベースにした照明車です。
普段近くで見る機会の無い国土交通省の照明車ですが、愛知県名古屋市東区にある中部地方整備局中部技術事務所エントランスに期間限定で展示されました。
この展示は2022年10月から12月の毎週火曜日に朝10時から夕方4時の間、特別展示されました。この特別展示は
トミカにもなった照明車が翌年に引退となることから決まったようです。
この照明車は日野初代中期型デュトロをベースとした車両で、2005年3月に製造されたようです。
こちらは動画も撮影しています。
車内には無線機を装備しており、コールサインは「けんせつなごやひがし24」。サイレンアンプはパトライト社製の緊急車両用アンプ、SAP-500CKを装備しています。
赤色灯は同じくパトライト社製の散光式警光灯エアロソニック(AJSシリーズ)を装備。災害時に緊急走行が可能となっています。
フロントグリル部には前面補助赤色灯として同社製LED補助赤色灯LP3-M1-Rが2基取り付けられています。
照明車の荷台部には照明電源用の発電機とアームを装備しています。
発電機は北越工業株式会社のエンジン発電機のAIRMANシリーズを装備しています。この発電機で照明装置の電源を補う他、災害時の電源供給にも使用可能です。発電機上部にはパトライト社製LED式補助警光灯LAS-M1を装備しています。
車体最後部には走行時に照明装置を格納するスペースが。車体に取り付けられた3つの装置はバラスト(安定器)です。この装置で照明装置への電流を安定させるようです。
照明装置は地上から約10mの高さまで上昇可能です。照明装置を上昇させるブームは株式会社アイチコーポレーションの高所作業車スカイマスターSE10Aを流用していると思われます。SE10Aは広範囲先端屈折アームを採用しています。
高所作業車のバケットの代わりに取り付けられた照明装置。照明装置は株式会社湘南工作所製の2.0Kwのメタルハライドランプを6灯装備しています。
照明装置に挟まれてブーム先端にはカメラが設置されており、高所カメラとして災害現場の情報収集も可能となっています。
助手席側の荷台中央部にはブーム及び照明装置の操作盤が設置されています。高所作業車と異なり、バケットを装備しないのでこちらで操作します。
照明車を上部から見ると、発電機上部には国交省という表記が入っております。これは緊急災害対策派遣隊「TEC-FORCE」が派遣され、ヘリコプターなどから撮影された際に国土交通省所属の車両であることがわかるようになっています。
警察にも災害時や警備活動時に現場を明るく照らす為の車両が配備されています。警察では投光車という名称で国費配備されています。
こちらの車両は
横浜国際消防・防災展2022のサテライト会場に展示された神奈川県警察第一機動隊の投光車です。2005年3月に投光車Ⅲ型の名称で7台調達、帝国繊維株式会社が落札しています。
日野初代中期型デュトロをベースにした車両で、先述の国土交通省の車両よりも大型の車両となっています。
ブーム装置はオーストリアのパルフィンガー社製の車載型折り曲げ式クレーン装置、PK4501を採用しています。クレーンタイプにもよりますが、12mほどブームを伸ばすことができるタイプじゃないかと思われます。
クレーンブーム装置の操作部。国産の古河ユニック製やタダノ製のものは車体に対して縦方向に設置されていますが、パルフィンガー社製のものは横方向に設置されています。
こちらの投光車の照明装置はメタルハライドランプを6灯装備しています。
電源供給用の発電機はデンヨー株式会社製の可搬式ディーゼル発電機を使用しています。
赤色灯はパトライト社製散光式警光灯エアロダイナミック(HZシリーズ)、サイレンアンプも同社製のSAP-500シリーズを採用しています。2023年に入り、日野2代目デュトロをベースにした投光車Ⅲ型が確認されています。こちらの車両も帝国繊維が架装しておりますが、ブーム装置が変更されています。
デュトロ以外にもいすゞ5代目中期型エルフをベースにしたトラック型の投光車が2000年9月に調達されています。こちらの車両は投光車(Ⅱ型)という名称で国費で13台調達されました。タダノの「LS-106A」という6灯式メタルハライドランプ照明車がベースとなっているようです。
トラック型車両の他にも、1BOXバン型投光車が配備されています。画像の車両は日産E26型キャラバンをベースにした車両で、2013年3月には画像と同じ前期型の車両が18台国費で調達されています。2019年3月にE26中期型キャラバンの投光車が14台調達され、株式会社トノックスが落札しています。
トラック型の投光車と異なり、1BOXバン型投光車はアウトリガーの展開が必須ではないので、走行しながら照明装置をブームで上昇させたまま使用することが可能です。最近では香港のミニカーブランド
Era CARからも警視庁第三機動隊仕様のものが販売されています。
車内助手席側の荷室部に照明装置及びブームの操作盤があります。注意書きには「投光器(発電機)を使用する際はドア又は窓を開けて充分換気をして下さい」と書かれています。また荷室にはスペアタイヤを積んでいる他、フロントガラスと運転席、助手席を投石等から守る金網を積んでいます。
バックドアには電源供給用の発電機を搭載しています。発電機はアメリカのカミンズ社製オナンRV向け発電機を使用しています。
照明装置はトラック型のものと異なり2灯のみで、湘南工作所製のものを採用しています。
ダッシュボード上部には照明装置や塔(ポール)の稼働状態を示す表示などがされています。サイレンアンプはパトライト社製SAP-500BZを装備しています。赤色灯は大型人員輸送車などと同じ、スピーカー分離型エアロダイナミックシリーズのRAW型を採用しています。ドライバーユニットはグリル内に装備されていると思われます。
E26型キャラバン配備前は、E25型キャラバンをベースにした投光車が配備されています。画像の後期型キャラバンは2006年から2009年の間に101台調達されました。前期型の投光車も2002年から2005年の間に16台調達されています。E25型配備以前にはトヨタ100系ハイエースをベースにした車両が配備されています。また、ランドクルーザーやパジェロの屋根に1BOXバン型同様の2灯投光器(照明装置)を備えるクロカン車ベースの車両も配備されてきました。
機動隊のカラーリングではなく、白黒塗装の車両で投光車とほぼ同じような形状の車両が存在します。こちらは2009年に配備された交通鑑識車で、投光車と装備はほぼ同じとなっています。
赤色灯は投光車と同じく、パトライト社製エアロダイナミックシリーズ(RAW型)を2灯装備しています。投光器にはカバーが掛けられていますが、投光車と同じ湘南工作所製の2灯式のものを採用しています。
これまで電源照明車専用の車両を紹介してきましたが、照明車の役割以外も兼ねている車両を紹介していきます。こちらの車両は愛知県の春日井市消防本部春日井消防署に平成26年2月に導入された照明電源車です。
こちらの車両は日野2代目デュトロをベースにした車両で、CD-Ⅱ型ポンプ車のような見た目ですが、荷台に発電機と高圧ガス製造コンプレッサーを装備しており、空気充填車としての役割も兼ねています。
照明装置は湘南工作所製のLED式のものを採用しています。以前の車両は照明機能と発電機能のみの車両でした。
名古屋市消防局では排煙照明車という名称で照明車が配備されています。こちらの車両には排煙高発泡機能を付加した車両です。画像の車両は日野レンジャープロをベースにした車両で、千種消防署に配備されている車両です。
東京消防庁の奥戸SS同様に、タダノ製の車載型トラッククレーンを昇降ブームとして流用しており、クレーン横には照明装置に繋がるケーブルが絡まらないように、ケーブルリールを装備しています。
車体横に小型の投光器を2基装備しています。排煙高発泡機能は照明装置と同時に使用することが可能なようです。
同市消防局中村消防署にも排煙照明車が配備されています。こちらも日野レンジャープロをベースにした車両ですが、湘南工作所製の伸縮装置と照明装置を採用しており、千種消防署の車両とは架装が異なります。市内4消防署に配備されており、他は瑞穂消防署と港消防署に配備されているようです。
浜松市消防局には支援車Ⅱ型として照明電源ユニットが配備されています。北消防署曳馬野出張所に浜松支援2として配備されている車両で、日野レンジャープロをベースにしており、平成22年に配備されました。
支援車Ⅱ型は脱着コンテナで任意のコンテナを装着可能です。そのコンテナの1つがこの電源照明コンテナです。このコンテナはJレスキュー誌面上にある極東開発工業の広告で見たことがある方もいるのじゃないでしょうか?このコンテナ内に発電機と照明装置を有しています。
元々このコンテナは平成15年(当時は浜松市消防本部)に、電源車として配備されていた画像の車両に搭載されていましたが、特別高度救助隊の発足に伴い中消防署特殊災害対応自動車(資機材搬送車)として運用されたことから新たに支援車Ⅱ型を増配備し、現在は曳馬野出張所の支援2号車で運用されています。こちらの車両は現在、中消防署鴨江出張所で運用されています。
浜松支援2は先述の通り、支援車Ⅱ型として配備されており、コンテナの脱着が可能です。緊急走行装備などの架装はモリタが行ったようです。
フロントバンパーは大きく張り出しており、ナンバープレート部が上に開くような構造になっています。おそらくフロントバンパーに救助活動用のウインチを搭載しているものと思われます。
キャビンにはルーフに登るように日野純正品のサイドラダーが取り付けられています。
キャビンルーフ上にはウィレン製主警告灯とLED式照明装置のNIGHT SCAN CHIEFを装備しています。NIGHT SCAN CHIEFは従来の貫通式ポールを必要とする照明装置と異なり、ポールが寝かされた状態で収納されるのでキャビン上部にも装備可能となっています。
普段は支援コンテナ(中身不明)を搭載しており、必要あれば電源照明コンテナと載せ替えます。鴨江出張所の支援車とコンテナの互換性があると思われます。ちなみに浜松支援1は同出張所に配備されている総務省消防庁無償貸与車の支援車Ⅰ型です。
特捜最前線Vol.2で紹介した藤枝市消防本部中央消防署(現在の志太消防本部藤枝消防署)に配備されていたトヨタ4代目後期型トヨエースベースの照明電源車。昭和60年8月に配備され、平成20年頃に退役しました。
こちらは平成20年1月に照明電源車と入れ替える形で配備されたいすゞ5代目前期型フォワードをベースにした支援車。浜松市消防局の車両と同じで支援車Ⅱ型を採用しており、平ボデーコンテナと支援コンテナを積み替えることが可能です。
こちらの支援コンテナに緊急消防援助隊派遣時等で使用する救援物資を搭載しています。コンテナは左右にシャッター部と扉があり、後部には観音式の扉を装備しています。
浜松の支援車と異なりまして、照明電源ユニットや照明装置を車両に搭載しているわけではなく、工事現場やイベント会場等で使用される発電機搭載型の投光機をコンテナ内に搭載可能です。
支援コンテナ内はこのようになっています。シャッター部には物資を搭載した籠車を収納可能です。扉を開けたところに車輪を乗せるレールがあり、この部分に投光機を搭載します。また、平ボデーコンテナにも投光機を搭載する場合もあります。
こちらの支援車は平ボデーコンテナと先述の支援コンテナとは別に令和3年に水難救助・特殊災害対応コンテナが新たに追加配備されました。このコンテナは同消防本部の焼津消防署に配備されている支援車Ⅱ型と互換性があります。
山梨県笛吹市にはスバル5代目後期型サンバートラックの荷台に発電機搭載型の投光機を積載した軽トラックが配備されています。照明車として運用されているかは不明ですが、ルーフ上には赤色灯を装備しており、緊急走行が可能な車両です。
上記の車両とは別の車両で笛吹市消防本部笛吹消防署にはスズキ10代目キャリィトラック(DA65T型)をベースにした照明車が平成22年に配備されています。一見すると普通の資機材搬送車のようですが、荷台部に伸縮式マストのメタルハライド式400W(4灯)の照明装置を装備しています。発電機はデンヨー株式会社製のものを採用しており、キャブ後ろにアウトリガーを装備しています。このような軽トラックをベースにした照明車は少数で、こちらの照明車は横浜市にある株式会社車工場で架装されたものと思われます。他にも建機レンタルの株式会社アクティオでも開発、レンタルが行われています。
今回は以上です。(浜松市消防局支援車画像差し替え 2023.04.17)
【参考文献】
甲府地区広域行政事務組合消防本部令和3年版消防年報
館林地区消防組合消防年報(令和4年版)
松戸市消防局消防年報(令和4年版)
春日井市消防本部令和4年版消防年報
浜松市消防局令和3年度消防年報
志太消防本部令和3年度消防年報
笛吹市消防本部令和4年刊行消防年報
平成〜令和新時代パトカー30年史(講談社ビーシー/講談社)2020年12月3日第1刷発行
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