いわゆる8ナンバー車などの特装車の特集です。8ナンバーではない架装・特装車両もこちらで紹介させていただきます。タイトルは言いたかっただけです。今回はゴールデンウィーク前後に撮影した特装車特集です。
まずは5月3日と4日の2日間、長野市のエムウェーブで行われた「ながのノスタルジックカーフェスティバル2023」の参加車両からです。こちらは愛知県名古屋市に所在する株式会社アートレーシングのトランスポーター「Artoletti Transporter(アートレッティトランスポーター)」です。
この車両運搬車はトヨタ3代目コースターをベースにしており、バスの車内部分に5ナンバー枠の車両を積載可能となっています。この車両は1960年代のイタリアでル・マン参戦マシン等を運ぶトランスポーターをイメージして製作されています。
車体後部はこのようにスロープ付きのハッチがあり、これを使用し車内にマシンを搭載することが可能です。ハッチはウインチで稼働することが可能となっています。
ドアなどはベース車のものを流用しています。基本的にはコースターの車体の上から外装パネルを貼り付け、ベース車がコースターだと感じさせないデザインとなっています。車高が下がっているように見えますが、これはスカート部を下に延長しているだけで、純正車高のままのようです。
アートレッティトランスポーター走行時の姿です。屋根上に取り付けられたビバンダム君がとても目立ちます。ヘッドライトは純正品の横長タイプのものではなく、車体のビンテージデザインに合わせてルーカスの丸型ヘッドライトに変更されています。
テールランプとウインカーも丸型のものに変更されています。リアはこのようにパネルで覆われているので、後ろを見ることはできませんが、バックカメラとバックモニターを装着しているので、後方の確認も可能となっています。
こちらの車両はモーターゾーンTVでも動画で紹介されています。後方ハッチの開く姿などを見ることができます。
同じく、ながのノスタルジックカーフェスティバル展示車両の日産プリンス2代目後期型(T40型)クリッパーがベースの車両運搬車です。
現在の車両運搬車は荷台部がスライドしたり、油圧式ジャッキで車体を傾けたりするものが多いですが、この車両は道板(ラダー)を荷台後部に置き、積載する車両を自走で積載します。また現在の車載車は荷台部がフルフラットな事が多いですが、この車両はタイヤハウス部が少し出っ張っています。
ちなみにこちらの車両はLPG車に改造されており、車体側面にタンクを装備しています。
実際に車両を積載している状態です。軽自動車のような小さい自動車を積載することが可能です。車両の前後を荷台部に固定されています。
ちなみに荷台に積載されている車はホープスターON型です。ON型は軽自動車初のオフロード4WDにして、ホープ自動車最後の製品です。ホープスターON型はその後スズキ自動車に製造権を買い取られ、ジムニーとして販売されています。
エムウェーブ駐車場に置かれていたスズキ10代目中期型(DA63T型)キャリィトラックベースの車載専用車。軽トラックをベースにした車載車なので搭載できるのは二輪車となっています。
この車は軽トラックのキャリィベースですが、ナンバープレートが白板となっています。これは荷台部分が車体後方に少し伸びているので軽自動車規格の全長3,400mmを超えてしまっているからだと思われます。ちなみにDA63T型キャリイのノーマル状態での全長は3,395mmのようです。
実際にバイクを積載している状態です。登録は普通車のようですが、サスペンション等はそのままになっているからか、最大積載量は250Kgとなっています。
エムウェーブ会場から出てくるいすゞ4代目前期型エルフがベースの特装車、一見すると普通の配送用パネルトラックですが、8ナンバー登録車となっています。
このトラックの正体はラーメンの移動販売車で、ながのノスタルジックカーフェスティバル会場内でラーメンを販売していました。
車体側面左側の扉は移動販売車車内の出入口となっており、車体後部は販売用のカウンター部となっています。
キャビン上部には清水を積んだタンクが設置されています。荷台部はシンクなどの調理器具などがあり、大量の水を置く場所がないのでこの車両はデッドスペースを有効に活用し、設置されています。荷台部(パネルバン)は日本フルハーフの小型ドライバンとなっています。
車体右側には換気扇が設置されています。マッドガードにはいすゞエルフフルフラットローと書かれている純正品がそのまま使用されています。ちなみに車体左側後部にも清水タンクが設置されています。
続いて4月28日から5月6日の間、神奈川県横浜市西区みなとみらい地区のドッグヤードガーデン横で行われた「劇場版『TOKYO MER~走る緊急救命室~』」公開記念企画のERカー展示です。
まずこちらはドラマ版MERに登場した「T01」。T01はTOKYO MER1号車を意味しているようで、トラック型の移動手術車(ER車)です。
ベース車は三菱ふそう初代スーパーグレートの放送中継車で、前1軸後1軸のFPというシャーシを使用しています。この中継車は京成自動車工業で架装された車両で、関東の事業社で使用されていたようです。
以前、
静岡で展示された際は、後部ドアが開けられた状態で展示されていましたが、今回は閉まった状態の展示でした。
元放送中継車という特性上、車体後部には機械などが置かれていたようです。ドラマの撮影の為に、後部ドアを新たに追加したものだと思われます。
ルーフに取り付けられたメインの赤色灯は名古屋電機が製造するLED散光式警光灯FLIX(フリックス)ですが、側面などにある補助赤色灯はメーカー不明です。ホイールキャップは中古で販売されたいた際に装着されていた純正品を塗装し、MER仕様にしているようです。
フロントバンパーはフォグランプと補助赤色灯、青色灯を装備する大型前出しバンパーに変更されています。バンパー上部にはフロントプロテクトガードを装備しています。
そして「劇場版TOKYO MER」に登場するYOKOHAMA MERの「Y01」も展示されていました。T01同様に京成自動車工業が架装した放送中継車をベースとした車両で、関西の事業社で使用された車両じゃないかと思われます。Y01はどういうわけか、今年の横浜消防出初式にも参加した劇用車です。
T01と異なり、赤色灯はパトライトエアロホーク(ALシリーズ)を使用しています。T01もそうですが、散光式赤色灯を傾斜部にそのまま載せるのではなく、赤色灯を水平の基台に載せた状態で架装すればかなり見栄えが良くなると思うのですが…。
ぱっと見では2代目スーパーグレートベースっぽいですが、実はこの車両はフェイスリフトされており、初代スーパーグレートの顔に2代目スーパーグレートのヘッドライトやフロントバンパーが移植されています。
フロントグリルには「SUPER GREAT」の車名エンブレムがそのまま使用されていました。どうせカメラで映らない部分だから問題なしなのでしょうか?ちなみにこのフェイスリフトは三菱ふそう自動車販売内の工場にて行われたようです。
Y01のボディカラーはT01と異なって水色となっており、爽やかなイメージとなっています。側面には神奈川県の鳥であるカモメのイラストも描かれています。
車体後部にはT01同様に観音式の扉を装備しています。テールランプは小糸製作所のトラック用オールLEDリアコンビネーションランプ3連タイプを装備しています。T01と異なり、前1軸後2軸のスーパーグレートがベースとなっています。
T01同様に補助赤色灯と補助青色灯が車体各部に取り付けられていますが、T01に取り付けられているものと形状が異なります。作業灯もY01ではLED式のものとなっています。
展示場所が狭いので仕方がありませんが、どうしてもMER号らの全体写真を撮ろうとすると木が写り込んでしまうのが残念です。
続いてこちらは名古屋市消防局管内の12消防署に配備されている輸送車という車両です。いすゞ4代目フォワードのダブルキャブ車をベースにした車両で、可動式の幌を装備した平ボデー車です。赤色灯はパトライトワイドビーム(NZシリーズ)です。
艤装は平和機械株式会社で、車体後部にはパワーゲートを装備しています。可動式幌の最後部には補助赤色灯としてパトライトの平面取付けLED補助警告灯LAR型を装備しています。
画像のものは守山消防署に配備されている輸送車で、荷台には水難救助等で使用するボートを装備しています。このように多種多様な資機材を搭載することが可能です。
タダノのカーゴクレーン、「TM-ZR304(H)型」を装備しており、荷台のボートを水上に降ろす際等に活躍します。型式にある(H)型はフックイン仕様を指しています。
続いて新潟県上越市の江口道路ステーションに展示されている除雪車です。この除雪車は昭和44年に建設省北陸地方建設局にて開発された超大型ロータリ除雪車で、「史上最大規模の超大型除雪機械」として知られています。
車体前部にはロータリ除雪装置を装備しています。この除雪装置で集雪・投雪を直径1,500mmのブロアで行う。ブロアの前には大型のカッターが備わっています。上に伸びた筒のようなものは「シュート」と呼ばれているもので、これで集めた雪を遠くへ投雪します。
キャビンは三菱ふそうTシリーズのT900系のものを流用しています。サイドウインカーを設置する場所がなかったのか、キャビン横に設置されています。
ルーフ上にはヘッドライトやフォグランプ、作業灯や単円筒形黄色回転灯を装備しています。窓にはワイパーの他に旋回窓も装備しており、投雪時に巻き上げた雪が窓を覆わないようになっています。
車体後部には大きなマフラーが2本装備されています。この車両は走行用エンジンと除雪用エンジンを1基ずつ搭載しており、走行用エンジンはマフラー下に搭載されており、三菱ふそう12DC2型のV型12気筒エンジンという19,900ccのディーゼルエンジンで、三菱ふそうB9系の高速バスに搭載されていたものと同型です。除雪用エンジンは車体中央部の一段高くなった部分に搭載されており、三菱重工12DH2型というV型12気筒エンジンを搭載しており、27,500ccを誇ります。この2基の大型エンジンの出力から「800馬力」という愛称でも呼ばれています。
除雪車にしては奇妙な塗色をしていますが、これは上越市で行われた「平成2年度ゆきみらい」という除雪機械の展示会にモニュメントとして出展するのにあたり、上越教育大学の洞谷亜里佐先生によって考案されたデザインです。元々は展示パネルの写真にあるように、所謂道路公団カラーと呼ばれてる黄色のボディに白のラインが入っていたようで、新車配備当初は薄緑色に白いラインが入っていたようです。
キャビンに上がるには前輪の後ろにある梯子から車体に上り、そこからフェンダー部を伝い歩きキャビンに入るようです、現在キャビンには入る事ができないように金具で扉を固定されています。
除雪機は車内から操作する事が可能で、車体からは多数の油圧ケーブルが伸びています。
除雪機に取り付けられた銘板。「ロータリー除雪装置 型式HV150SA 製造番号150-7 製造日本車輌製造株式会社 販売日熊工業株式会社」と記載があります。製造番号が7なので、7台もこのモンスター級除雪車が製造されていたようです。
昭和50年代前半に退役し民間の業者に払い下げられたこの除雪車を、日本建設機械化協会が買い取り、平成11年にこの場所で展示されることが決まったようです。
動画でも紹介しています。
こちらは地元で行われている国道バイパスの大規模工事で活躍していたトレーラーダンプです。。1999年に規制緩和されて画像のような牽引式ダンプトレーラーも認可されるようになりました。
トレーラー式ダンプカーでは最大28t程度の土砂を輸送することが可能となっており、今回のバイパス工事では5台のトレーラーダンプが土砂をピストン輸送してました。
画像のトレーラーダンプは和歌山県紀の川市に本社を置く西建工業株式会社が所有する車両です。西建工業は和歌山の会社ですが、静岡県静岡市駿河区内にも営業所が置かれているようです。トレーラーヘッドは同じく和歌山県紀の川市に本社を置く、和物株式会社の車両です。
スカニアPシリーズをベースにしたトレーラーヘッドを使用しており、トレーラー側のテールランプは小糸製作所のトラック用オールLEDリアコンビネーションランプ流鏑馬を使用しています。
同じくスカニアPシリーズがベースのトラクタヘッドですが、こちらはフロントグリルガードやグリルが黒色となっており、先ほどの車両よりも厳つい印象を持ちます。
こちらもトレーラー側のテールランプは小糸製作所の流鏑馬を使用しています。先程の車両と異なり、トレーラーヘッドのマフラーは煙突マフラーではありません。
こちらはUDトラックス2代目クオンをベースにしたトレーラーヘッドです。純正品と思わしきフロントバイザーが取り付けられています。
他のダンプカーと異なる形状のトレーラーダンプとなっています。このダンプトレーラーはTrout River Industries社というカナダにあるメーカーのトレーラーのようです。
同じく2代目UDクオンをベースにしたトレーラーヘッドのトレーラーダンプカーです。先程の車両は西建工業の車両ですが、こちらは和歌山物流の車両です。
こちらはいすゞ2代目ギガのトレーラーヘッドを使用したトレーラーダンプ。トレーラーヘッドとトレーラー全部で車軸が6軸あります。
今回の工事で使用したトレーラーダンプでは唯一のいすゞベース車及び3軸車ヘッドのトレーラーヘッドでした。
そして最後に5月3日から5日の間、愛知県豊田市の猿投温泉で行われた「SANAGE祭」にいた移動販売車です。この車両は岡崎市に本店を構える
暴れん坊チキンさんの日野初代中期型デュトロをベースにしたキッチンカー(移動販売車)です。元は北九州市消防局八幡西消防署折尾分署で使用されていた水難救助車で、当時のコールサインは「北消712」だったようです。北九州市では同型の水難救助車が横転事故を起こしましたが、この車両ではありません。
赤色回転灯のユニットは外されていますが、パネルは残されていました。この赤色のパネルは赤色灯には該当しないのと、このパネルを外す事で雨漏りなどの原因になることから残されています。
屋根中央部にはモーターサイレンとドライバユニットが残されていました。これは元々の水難救助車から装備されているもののようです。
ドア部には唐揚移動販売車両と白文字で書かれており、下の部分には「康2」と消防車のような表記があります。これは本店所在地の岡崎市康生通東と移動販売2号車を指しているようです。
車体後部にはホースカーを装備したままとなっています。側面右側の後部座席扉はスライドドアとなっています。本来は大阪サイレンのLED警光灯赤色補助赤色灯(LFシリーズ)を装備していましたが、緊急車両ではないので青色のものに変更されています。
三連梯子は外されていますが架台は残っており、現在も稼働させる事が可能となっています。先ほどのホースカーも昇降装置が現在も稼働します。
車体サイドには現役時代から入っていた白いラインが残っています。このラインに合わせてからあげ専門店などの文字入れがされています。
モリタの消救車をベースとした水難救助車なので、車体後部にはポンプを搭載していました。移動販売車左側には吸管(ホース)等が残されており、消防車だった面影が残っています。車体右側は全て外されています。
フロントには712という表記の跡が残っていました。本来は消防章を装備していましたが、日野のエンブレムに変更されています。前面赤色灯は大阪サイレン製のLFシリーズだったようですが、外されています。
標識灯にも712という表記の跡が残っています。側面は本来、流線型回転式赤色灯を装備していましたが、後部のものと同じ青色の補助灯に変更されています。作業灯は当時のままとなっています。
左側側面のこちらの筒は旗刺しでしたが、車体右側の作業灯を移設してこちらも作業灯として使用しています。
作業灯や標識灯は現在も使用することが可能です。画像右下にあるのは以前使用していた唐揚げの容器です。この移動販売車を模した箱となっています。
箱にはナンバープレートや梯子、ホースカー等が再現されています。※この箱は現在は使用されていない物です。
今回は以上です。
【参考文献】
(株)カマド発行 キュリアス Vol.12(2017年1月5日発行)
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