先週、相模原のJAXA宇宙科学研究所に行ってきました。
このところJAXA巡りをやっていましたが、ここはまだ来てなかったと思い出し行くことにしました。実は地元だったりします。
見学施設は「宇宙科学探査交流棟」という名前の通り、探査衛星関連に特化した見学施設になっています。
各地にあるJAXAの見学施設同士で内容がダブらないのは良いですね。
この研究施設で人工衛星に搭載する機器の研究開発を行っています。
(年1回の一般公開でそちらを見学できるのですが、今年はコロナの影響で中止です)
他のJAXA施設同様、完全予約の見学1時間総入れ替え制です。
見学棟のすぐ横に、ロケットが置いてあります。
1つは模型で、つくばの燃料を入れれば飛ばせる実機とは違います。
もう1つは何も表記が無く配線が引き回されてるので、もしかしたら実機かもしれません。(解説員がいないので詳細は不明)
【M-Vロケット】
全長30.7m、直径2.5m、重さ139トン、打上能力1,800kgの中型ロケットです。
探査機・天文衛星をこのロケットで打ち上げたそうで、小惑星探査機「はやぶさ」もこのロケットで打ち上げました。現在は新型に移行し、この型のロケットは使われていません。
限られた資源と予算の中で最適化した大きさと形です。
人工衛星と探査機では速度が違います。
人工衛星は地球周回速度、探査機は地球の脱出速度まで上げないといけません。
【M-3Ⅱロケット】
M-Vロケットの隣には、M-3Ⅱロケット模型が展示されています。
惑星探査機打ち上げ用のロケットで、先ほどのM-Vロケットの前の型です。
全長27.8m、直径1.4m、重さ62トン
見学棟の中に入ります。
入口に芸能人の色紙が飾ってありました。
人工衛星の説明ボード
ロケットに搭載された機器(実物)
ロケットの歴史
これまでに打ち上げた探査機の模型が展示されていました。
【金星探査衛星「あかつき」】
2010年5月に打ち上げられました。
目的は金星の探査で主に金星の気象観測をします。世界初の惑星気象衛星です。
金星は地球より内側を公転する地球型惑星で、地球と同じように地表があります。
しかし硫酸の厚い雲に覆われ、外から表面を見ることは出来ません。
地表面は460℃、気圧は90気圧もあります。
また時速400kmもの猛烈な風が吹いています。
かつてソ連は1960年~1987年の間、金星探査に力を入れていました。
計8回も金星表面に着陸し、金星表面の写真や岩石の成分分析を行いました。
ベネーラ13号は金星表面のカラー写真を送ってきました。
しかし、あまりに過酷な環境の中、数時間で通信は途絶えてしまいました。
ちなみによく言われている「金星は硫酸の雨が降る」という事ですが、
金星地表面の温度が高く、硫酸は気体になり雨は降らないようです。
金星の自転速度(地球で言う1日)は243日もあり、ゆっくりまわっています。
金星は地球より直径0.95倍、重さは0.8倍と若干小さいです。
という事は、重力も地球より若干小さいはずです。
にもかかわらず、90気圧もの気圧があるのは何故なのか、自転が遅いのに時速400kmもの突風(スーパーローテーションと呼ぶ)が吹いているのは何故か、その謎を解明するために探査衛星を送り込みました。
打ち上げから5年後に金星の周回軌道に乗りました。
去年の11月にこれまでの研究成果の発表がありました。
金星にある硫酸は太陽光を反射する物資にも関わらず熱を吸収し続けている事が観測結果から分かり、これは未知の物質が関与していると考えられ、吸収された太陽光の60%は、この未知の物質によるものと考えられています。
また今年4月「あかつき」の観測データを分析した結果、
スーパーローテーション(超高速風)が吹くメカニズムは”熱潮汐波(ねつちょうせきは)”が原因である事が分かりました。
「あかつき」は現在も観測データを送り続けています。
【水星探査計画ベピコロンボ】
ベピコロンボは、日本とヨーロッパが共同で計画実行中の水星探査ミッションです。
日本の「水星磁気圏探査機みお」と、ヨーロッパの水星表面探査機の2機を同時打ち上げしました。
2018年10月に打ち上げ、半年前に1回目の地球を使ってのスイングバイをしました。
今後、更に8回のスイングバイを行い、2025年12月に水星周回軌道に投入される予定です。
研究が進められている「火星飛行機」の模型
火星探査ミッションに向けた研究です。
地表から高度1000m付近を飛び、撮影や残留磁場観測をする計画です。
火星の薄い大気でも飛べるよう、大きな羽と翼を持ち、太陽電池にて電力を賄います。
その他、探査機・衛星いろいろ
ロケットエンジンの実験で使用した実物も展示されていました。
【メイン展示】
また、この見学棟のメインとなるものに、小惑星探査機「はやぶさ」が小惑星イトカワから持ち帰る時に使用したカプセルとパラシュートの本物が展示されています。
これだけは撮影禁止でしたので写真はありませんが、
本物を見たいという方は、宇宙科学研究所まで足を運んでみてはいかがでしょうか?