![金融政策正常化という違和感…その4 金融政策正常化という違和感…その4](https://cdn.snsimg.carview.co.jp/minkara/blog/000/046/699/583/46699583/p1m.jpg?ct=77982edd6ab9)
さて、昨今の経済報道で「金融政策正常化」というフレーズが使われる事に違和感があると書きました。
黒田日銀総裁が実施してきた「異次元の量的緩和」政策が「異次元」であり、過去に例を見ない金融政策だったのは確かでしょう。
これを「異常」と言うのなら、10年間に渡ってこの「異常」な金融政策を続けなければならなかった日本の経済状況が異常だったのであり、そうなってしまった原因である経済・財政政策やそれ以前の金融政策の異常性を問題にすべきです。
インフレ目標を設定し、実際のインフレ率や雇用情勢等の指標を見ながら金融政策を緩和的にしたり引締め的にしたりするというのは、日銀だけでなくFRBやECBその他の世界の中央銀行も当たり前に実施している政策です。
日本が長期に渡ってデフレが続いてきたから緩和的な政策が長期化してしまったのであり、そうせざるを得なかった原因は黒田総裁ではなく別のところにあります。黒田総裁だって別に「金融緩和原理主義者」なわけではないでしょう。
批判されるべきなのは
黒田総裁ではありません。
それなのに昨今の黒田総裁に対する批判的な論調は一体何なんでしょうか?
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リーマン・ショックにより世界経済が急失速した際に世界各国が大幅な金融緩和政策を取る中、日銀だけがその動きから出遅れました。
その結果が¥80/$を下回るという超絶円高と民主党政権の経済無策による日本経済の低迷でした。世界各国が積極的緩和政策を取っているところで日本だけが無策だったのでそういう結果になってしまいました。
このような政策こそが「異常」です。
その時の日銀総裁が白川方明 前総裁です。前回話題にした東洋経済の特集で、この人が黒田総裁の金融政策を論評しているようですが噴飯物です。
そしてその後世界的に低インフレ経済が続き、世界各国の金融政策が緩和的な状態が続いていた中でコロナ禍に見舞われました。
欧米各国はここでさらに財政政策で大盤振る舞いをしました。そこに発生したのがロシアによるウクライナ侵攻です。
緩和的な金融政策と大盤振る舞いの財政政策という状況でコロナ禍によるロックダウンやウクライナ紛争等の原因でエネルギー資源や食料品、半導体等の供給不足が発生した結果、世界各国はインフレに見舞われました。
インフレ率が8〜10%超という状況です。これでは金融政策は引き締めに向かわなければなりません。
慢性的に需要不足の日本では、異次元の金融緩和政策を実施しているにもかかわらず「41年ぶりの物価上昇」と言いながらインフレ率はまだ4%です。
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先日、恐ろしいニュースが流れました。
財政と金融、異常な状態長く続いてきた=諮問会議で有識者 | ロイター
https://jp.reuters.com/article/japan-economy-idJPKBN2TY0HW
これ、政府が16日に開いた経済財政諮問会議での「有識者」の発言です。後継日銀総裁が黒田日銀の政策を「修正」という名の「改悪」の方向へと仕向けさせるための布石としか思えません。
もちろんこのような雑音に対して黒田さんがブレることはありません。
黒田日銀総裁、政策変更なしと示唆-41年ぶり高インフレ後も - Bloomberg
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-01-20/ROS8KMDWLU6A01
黒田さんが常々お話されてる日本の今後の物価見通しに関して、IMFからも同様の見解が伝えられていますし、私のような素人目にも(素人だからこそ?)今年半ばからは物価の下押し圧力が強まるのは明らかなように見えます。
日本のインフレ鈍化のリスク高い-ゴピナートIMF筆頭副専務理事 - Bloomberg
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-01-18/ROO7W8DWLU6901
インフレ目標が2%に設定され、直近のインフレ率がその倍の4%に達してるとはいえ、まだ金融政策を引き締めに転じる状況にないというのが常識的な判断です。にもかかわらず各方面から黒田さんの10年間の功績を称えるではなく、現在の金融政策をネガティブに報じる話が伝えられてきます。
このような「空気」を醸成した上で岸田総理が国会に提示する日銀の次期執行部人事案がどうなってしまうのか?現在まで流れている噂を聞く限り絶望感しかありません。
そして次期日銀執行部がホントに「金融政策の正常化」をしてしまったら何が起こるのか?
金融政策のレジーム転換の影響は最初に株や為替等の資産市場に現れ、その後実体経済に時間をかけて影響を及ぼしていきます。
株価の下落と円高がまず起こり、その後雇用や景気が悪化していく流れになるでしょう。
このような近未来を誰が望んでいるのでしょうか?そして「金融政策の正常化」などと口にしてる人々は、「有識者」と呼ばれる方も含めて、過去数十年の日本経済の低迷から何を学んだのでしょうか?
本来なら世界各国がインフレに悩まされている中で日本が独り勝ちできる絶好のチャンスです。そのことは既に昨夏このブログでも書きました。
「苦悩する5大国〜「天佑だ!」#井上馨 #バイデン #インフレ #岸田政権」
https://minkara.carview.co.jp/userid/3311343/blog/46301450/
今、そのチャンスをミスミス取り逃がそうとしています。
Posted at 2023/01/24 22:28:34 | |
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