ども,高丘です。
このクルマのお話をそろそろしておこうかなあと。
SX4です。
後継車は皆様ご存知Sクロス。ただし日本では生産しないことが既にアナウンスされています。
とはいえ,SX4は不運なクルマでした。
WRCのネタは特に有名です。ただしこのクルマの不運はもっと別のところにあったはずだと思っています。今日はそんな話。
さて,現在の国産車メーカーですがこの中で一番無個性なメーカーはどこでしょうか?"無個性"というワードはまさにこのSX4が持っていた一番の武器であり弱点ともなった部分です。
20年前なら全員が全員トヨタと口を揃えたでしょう。今でこそFRだからという極々単純な理由だけで地位を築いているAE86は当時,無個性だったからこそ草レースや峠の環境で使われたクルマです。
AE86,それは本来ならば個性はありません。当時なら別段FRなんて珍しくはありません。剛性がなく結果メカニカルグリップもない。エンジンも決して迫力があるものじゃない。じゃあなぜ使われたか?無個性な故に大量に作られ大量にあふれていたからです。さすれば車両価格は安くなります。サイズ的にも使いやすい。だから使われた…。イ二Dとかの箔が付いたのは意外に最近の話です。正直,AE86に速さで勝ちたいならZC32Sライトチューンくらいで事足ります。
じゃあ当時個性のあったメーカーはどこか?間違い無く日産です。しかしこちらは公式で間違いだったことを認めました。スバルとホンダはもはや個性どうこうではなく既にそうしなければならない存在でした。マツダはバブルのツケを払わされることになり,三菱はこの時点で裏がものすごく黒いことになっています。結局一番無難だったメーカーはトヨタだったわけです。
しかしこの簡単さ,シンプルさ=自称大衆向けの方針を結局トヨタは投げ捨てることになります。それがプリウスの爆誕です。シンプルさや簡単さはダイハツが受け継ぎます。いや受け継がざるを得ませんでした。実はもう一つ,外見ならば個性的なメーカーが1社あり,そこを安さで撃墜しなければならなかったからです。
その相手がスズキです。
アルトの低価格路線でのブランド力は高い,しかもワゴソRもいる。こちらがおおっぴらに売れすぎてしまった。ダイハツは勝たないといけません。既にスズキはこの時点で低価格の王者でした。目には目を歯には歯をでダイハツはコストダウンをし始めます。両者の闘いは疲弊に疲弊を生み続けます。
これに見限りをつけたのもスズキでした。ついでにホンダ・三菱も気づき始めます。
この頃には既にある程度のシンプルさが逆にいいアクセントになるくらいの状態にはなっていました。トヨタはハイブリッドで,日産はゴーン様の言うとおりに。周りは前衛的な美術品か量子力学ような世界ですから,それに向かないニーズも存在します。そして何よりもう軽自動車が売れません。しかし排気量はでかくないほうがいい。そもそも軽ばかりではどうせダイハツに邪魔をされるだけ。そこで作られたクルマがホンダのフィットでした。三菱はコルト。こちらは国内市場で大当たりしました。スズキはエリオとスイフト(HT)を出します。
この一派が狙うものはシンプルさにより程よい質感,程よい操縦性という比較的クルマの本位,昔のトヨタに近いところを狙うものでした。こういうニーズは米欧では今でも健全に生きています。スズキはここに狙いをつけました。しかしスズキはこういう車を作る今にも続く呪いとも言える理由がありました。
シンプルなクルマしか作れないこと。
スズキの販売ルートは極めてローカル。ディーラーの規模はどれもこれも小さいもの。町の整備工場で売るのは当たり前。しかしトヨタや日産のように奇抜な車を作ると町の整備工場で整備できなくなってしまいます。スズキがこの呪いを断ち切ることは自殺を意味します。よってそもそも先進的なクルマを制作する体力も地盤もないということになります。インドの話も忘れてはなりません。
この逆転の有効利用は国外で功を奏します。結果,さらなる拡大路線としてZC系スイフトが誕生し,その直後にSX4が誕生しました。彼らはまるで自動車業界のピチカート・ファイヴのような存在になります。外国で売れ,外国に育てられることになります。
彼らが持っていた武器はとにかく普通なことに一生懸命だったこと。一定基準の走る・曲がる・止まるを持ち,程よい内装デザインを持ち,外装もあきの来ないデザインを狙う。国内の外野に比べると,恐ろしいほどにシンプルで使いやすいものでした。
しかしその結果,SX4は国内で非常に見劣りするクルマにもなってしまいました。フィットとコルトのブランド力に負け,トヨタや日産には奇抜さで負け,そもそもの軽のイメージも未だ続くダイハツ対スズキのゼロサムゲームに存在感が薄れてしまいました。しかも兄弟であるスイフトにも国内市場で邪魔をされます。SX4のサイズが中途半端という扱いになり,なおかつ例のWRCのおかげで一気に勢いをなくします。結局,米国撤退もあり今回日本では後継のSクロスが作られないという決定がくだされました。WRCはどちらかというとただのトドメ。SX4衰退の本当の原因,それはとにかくスズキの呪いにかかりすぎてしまったから。真面目でいい子ほど地味に終わるという展開に終始してしまったのです。
さて,次はSクロスです。むしろSX4からしてみれば,欧州のみでの生産はむしろ運命だった事象です。サイズ面から見てSX4での反省はありとあらゆるところに見え隠れはしていますが……。ハイブリットとスカイアクティブ,Nシリーズに復活したシンメトリカルAWD。この戦国時代にスズキは果たして戦えるのでしょうか?そして生還できるのでしょうか?結果は来年の今頃には間違い無く出ているはずです。
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2013/01/17 22:01:19