「砂の器」を見て差別について考える

今回の新型コロナの一連では各都道府県や自治体で「出ないで、来ないで」と移動を自粛したり、個人の店などでも「県外の人お断り」などということが当たり前のようにおこなわれました。

「感染を防ぐためなんだから当然だ」というのが大方の意見だと思いますが、その考えがエスカレートして県外ナンバー車に対しての嫌がらせや、あくまで「不要不急の外出自粛」と言っているのに外出することそのものが悪であるかのようなほんとピリピリした空気がいいかげん嫌になってきます。

そんな中、前から見たいと思ってなかなか見る機会がなかった1974年の映画「砂の器」をアマゾンプライムで見ました。

これは松本清張氏の原作で、八つ墓村の野村芳太郎監督の作品です。
事件そのものは単純な殺人事件なのですが、とても恩を受けた人をなぜ殺さなければならなかったのか…そこに「病気(感染症)に対する差別」があり、私は今回の新型コロナを重ねずには見られませんでした。

この映画の病気はハンセン病ですが、ハンセン病はとても感染力が弱く「史上もっとも感染力の弱い病気」とさえ言われているそうです。
しかしそんな病気でも当時は、いや今でも途上国などでは不当な差別が行われているとのこと。日本でも効果的な治療法が確立するまではこの映画で描かれたような差別が当たり前に行われていたのでしょう。

結局、差別っていうのは「正体がよくわからないものは避けたい」という人間の、というより動物の本能なのではないかと思います。命の危険があるかもしれないものには近づきたくないという一種の生存本能でしょうね。

だから今回の新型コロナウイルスも「まだ正体が解明されていない、治療法や予防法も確立されていない」わけですし、誰が感染しているかわからないわけですからとにかく近づきたくない、接触は避けたいという心理が働くのは当然で、それが知らず知らずに差別になったとしてもある程度は仕方ないのかという気もします。

私の生まれる前にもこのハンセン病以外にも、赤痢や結核などまだ不衛生だった時代の感染症に対しても同様の差別はあったのでしょうし。
「差別は良くない、絶対ダメ！」というのはわかるけど、現実はそんなキレイゴトで片付けられるほど単純ではないと考えさせられるものがあります。

砂の器、見てよかったです。