ども,高丘です。
昨日の続きです。
「ホントどんだけ今の自動車ヤバイんだよwww」と言われそうです。
そもそも当日記で散々そんなこと書いてます。
ただここだけは整備士も一般人も感じることは同じでして,我々だって面倒くさいです。それ覚えるだけでも,機材揃えるだけでも,そもそもそのためのお客さんを集めるのも(コラァとてつもなく大変です。
しかも最後まで残っていた比較的古いエンジンも代替が進んでいます。
スバルではEJ,三菱では3G8,ホンダではE07とかでしょうかね。スズキだとK6A は風前の灯だし,現在考えうるスズキエンジンで最も信頼性の高い心強きM型ですら淘汰されかけています。
となるといきなり難しい話題ばかりが出てくるんです。スズキの場合は前お話したとおり日産では少々年月の経ったシステムが流れてくる傾向がありますが,それでも十分手に汗握るネタばかりですwwwあえてお話はしませんし,一部できないんですが(←申し訳ない程度の社外秘)。もちろんスイスポなどチューニングパーツを開発する面で味方になることもあれば超大型巨人級の敵とも成り得ます。振り回されてるんです。どこも。
簡単に申し上げれば,こんな日記を読んでもらっても誰も恨まないで欲しいということです。そんなことばかりなんですクルマって。例えば新車へ組み付けられるショックの単価はたしかにタバコ1~2箱分以下,だけど整備しようと部品取るとウン千~ウン万円とかね(←需要供給と輸送コストの差が段違い)。
前置きが長くなりました。
最近,多いんですが
『セルフで何か言われて何か交換されちゃったんだけど……』というご相談を頂きます。大体の場合,LLC(しかもご丁寧にラジエタキャップ新品)とかブレーキフルードとか(車検時ほぼ全て交換するのに…)です。その中でも一番戦慄が漂う項目があります。
それがATF・CVTFです。特にCVTF。
いや~,ヒヤヒヤしますよ。CVTなのにATF入れられちゃったというケースも考えられますからねえ。ATFも決して油断はできませんし。
ではまずATFのほうから。
こちらは交換方法が既に定着しておりますね。実際にはオイルの種類は八百万神くらいあるんですが,基本的に統一されています(もちろん理想は指定された純正グレードですがね)。CVTFはやはり手を出しづらいのか,ATFを交換するセルフが多くなっているようです。
しかしATFも怖いものです。まずは交換する距離。一般的なラインは5万キロまでに1回でも交換したことがあるかです。ない場合はまずしてはなりません。壊れるまでそのままです。まあそもそもぶっ壊れないのが普通なんですがね。実際,ゲージが存在しないATなんて山ほどありますし……。
その理由はATの構造を理解するのが一番手っ取り早いです。ATというのは単純にいうと…

・遊星ギヤ(まあ歯車と思ってくださいな)
・おびただしい量のクラッチとワンウェイクラッチ,ブレーキ(フォワードクラッチ・オーバーランクラッチ・ローリバースブレーキ・ハイクラッチ・バッククラッチ・ブレーキバンド・ローワンウェイクラッチ・フォワードワンウェイクラッチなど)
・コントロールバルブ
・パーキングギヤ
・トルコン
・オイルポンプなどなど…。
全く単純じゃない?いや,これ4速です。一番単純です。
しかしこのATF交換で一番厄介事を生む子がいます。それが…

このコントロールバルブ(のASSYユニット)です。
これはATの神経に当たるパーツです。なんか迷路状の物体がありますが,この迷路には油圧が掛けられ,その先にあるコントロールバルブが動くことに各クラッチが制御され変速が行われます。
※↑2013/7/7:書き方が間違っていたため修正しました。
このコントロールバルブは超絶的な精度が必要です。そもそもバルブにはシールなんていうモノがないんですが,そんなものなくてもバルブの隙間が狭すぎて油圧保てちゃうくらいの精度があります。その隙間わずか10ミクロン。ダニの糞より小さいといわれるくらいの隙間です。そんな隙間ですからわずかにゴミが入っただけで壊れてしまいます。もちろんそれを防ぐためにフィルターなどは存在します。
しかし,使うオイルはATFだけ。ギヤ潤滑もクラッチも浸っているATFをこんな超絶空間でも使用します。クラッチは湿式多板=バイクのクラッチの高性能版程度なのでもちろんダストは出るし,ギヤ使うので金属粉も出ます。
もしも5万キロまで無交換だった場合にATFを交換するとどうなるのか?
簡単に言うと
この溜まったゴミたちが盛大に民族大移動してしまいます。すると…
・フィルターが詰まって油圧が行き届かなくなる。
・バルブと離れていたゴミがバルブに急接近して10ミクロン空間を占領してバルブがスティックして固着。
・つまりどっちにしろコントロールバルブが死ぬ。
・それに起因した各部故障も発生する。
という事態になります。こうなったらどうするのか?AT交換です。ウン十万円飛びます。
そしてもうひとつ,CVTほどではないにしろ量を気にします。あまりに入れすぎてしまった場合は撹拌抵抗が高すぎてクラッチをダメにしてしまうケースがありえるんですね。もちろんこれもAT交換とかという事故となりえます。
なのでむしろ交換する気無いんだったら交換しないほうがまず間違いない手という考え方もあります。変速ショックや燃費悪化より故障のほうが痛手と考える整備士さんも多いです。しかしATFを入れる機会は残念ながらあります(特にドラシャブーツ交換)。なので予防という観点で一概に交換しないのも正しくないとも言えます。ここは整備士さんの経験と個性に委ねられます……。高丘さんも正解は知りません。どちらにしろ言えることは……
・無交換
・多走行
の
2つは気をつけないと死ぬよということです。
現在のクルマに安易な交換は存在しません。お気をつけの程を…。
しかし!やはりATFもまだ序の口です。歴史・経験の長さはこれらの事故を回避しカバーするのには十分です。それがない上に神経質なオイルが存在します。
CVTF,これには何人足りとも決して手を触れるべからず……(もちろん出来る限り整備士も)。
明日オイルシリーズ最終回。身近なものは一番衝撃的なものでして…。