先日,
日光でプロ(蘇武喜和さん)に乗って頂き,トータル4周分のタイムを計測して頂いたのですが(途中クーリングを1周挟んで計5周),その中で1周毎に確実にタイムを縮めていらっしゃいました.
この時の私には全く手の届かないタイムだったので「さすがプロ!」と驚嘆しつつ,「一体どうやって縮めたんだろう?」と気になり,走行終了後に公式リザルトを確認したところ,どうやらS1の中から見つけ出したようでした(9.875→9.360と0.5秒短縮).
何を,どうやったら,たったの4周で0.5秒も縮め代を見つけ出せるのか? 非常に興味があったので,走行終了後にプロから頂いたコメントをヒントにしつつ,車載とロガーデータを駆使して読み解いてみようと思います.
まずは,計4回のタイム計測の中の速かった後半2つを比較してみます(S1で両者の差は0.13秒).
並べて比較してみると,アチコチ操作タイミングが微妙に違う事が分かりますが,一番の大きな違いは6コーナーの出口の走らせ方でしょうか.
計測3(左)ではセオリー通り,7コーナーのクリップ目がけて走らせているのですが,計測4(右)では7コーナーのクリップは捨ててでも(外に膨らんででも)旋回速度を上げに行っている様子が窺えます.
これがタイム短縮に繋がっているのか?とロガーデータを見てみると(↓),
ボトムスピードを3km/h上げて,0.15秒のタイムを縮めていました.つまりは私のEF8の場合は,計測4の走らせ方(ボトムスピード重視)の方が正解という事のようですね.
ここでプロから頂いたコメントを思い出してみます.
蘇武さん :6コーナーの進入で,フロントの荷重が大きくなっていく過程で,リアが動かない.
蘇武さん :その結果,アンダーステアが出て,フロントを引き摺っちゃう感じになってる.
蘇武さん :本当はクリップを舐めて距離を短くしたいのだけれど.
蘇武さん :6コーナーはクリップの辺りが路面はフラットで,ちょっと外側に行くとバンクがついている.
蘇武さん :そのクリップを外している方が意外とコーナリングスピードが速い.こっちの方がタイムが出そう.
なるほど.計測3で最短距離を試したが,フロントに荷重を掛けられず,リアも動かずイメージ通りに曲がらないから,計測4では敢えてクリップを外した走らせ方をしたという事ですね.
ふむふむ・・・と思いつつ,「バンクを使った方が速い」というのは一体どうやって分かったんだ? いきなり試したのか??と思い,車載を巻き戻してみたところ,
あっ! ちゃんと計測2で試して確認してる!! 僅か3周のトライの中でどっちが速いか試した上での選択だったのですね(さすがはプロ・・・).
ただ,そうすると,こっちのコメント(↓)も気になるなぁ~?と思い,
蘇武さん :6コーナーのブレーキングであんまり行けない.
蘇武さん :ちょっと手前からピッチングを気にしながら優しくブレーキを踏む必要がある.
蘇武さん :フロントに荷重を乗っけ過ぎないようにする感じ.
蘇武さん :ただ,そうするとオーバースピードになり易いのでそれも抑える必要があり,ここが勿体ない.
スピードを殺しつつ,フロントに荷重を乗っけ過ぎないようにどういう操作をしたんだ?と再び車載を見てみると,
あっ! 計測4(右)の方が舵角の量が多い!
そうか,操舵抵抗で速度を殺しつつフロント荷重を作り,ブレーキで細かく調整しているのか・・・.車載を見た時は,計測4の方がスキール音が大きかったので,ロスも大きそうだなぁ~なんて思って見ていたのですが,音が出るのには出るなりの意味があった,という事なんですね.う~む,勉強になりました.
(・_・) …ン?
とすると,この手前の細かな操作の違いにも,全部意味があるってコトか!?
そう思って逆算を始めてみると,色々見えてきました.
最初は6コーナーの進入(青:計測3 赤:計測4).
計測3(青)に比べ,計測4(赤)は外側に膨らんでいるのが分かります.これは,この後6コーナーの出口で膨らむ(大回りする)ラインを取るつもりであるため,進入速度を抑える必要がなく,逆にこちらも5コーナーのクリップを捨ててボトムスピードを稼いでいるのだと思われます.実際,これで4~6コーナー間の旋回速度は全域2km/h上がっており,それで0.06秒タイムを縮めています.
5コーナーのクリップを捨てるなら,当然4コーナーの入り方も違うんだろうなぁ~と思い,更に巻き戻してみると,
3→4コーナーでステアリングを切り返すタイミングが全然違う!
計測3(左)では5コーナーのクリップを狙うため,4コーナーは若干回り込む必要があり,ワンテンポ切返すのが遅いようなのですが(恐らくクルマの向きが変わるのを待ってる),計測4(右)ではそんな待ちがなく,素早く切り込んでおり,当然これだと進入角度が苦しくなると思うのですが,その先でラインが膨らんでも構わないので,こういう操作をしているという事なんでしょうね.
となると,計測4(右)で4コーナーの縁石を通過する際,瞬間的にステアリングをニュートラル位置に戻している(↓)のにも意味があるのだろうか・・・?
私程度の知識だとこの操作の意図を読み解けないのですが,縁石に当てる際の衝撃を弱めるためか? あるいは縁石通過後に着地した際のトラクションを稼ぐためか? ここにも何かプロのテクニックがありそうですね.
さて,6コーナー基点なのでこれで終わりかな?と思ったら,まだまだありました(汗).
4コーナーに対して浅い角度で進入するという事は,3コーナーに対しても同様に浅い角度で良いという事で,
計測4(赤)の方が計測3(青)よりもIN側にポジションで3コーナーに進入しています.そして,3コーナーに向かってこのポジションで良いという事は,早く2コーナーのクリップについて良い事になり,1~2コーナー間は計測4(赤)の方が小回りとなっています(↓).
そして,この小回りを実現しているのが,1コーナーの進入を"ちょっと抑えて入る"という一工夫(↓).
これで0.02秒稼ぎ出しているのですが,いやはや,ホント逆算・逆算で組み立てられてますね・・・.
しかし,まだまだ逆算は終わらず,単に1コーナーの進入を抑えただけではタイムを失ってしまうので,そもそもの1コーナーの進入速度を上げる工夫をされています.それが計測ラップに入る前のアタックライン(↓).
計測3(左)に比べて計測4(右)の方が車体がコース左側に寄っており,コース幅をいっぱいに使って11コーナーへアプローチしているのが分かります.これがこのコメントに繋がっているのでしょうね(↓).
蘇武さん :このクルマの場合だとVTEC落ちするじゃないですか? それも勿体ない.
蘇武さん :本来最短距離で走りたいところで,VTEC落ちを回避するために速度を稼がないといけない.
蘇武さん :最終コーナーとか,速度を落とさないように走った方がタイムが出る気がする.
蘇武さん :例えば,最終コーナーのアタックラインは目茶苦茶有効だと思う.
蘇武さん :12コーナーの縁石を降りた辺りで入っているVTECが,縁石の上で入るようになる.
蘇武さん :そうすると,ストレートが伸びると思う.
油温アラームが鳴った訳でもないのに,どうしてクーリングラップを挟んだのか不思議だったのですが,このアタックラインを使うためだったようですね.いやはや,6コーナーのライン取りを決めてから,ここまで逆算して組み立てるのか! それも僅か4周の間に・・・やっぱりプロは凄い!!
以上,プロから学ぶEF8の走らせ方でした.
「コース攻略は逆算して行え!」と言いますが,ここまで逆算・逆算で組み立てているとは思いもしませんでした.走行終了後の落ち着いた状態で,ロガーデータを見ながらじっくり時間を掛けて考えれば私でも何とか同じ答えに辿り着くかもしれませんが,走行中に,しかもたった3回のトライでこれらの情報を集めて,頭の中で組み立てて,最後の1周できっちり纏めるなんて,とても真似出来ません・・・.違いを感じ取るセンサ,良し悪しを見極める判断力,そしてそれを最終的に纏め上げる技術,プロの技量の高さをまざまざと感した今回の読み解きでした.
やっぱり機を逃さず,今回,蘇武さんに日光で乗って頂けて本当に良かったです.
重ね重ね有難う御座いました! <(_ _)>
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Posted at
2024/04/23 22:32:38