
引続きB型エンジンのお勉強.
コンロッドの違いに関して,「B16AとB16Bはブロックが違うため,長さが違う」という事を知りました.
「B16B」は,200cc排気量が大きい「B18C」のブロックをベースに1600ccの排気量を実現しているため,コンロッドが長くなっています.ストロークの数値上は「B16A」と同じ77.4mmなので,一見すると性能的には変わらないように思えるのですが,1800ccのブロックをベースに1600cc化するのと,元々1600ccなのとでは異なる部分があります.
それが「連桿比(れんかんひ)」です.「連桿比」というのは,コンロッドの長さとクランク半径の比の事で,式で言うと以下(↓)になります.
連桿比 = コンロッドの長さ(小端部中心〜大端部中心)/(ストローク / 2)
以下の図で示すと,連桿比(λ)= c /(2r / 2)= c / r といった感じです(↓).

(自動車を物理する:
ピストンの運動と、ピストンスピードより)
「B16A」「B16B」「B18C」それぞれの「連桿比」を求めてみると(↓),
B16A ・・・ 134.3 / (77.4 / 2) ≒ 3.47
B16B ・・・ 142.8 / (77.4 / 2) ≒ 3.69
B18C ・・・ 137.9 / (87.2 / 2) ≒ 3.16
これだけ違うのですが,値だけ見ても大きい方が良いのか? 小さい方が良いのか? 分かりませんね.
「連桿比」に関して調べてみると,最初に出てくるのは「値が大きい方がピストンの側圧が減るので,フリクションが小さくなり,高回転時に有利」というお話.

(自動車を物理する:
ピストンの運動と、ピストンスピードより)
上の図の青い線が「連桿比」が大きい場合,赤い線が「連桿比」が小さい場合です.
コンロッドの長さが違うので,機構上ピストンピンの位置に掛かる力の向きが異なるのが分かります(↓).

(自動車を物理する:
ピストンの運動と、ピストンスピードより)
「連桿比」が大きい青い線の方が,角度が浅いので上方向に掛かる力は大きくなりますが,横方向に掛かる力(=側圧)は小さくなる事が分かります.掛かる力が小さくなれば,その分だけ抵抗も小さくなるので,確かに「連桿比」が大きい方がフリクションは少なそうです.
(。´・ω・) ン?
機構的に「連桿比」が大きい方がフリクションが少なくなるのであれば,回転数に関係なく全域でメリットになるんじゃないの? なんで「高回転は~」という但し書きが付くんだ??と気になったので,「連桿比」が大きい場合のデメリットを調べてみると,
「エンジンの高さが高くなる」
と出て来ました.クランクの位置を変えずにコンロッドの長さだけ増やせば,そりゃそうだよね~という話.実際問題,B16AよりB16Bの方がデッキが高いので(203.9mm⇔212.0mm),ノーマルのボンネットのままだとヘッドが当たると聞きます.

(私が使っている
FRPボンネットは,B18C搭載を見越してヘッドが干渉する部分が嵩上げされています↑)
でもそれは,車両の運動性能として見た場合の話(=重心が上がる)で,エンジンの性能的なデメリットが知りたいんだけどなぁ~とChatGPTに聞いてみると,
「低~中速トルクの面で不利」
と言われました.ほうほう,なんで不利なの?と重ねて聞いてみると,
「連桿比が小さいと,燃焼圧がより早いクランク角で有効トルクに変換され易いため」
と言って来ました.難しい事言うなぁ~.もうちょっと分かり易く説明してよ!とお願いしてみると,
「連桿比が小さいとピストンが早く下降する.小さなクランク角でもトルクが伝わる」
と言って来ました.どういう事? 絵に書いて説明して!とお願いしてみると(↓),
側圧のところで出てきた話の逆のイメージで,「連桿比」が小さい場合,ピストンピンに対するコンロッドの角度(上図の「α」)が大きいため,ピストンに少しでも力が加わると,クランクを回そうとする横向きの力が大きくなり,すぐにピストンが下がり始める(=レスポンスが良い).一方,「連桿比」が大きい場合,ピストンが上死点付近にいる時間(上図の「滞留時間」)が長いため,なかなかクランクを回そうとせず,ピストンが下がらない(=レスポンスが悪い).
高回転域は回転による慣性力が大きいため,レスポンスの良し悪しよりも,フリクションの大・小の方が差が出るようですが,低~中回転域ではそもそもの慣性力が弱いため,レスポンスの良し悪しがダイレクトにトルクに表れるそうです.なので,「連桿比」が小さい=「B16A」の方が低~中回転域では有利との事.
(´・∀・`) ヘェ~
「B16A」は低~中回転域,「B16B」は高回転域で有利というのは分かりましたが,ここで言う"高回転"って何rpmくらいの事を指すんだ?と気になったので,色々数値を提供してChatGPTにシミュレートしてもらったところ,
5000rpm以下 → B16Aがやや有利
6500rpm付近 → ほぼ同等
7000rpm以上 → B16Bが優勢
という結果を出してくれました.7000rpmオーバーの領域じゃないと「B16B」って有利じゃないんですね.高回転でひたすらブチ回す,富士スピードウェイみたいなコースを走るのであれば高回転型の「B16B」の良さが活きるんでしょうが,TC1000みたいなミニサーキット中心の使い方だと低~中回転型の「B16A」の方が良さそうですね.
カタログスペック的には「B16B」の方が優秀ですし,設計が新しいんだから「B16A」より「B16B」の方が良いんだろう~と思いたくなりましたが,そんな簡単な話じゃない・・・というのが分かるお話でした.
ちなみに,その「B16A」よりも更に「連桿比」が小さい「B18C」は,「B16A」よりも更に低~中速域で有利な上に,「B16A」よりも更に高い回転域で最高出力を叩き出すので,上も下も上回る,まさに最強のB型エンジンと言って良いようです.
最強のエンジンと言えば,ホンダには9000rpmまで回る超高回転型の「F20C」というエンジンがありますが,コレの「連桿比」はどんなもんなんだろう?とついでに調べてみると,
F20C ・・・ 153.0 / (84.0 / 2) ≒ 3.64
F22C ・・・ 149.7 / (90.7 / 2) ≒ 3.30
うわっ! 「B16B」の連桿比って,9000rpm回る「F20C」よりも大きいんですね.
という事は,「B16B」って8000rpmくらいじゃ全然美味しくないって事かー(もっと回せ!).
排気量差が200ccありますけど,連桿比だけで考えた場合,「B16B」⇔「B16A」の関係性は「F20C」⇔「F22C」の関係性(↓)に近いのかもなーと思いました.
以上,連桿比のお勉強でした.