![[試乗インプレッション]VW パサート・セダン TSI Comfortline BlueMotion [試乗インプレッション]VW パサート・セダン TSI Comfortline BlueMotion](https://cdn.snsimg.carview.co.jp/minkara/blog/000/023/647/130/23647130/p1m.jpg?ct=4b4903c21b8a)
新型パサート・セダンの「TSI Comfortline」を1泊2日でじっくりとテストする事が出来た。メーカーのカウントでは7世代目となる「パサート」だが、実際には大部分が6世代目をベースとするビッグマイナーチェンジ版。最近のVWは(ゴルフも同様)パワートレーンの刷新に熱心だから、それ以外の部分についてはキャリーオーバーで...と言うのが実情だろうか。何より、6世代目は2005年のデビューだから、歴代パサートのモデル寿命から言えば道半ば。まぁ実車を見ればフルモデルチェンジに相当するだけのイメージチェンジが施されたのも事実。余程のマニアでなければ、外観について先代モデルとの類似性を指摘するのは難しいだろう。内装がほとんど変わっていないのが残念ではある。
さて、未だ違和感が拭えないのはそのスタイリング。どことなく中国市場の好みに擦り寄った様な印象が拭えない。もう少しプレーンなスタイリングの方がパサートのイメージと思うが、このデザインで
ドイツ本国でも販売しているのだから仕方がない。(
北米版パサートの方が好みかもしれない)
慣れない(?)厚化粧の話題は置くとして、根本的には「ブレッド&バター」カーとでも呼びたくなる様な「ど真ん中ストレート」の実用セダンである。ボディサイズは全長4785mm全幅1820mm全高1490mmホイルベース2710mmと日本の道路では既にジャストサイズとは言えないサイズではあるが、最小回転半径が5.3mに留まる等、日常の取り回しでギリギリ嫌にならない限界のパッケージかな。今後これ以上大きくしないで欲しいと思うのだが....。最近内外のライバルがどんどん肥えているから、全幅1820mmも今となっては普通に見えてきたのも事実。偶然にも(?)スズキ・キザシの全幅も1820mm。ゴルフⅥでさえ全幅1790mmの時代だからねぇ。
やはり、新型パサートの話題はこのボディサイズにして一気にダウンサイジングを敢行した1.4LTSI(シングルチャージャー)エンジンと乾式7速DSGの搭載だろう。先代は「Passat Variant R36」を初めとして、V6エンジン搭載の3リッター超モデルが目立っていたが、新型は1.4LTSI(シングルチャージャー)エンジン一本に絞られた。新型にAWDモデルは設定されていない。「パサート」は降雪地で手頃な価格で購入可能なインポートAWDモデルという意味で絶大な存在感があった故に残念。
新型パサート・セダンの「TSI Comfortline」の車重は1430kg。基本的に同エンジンを搭載するゴルフ・ヴァリアントの「TSI Trendline」(私の前愛車)は1370kgでその差は60kg。パサートの巨体でも充分に満足の行く走りを披露する事は間違いないと思っていたが、パワー感の不足は一切感じなかった。むしろ、ボディサイズが大きく、VW車としてはソフトな味付けの足回りを与えられた新型「パサート」のスムーズかつ「ジワッ」と盛り上がってくるパワーチューニングは非常にマッチしていた。ゴルフⅥよりも一回り高級なクルマに乗っていると言う事をハッキリと体験させてくれる。
先代モデルでは気になったステアリングの軽さ・不自然なフィーリングや、足回りのバタつき感なども綺麗に影を潜めた。アウディとの血縁を色濃く感じさせる縦置きエンジンのレイアウトを採用した5世代目パサートのしっとりとした感覚が戻って来たようだった。
面白いもので、市街地ではソフト(甘口)に感じられたハンドリングも、高速道路や山道ではドイツ車らしいビシッとしたスタビリティを感じさせてくれるから不思議。特に、山道ではボディの大きさこそ感じるものの、ロールを嫌がらず、柔らかく沈みながらも狙ったコースをピッタリとトレースする実力の持ち主。無駄な修正舵を必要としないから疲労感も極めて少ない車。
個人的にはDSGのエンジンブレーキの弱さがどうしても気になってしまうが、パサートの様なキャラクターのクルマにエンジンブレーキを積極的に活用した走りを求めるのも不粋だろう。DSGを「S」レンジに入れ、気持ち早めにフットブレーキを踏めば全て事足りてしまうのだから。少なくとも、トヨタ製FFサルーンの様に終始だらしが無く、信頼の置けない走りとは異次元の性能。国産車蔑視ではなく、確固たる事実として認めざるを得ない。コストを引き下げ利益確保も大切だろうが、真っ当な性能を保持した自動車をトヨタは提供すべきと思うのだが。新型パサートはこの内容で324万円~で購入出来る。ハイブリッドシステムを除けば鉄くず同然の「SAI」は338万円~。
e燃費によれば、トヨタ「SAI」のユーザー実効燃費は14.98km/L。今回、私のテストでパサートが記録した燃費は15.1km/Lであった。(パサートはハイオクガソリンを使う事を考慮する必要がある)燃費の差以上に、走りの質が大きくかけ離れている事が問題である。「ハイブリッド」なら多少走りが不自然でイマイチでもユーザーは許してくれる。目を瞑って(気がつかず?)買ってくれるという甘え・驕りを感じている。日本国内では通用しても、海外市場では別の話。いつまでインチキ商法を続けるつもりなのか。
最後にパサートに採用された「BlueMotionテクノロジー」について。これまでのTSIエンジン+DSGミッションによるダウンサイジング+高効率なパワートレーンに加え、「ブレーキエネルギー回生システム」と「アイドリングストップ機能」を追加したもの。正直「ブレーキエネルギー回生システム」の作動は体感的には判らなかった。もちろんホメ言葉である。「アイドリングストップ機能」(VWはStart/Stopシステムと呼ぶ)はかなり積極的にエンジン停止を実施するプログラム。マツダの「i-Stop」が外気温やエアコンの設定など色々な条件に考慮し、ストップ時間が予想よりも短くなる場合があるのに対し、パサートは積極的にエンジン停止をするから、信号停止時などに室内温度上昇を若干ながら体感した。勿論、省エネ優先の考え方だろう。マツダの「i-Stop」はオーナーの主義主張によってエンジン停止条件や時間の調整が出来れば良いのに。パサートのエンジン停止は「フッ」と静かに停止するから良いが、再始動は少し振動が大きめ。このあたり車格を考えれば、もう一息熟成して欲しいところだ。ゴルフやポロにも拡大採用されるのが楽しみである。
新型パサートはその保守的なスタイリングに加えギラギラした装飾が好みを分けそうだが、無闇に高価なクルマでもなく、適価で高品質なクルマを欲している方にはお勧め出来る。当然の様に安全装備に抜かりは無く、驚くほどサイズがたっぷりし、最新式のむち打ち軽減ヘッドレストが備わるシートはそれだけでもパサートを買う理由になりえるものだった。別の機会にパサート・ヴァリアントも乗り比べてみたいと思う。
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試乗インプレッション | クルマ
Posted at
2011/08/29 00:13:53