![[試乗インプレッション]マツダ・デミオ XDツーリング(FF/6AT) [試乗インプレッション]マツダ・デミオ XDツーリング(FF/6AT)](https://cdn.snsimg.carview.co.jp/minkara/blog/000/036/864/103/36864103/p1m.jpg?ct=f8eb9be07b63)
先日、フレアクロスオーバーのタイヤ交換を実施した際、「デミオ」のXDツーリング(FF/6AT)をお借りして約100km程走らせて貰ったのでインプレッションを。既に短時間のテストは複数経験しているが、やはりある程度の距離を乗って初めて判ることも多い。
それにしても、現行「デミオ」に乗ると毎回感じるのは、欧州車をライバルに見ても全く見劣りしない骨太な存在感と凝縮感。一連の新世代マツダフェイスに若干の「飽き」を感じ始めているのは職業病に近いものが有るかもしれないが、このクラスの日本車がここまでやり切ったというのはやはり快挙と評価すべきだろう。奇しくも、長年このクラスのお手本と言われてきたフォルクスワーゲンが不正行為により自滅状態。欧米のマーケットではワーゲン車販売への影響は軽微と聞くが、実質被害が軽微であったこの国ではあっという間に半減したとか。これが日本市場の難しさなんだろうか。その受け皿として大半は「プリウス」や「アクア」へ流れるのかも知れないが、「マツダ」にも結構なビジネスチャンスがあろう。
個人的に、最近の「マツダ」大躍進には大きな期待と最大限の評価はしつつも、あまりにも直球ストレートばかりを投げ込んでくるモデル戦略にはチョイと疑問もある。欧州車と対等に渡り合える品質や美しいデザイン力は大いに魅力的だが、そればかりではチト退屈でもある。新世代モデルが出揃ってきたからこそ、そろそろ派生モデル(スポーツグレードとか)やボディバリエーション(クーペやキャンバストップとか)の追加を期待してしまうのだ。なかなか難しいとは思うが。
さて、本題のインプレッションだが、マツダが自慢する正しいドライビングポジションの効果は確かに大きい。スッと足を延ばした先にオルガン式のアクセルペダルがあり、チルト/テレスコで調整幅の大きなステアリングを握ると、とても5ナンバーサイズのコンパクトカーとは思えぬ景色が広がる。インテリアの質感も高く、上等で真っ当なクルマに乗っていることを実感させてくれる。一方で、後席やラゲッジスペースが割を食っている事は否めないが、本来Bセグメントカーの後席なんてオマケみたいなもので、荷物は後席をバタンと倒して積めば良いと思えるエンスー思考の方なら何ら問題はない。あれやこれやと詰め込んだクルマとは根本的な生い立ちが違う。ただ、そういう利便性の高いコンパクトカーもマツダに欲しい気がする。元来、「デミオ」はユーティリティ自慢のクルマだったのだから。(乗れて・積めて・よく走るのが初代~二代目「デミオ」の特徴だった。)
エンジンONで視界の前方に立ち上がってくる「アクティブ・ドライビング・ディスプレイ」も慣れてくると確かに視線移動が少なく、車速やナビゲーションのルート誘導など走行時に必要な情報を表示してくれるのは便利。必須とは思わないが、有って困るものではない。
色々と話題になった「マツダコネクト」だが、最新版はナビアプリが国内メーカー製となったお陰で、取り立てて大きな課題を感じなかった。(初期のナビ画面は確かにイマイチだった。)最近、各社がこぞって採用する「アラウンドビューモニター」が「マツダコネクト」に含まれない事が残念。現行「デミオ」は斜め後方の視界が「良い」とは言えないデザインだから喜ばれそうな気がする。
最近急速に普及・発展を遂げている自動ブレーキについて、「デミオ」は「スマート・シティ・ブレーキ・サポート(SCBS F)」と呼ぶ低速走行時(約4~30km/h)のみ作動する近赤外線レーザーレーダーのタイプを設定。しかし、兄弟車種の「CX-3」にはミリ波レーダーで検知する「スマート・ブレーキ・サポート(SBS)」と追従走行を可能とする「マツダ・レーダー・クルーズ・コントロール(MRCC)」の設定があるのは面白くない。
テストした「デミオ」XDツーリング(FF/6AT)は全長4060mm全幅1695mm全高1500mmでホイルベースは2570mm。車重は1130kgである。ガソリンエンジン(1.3L)のFF/6ATと比較すると+100kg程重くなる。エンジンは1.5Lの直4クリーンディーゼルターボで105ps/4000rpm 25.5kg-m/1500-2500rpmを発揮し、燃費(JC08モード値)は26.4km/L。タンク容量が44Lだから、理論上、満タンなら1161kmを走れる計算だ。(e燃費.comの実効値は20.34km/Lだから、実質は満タンで894km程度)更に、ガソリン(レギュラー)と軽油の価格差(約25円/L)も距離を走る人には有り難い。「デミオ」で延々と高速道路を走り、瀬戸大橋を渡って「讃岐うどん」でも食べに行きたいナァ。実は、以前
「ベリーサ」で本当に高松まで往復走ったことがある。この時、往復トータルの燃費は17.16km/Lと記録されており、クリーンディーゼルの「デミオ」なら余裕でこの記録を更新するだろうね。心配なのは自分の体力か。
アイドリング時は車内でも「カラカラ...」とディーゼルエンジン特有の鼓動が聞こえる。マツダもこれを何とか消そうと努力している様だが、私は折角のディーゼルエンジンなのだから「カラカラ」音を楽しみたい。無理に消してガソリンエンジンの様に振る舞う必要は無いと思うが、市場の要求は違うのだろう。特に気になる振動などはなく、言われなければディーゼルと気が付かない人も居るだろう。
発信時にアクセルを踏み込むと、ホンの一瞬だけターボラグを感じる。「アテンザ」に積む2.2Lのディーゼルエンジンではあまり気にならなかった事象。やはり、小排気量のディーゼルエンジンはセッティングが難しいのだろうなと感じる。まぁそれは僅かな問題で、それ以降は図太いトルクに押し出される様にグングン加速していくから、かえってそのギャップを感じてしまうのかも知れぬ。恐らく、6MT車の方が顕著に感じるのではないかと推察するが、実際はどうだろうか。
ガソリン車と比べて約100kg程重くなる事は、主に山道で鼻先の重さを感じた。一昔前のマツダ車に共通したカミソリの様なステアリング特性は影を潜めたが、それでもライバルに比べスポーティーな味付け。足回りは全般的にフラットであるが、決してガチガチに締め上げたタイプではない。タイヤサイズが185/60R16と少し変わったサイズを履くが、185/65R15を履く下位グレードと乗り比べてみたい。恐らく、もう少し乗り心地もマイルドになるのではないか。
高速道路では1.5Lとは思えぬ図太いトルクと、ガッシリとした直進安定性が頼もしい。違和感のあるCVTを採用するライバルとは違い、このクラスでは贅沢な6ATを搭載する事も大きな影響を与えている。これならば長距離を共にするのも悪くない。贅沢を言えば、リヤサスがトーションビームではなく、マルチリンクならば、もっと理想的でビシッと安定した走りになっていたと妄想している。このクルマにとって法定速度+α程度で巡行するのは容易いこと。100km/hでもエンジンは2000rpm程度しか回っておらず、実に平穏・快適であった。
約100kmのテスト走行を通した燃費(燃費計の数値)は19.7km/Lとまずまずの結果に。結構荒く踏み込んだり色々と試しながら走った結果であるから、本来はもっと伸びるはず。
そろそろ結論を。「デミオ」XDツーリング(FF/6AT)は194.4万円とこれまでの歴代「デミオ」のキャラクターを考えると決して安くはない。しかし、VWポロのベースモデル「TSI Comfortline」が228.4万円であることを考えれば充分安い。トヨタ「アクア」にも近い価格帯だ。何を重視するかで答えは変わるだろうが、私の中では迷いなく「デミオ」がベストバイ。やはり、走っていて楽しくないクルマには乗りたくない。残念ながら「ポロ」・「アクア」に最も欠けている部分。「デミオ」にも今後改良を期待したい部分が散見されるが、きっとマツダは丁寧にネガを潰してくるだろう。噂では年明けにも結構大きな改良があるとか。楽しみにしたい。
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試乗インプレッション | クルマ
Posted at
2015/11/25 08:17:22