![[試乗インプレッション]マツダ・ロードスター "S" 素のNDはNAの再来か? [試乗インプレッション]マツダ・ロードスター "S" 素のNDはNAの再来か?](https://cdn.snsimg.carview.co.jp/minkara/blog/000/039/371/307/39371307/p1m.jpg?ct=4ed1754197fc)
前回の記事でマツダ「ロードスターRF」をテストし、その流麗なスタイリングと軽快かつパワフルな走りにちょっとした感動を覚えた事を投稿した。それと同時に、ベーシックな1.5Lの「ロードスター」と2.0Lの「ロードスターRF」がどれ程・どの様に違うのか検証したいと思った。見た目・スペックの他に価格差が結構あるから、トータルでどちらが「買い」なのか、自分なりの結論を出したいなと。幸いなことに、「ロードスター」の最もベーシックな「S」を試す事が出来た。
これまでも何度か「ロードスター」のテストは経験しているが、20分程度の市街地走行が大半だったので、試乗インプレッションを書くに至らなかった。グレードも「S Special Package」か「RS」であり、私が希望していたベースグレードの「S」は未経験だった。「S」はシリーズで唯一車重が1000kgを下回る990kgを達成。ND型ロードスターの中で最もNA型(初代)ロードスターの走りを彷彿とさせるセッティングと言う前評判があり、気になっていたグレード。価格は249.4万円(税込)。ミッションは6MTのみという潔さ。トルクセンシング式スーパーLSDやリアスタビライザー等が省かれる事や、快適装備が一部削られるものの、最低限必要な装備は揃う。価格と快適性のバランスを考えると、渋い存在だと思う。ただ難点はマツダコネクトが省かれ、セグメント液晶オーディオディスプレイに仕様が固定されること。カーナビやバックカメラの設置が難しいだけに、コレはメーカーOPで選択出来るようにすべきだったのではないか。
直前に乗った「ロードスターRF」のトップグレード「RS」はメーカーOPも含め406万円と言う仕様であったのに対し、ベーシックな「ロードスター」の「S」は249万円。その差は157万円にも達する。諸費用・ランニングコストを無視すれば、価格差でデミオの1.3Lガソリンモデルが買える位に違う。(これがBMWやアウディであれば、エンジンやボディの仕様差で150万円程度の追加コストは当たり前なんだけどね。)
まぁそんな下世話な事は抜きにして、念願のベーシックモデル「S」に乗り込む。「加飾」と呼ばれるメッキモール・リングが省かれたりするから、「S」のインテリアは素っ気無い印象。「ロードスターRF」は華やかなフルカラー液晶を仕込んだメーターパネルだったが、「S」はモノクロでシンプルなメーター。なるほど、確かに色々と価格なりの差異化が施されているが、本質的な不足はない。いずれも屋根を開けて走り出してしまえば些細な違いでしかない。
「S」で走り出し直ぐに感じたことは、全体的に柔らかな乗り心地と、線は細いが息の長い加速。こう書いてしまうとスポーツカーとして不適格に思われるかもしれないが、確かにNA型(初代)ロードスターの再来と言う表現は理解出来る。但し、私の記憶にあるNA/NB/NC型のロードスターと比較して、最新のND型はボディ剛性(感)が極めて高い。多少の凸凹道を走ったところでボディはミシリとも言わないし、スカットルシェイクも無い。ボディがガッチリしているからこそ、脚は自由に動くことが出来、相対的に乗り心地が良くなる。懐古主義と言うよりも、最新の設計が施された恩恵と理解すべきだろう。何故なら、直前に乗った2.0Lの「ロードスターRF」はレカロシートやビルシュタインダンパー等が奢られるから、相応に固くハードな乗り心地を覚悟していたが、実際は不快な硬さや振動は無く、長距離を走る事にも躊躇は無かった。基本的に「S」も同じ方向性のセッティングだが、タイヤサイズが1インチ小さいことに加え、トンネルブレースバーやリヤスタビライザー等が省かれることで若干柔らかな乗り味となるのかもしれない。まぁこれは2台続けて乗り比べて判る程度の差ではある。
一方、エンジンの差は小さくない。2.0Lエンジンはパワフルで少し演出が入ったかのようにワイルドな吹け上りとサウンドが面白い。その反面6000~6500rpm付近で回転上昇に頭打ちを感じさせるから、ガンガン回し高回転側で遊ぶエンジンではない。北米市場がメインのパワーユニットと言ってしまえば簡単だが、1.5Lに比べてトルクがあるから市街地のストップ・ゴーはラク。高速道路を延々と流すのにも適するだろう。
1.5Lエンジンは2.0L比でゼロ発進時から明確にトルクが細く、繊細なクラッチワークを求められる。しかし、回転の上昇と共にパワーが絞り出されるような古典的な味わいがあるエンジン。2.0Lより500rpm程レットゾーンが高く、7500rpm付近までキッチリと使い切ることが出来た。軽量なボディのND型ロードスターを6MTでコキコキ操りつつ山道を走り込むならコッチ。マツダが日本市場には1.5Lがベストマッチと力説するのも納得と言うところか。
山道では自然なロールは許容しつつも、FRのスポーツカーらしい切れのあるコーナリングは「ロードスター」の真骨頂。「S」はトルクセンシング式スーパーLSDが省かれるが、軽量でエンジン出力も限られるからその必要性は感じなかった。
エンジンサウンドはやや事務的で「官能」と表現するには躊躇がある。しかし、聴いて不快感は無く、ボリュームも適正だから問題は無い。「ロードスターRF」の「RS」には「インダクションサウンドエンハンサー」が装着され、エンジンの吸気脈動を躍動的なサウンドに増幅し、アクセル操作にシンクロした爽快なサウンドをキャビンに響かせると言うから、その効果かもしれない。幸い「S」にも販売店OPで装着可能だ。(¥13,122/税込)
手動のソフトトップは1か所のロックを解除するだけで簡単に開けることが出来る。閉める時もアシストスプリングのお陰で片手でもラクラク。ソフトトップ開閉時に合わせてサイドウインドーを自動で下げてくれるから「ロードスター」のソフトトップは電動化する必要性を感じなかった。
歴代「ロードスター」は風の巻き込みが少なく、相対的にオープン走行を長時間楽しめるのは美点。ND型も当然ながら継承している。「ロードスターRF」の方が更に風の巻き込みは少ない印象だが、解放感は一歩後退。しかし、周囲の視線が気になる方は「ロードスターRF」だろう。
そろそろ結論を。
「ロードスターRF」は流麗で美しいスタイリングとパワフルで扱いやすい2.0Lエンジンが組み合わされることで、「ロードスター」の上級シリーズと言うポジションを明確にした。
一方、「ロードスター」の最もベーシックな「S」においても、スポーツカーを操って走る楽しさやオープン走行の爽快感はなんら劣ることなく楽しめることが確認出来たのは収穫だった。
「ロードスターRF」と「ロードスター」のどちらが自分にとって「買い」なのかという当初の問題については、正直悩みが深まった印象。スタイリングを優先するならば「ロードスターRF」。純粋に走りを楽しむなら「ロードスター」なのかな....。無いものねだりをするのは本意ではないが、1.5Lの「ロードスターRF」があればそれが回答だったかも。いずれ日本仕様に追加されることを期待しておこう。
「ロードスター」の現行ラインナップ中から仕様・価格・リセール等も含めリアルにマイカーを選ぶならば、僅差で「ロードスターRF」ではなく「ロードスター」の「S」か「S Special Package」の6MTを選ぶ。但し、「デミオ」と「ジムニー」の2台体制に満足しているから、「ロードスター」が入る隙間が無いのが問題か...。
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試乗インプレッション | クルマ
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2017/02/25 21:44:34