![[試乗インプレッション]マツダ・アテンザワゴン XD(6MT) ディーゼル+6MT!! [試乗インプレッション]マツダ・アテンザワゴン XD(6MT) ディーゼル+6MT!!](https://cdn.snsimg.carview.co.jp/minkara/blog/000/029/412/268/29412268/p1m.jpg?ct=4537a947cb19)
以前より、是非試してみたいと思っていた新型「アテンザ」のクリーンディーゼルエンジン+6MT車を某所でテストすることが出来た。「アテンザ」にはセダンとワゴンの2ボディが設定されているが、今回テストしたのはワゴン。初期受注ではワゴンよりもセダンのほうが売れたのだとか。私の記憶する限り、セダンとワゴンを用意するモデルで、セダンが勝つというのは珍しいと思う。まぁ「アテンザ」もモデルライフトータルで考えれば、ワゴンの方が売れるのかもしれないが。
さて、念願の新型「アテンザ」と対面して思うことは、文句なしにカッコイイ。しかし、デカイ。全長4800mm全幅1840mm全高1480mmホイルベース2750mm(ワゴン)。セダンは更に大きく、全長4860mmホイルベース2830mmとなる。流石にこのサイズになると、日本国内では持て余し気味。マツダらしく、クルマの末端まで神経が行き届くような一体感があるとはいえ、物理的なサイズは誤魔化しようがない。だが、それを飲み込んででもこのクルマを欲しいと思わせる魅力的なデザインであることも事実。まぁ本音を言えば、このテイストを損なわず、次期「アクセラ」を作ってくれれば....それがベストなんだろうね。
早速乗り込んでみても、好印象は変わらない。これまでマツダ車が苦手としてきたインテリアの質感についても文句なし。むしろ、手抜きが顕著なトヨタ車なんぞ比較の対象にもならない。マンネリ化しつつあるVW車とも十分比較が出来る。もう走り出す前から、日本人として目がウルウルしてしまう思いである。一点、ケチをつけるとすれば、基本オーディオレスであるが、クルマ本体側に販売店OPのナビ装着を想定したコントロールスイッチが装着されるのがイマイチ。まぁ時間とともに、サードパーティー製のコントロールハーネス等が準備されるだろうが、マツダの販売店では嫌がるだろうし、高価な純正OPのナビを買わせたいという意志がアリアリ。あまり褒められたものではない。
ステアリング左側のプッシュ式スターターボタンを押し、エンジン始動。静かなクルマではあるが、ガソリン車とは明確に違うディーゼルエンジン特有の鼓動が感じられる。これを嫌う人もいるだろうが、私はポジティブに感じる。折角エクストラコストを払ってディーゼルエンジンを買ったとすれば、やはり音まで含めて楽しむべきだろう。「ガソリンのようなディーゼル」では面白く無い。しかし、これもアイドリング時のみと言って良い。走りだしてしまえば、分厚いトルクに圧倒されそうになるが、サウンド面では充分に静粛な範囲である。ついでに言えば、アイドリングストップも頻繁かつ正確に作動しており、初期の「i-Stop」が嘘のようにエンジンを停止する。また、再始動も素早く、不快な振動も無い。たった数年で「常識」レベルにまで進歩した事を痛感する。
さて、なにより楽しみにしていた「6MT」だが、正直自分の期待値が高すぎたのか、結果から言ってしまえばスポーティーなフィーリングとは言えなかった。特に、ストロークが大きなミッションのフィーリングは熟成の余地がある。更に、クラッチも半クラッチの領域が比較的ワイドでミッションと同様にスポーティーと言う類ではなかった。ある意味、実用車として真っ当なセッティングとも言えるのかもしれないが、国内ではもう少し辛口のセッティングが望まれているのではないか。
「SKYACTIV-D」エンジンは極低回転域から充分なトルクを発揮することも有り、MT車でもエンストの不安を抱くようなセンの細さは全く無く、教習所を出て直ぐの人でも全く問題ない。ただ、何速に入っていてもドンと押されるようなトルクでクルマを押し出すから、MTをコキコキ駆使しながらクルマを走らせるという頭脳的な楽しみは薄い。以前、
BMW135iクーペにも同様の感想を抱いた経験がある。現在はMTの設定が絶望的に少なく、更にディーゼルとの組み合わせとなると、アテンザは孤高の存在といえる。販売台数は少なくとも、あえて設定したマツダのチャレンジ精神は大いに評価したいところであるが、個人的には「面倒なMT操作こそ最大の至福」と考える故、アテンザのMTは「至福」と言えない結論に至った。恐らく、高速道路を含むロングドライブをこのクルマで駆ったら最高だと思う。得意ステージは山道ではなく、延々と続く高速道路だろう。このMTならば、アテンザよりもCX-5に設定した方が喜ばれるかもしれない。
実は、同日「6MT」のテスト後に同エンジンの「6AT」を再テストする機会にも恵まれたのだが、正直言ってマッチングという意味で「6AT」に軍配を上げたい。ただ、これは私の趣味的判断がかなり色濃く反映される部分であるだけに、ヒトが変われば評価も変わることだろう。
そろそろ結論を。新型「アテンザ」は先代よりも価格帯を上げたことも有り、低価格なクルマがもてはやされる風潮の中では極めて玄人向けのクルマである。しかし、玄人の期待にはしっかり応えてくれるだけのクルマに仕上がっているといえる。また、日本のモノづくりを守るためにも、日本人が積極的に国内産のクルマに乗るべきと考えざるを得ない時代の中で、これまでドイツ車に求めていたクルマの哲学が充分盛り込まれており、更に日本車ならではの気配りもある。永年VWファンを自認する私ではあるが、今ならば「パサート」よりも「アテンザ」を買うべきと明確に思う。ドイツメーカーは長く続いた円高為替レートの際にも価格の改定には極めて消極的だった。今後円安基調が続くと、一転して値上げをするかもしれない。その時はいよいよ見切るべき時かもしれないと思っている。
今回の新型「アテンザ」のテストは、クルマ選びとはかくも非常に難しく、奥の深いモノである事を改めて認識させられた。とても貴重な経験であり、私の今後のクルマ選びにも大きな影響を与えることになりそうである。

Posted at 2013/03/11 00:02:14 | |
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