![[試乗インプレッション]スズキ・スイフト 1.2L XS / XL 拍手喝采!!! [試乗インプレッション]スズキ・スイフト 1.2L XS / XL 拍手喝采!!!](https://cdn.snsimg.carview.co.jp/minkara/blog/000/019/708/336/19708336/p1m.jpg?ct=e675176720fe)
楽しみにしていた新型スイフトを早速テストする事が出来た。トップグレードの「XS」とミドルグレードの「XL」をそれぞれ20分程度乗ることが出来た。先代(2代目)スイフトは傑作車であり、ファンを多数獲得したクルマ。ヒット車のモデルチェンジは大変難しいものだが、その出来栄えに期待は大きく膨らんでいた。
結論から言ってしまえば「また1台、日本に名車が誕生」。デザイン・質感・走り・価格。どれを取っても現時点では最高のバランスと出来栄えと言って良いだろう。スズキは見事幾多の重圧を撥ね退け、難しいモデルチェンジを成功させた。賞賛に値する出来事である。
まず乗ったのは「XL」。価格は131.7万円(FF/CVT)のミドルグレード。個人的には超お買い得のトップグレード「XS」(147.5万円)とベーシックな「XG」(124.4万円)の狭間で一番中途半端なイメージがあるが、デミオやヴィッツなどのライバルと比較されるときには充実装備と手頃な価格で案外売りやすいグレードなのかもしれない。新型スイフトはベースモデルの「XG」から全車にキーレスプッシュスタート・フルオートエアコン・チルト・テレスコ調整・運転席シートリフター・イモビライザーなどが標準装備される。「XL」は「XG」に対し、本革巻きステアリング・LEDターンランプ付きドアミラー・16インチアルミ(185/55R16)等が追加され、価格は「XG」に対して+7.3万円高となる。
新型スイフトと対面してみると「良く出来たクルマ」特有のオーラを濃厚に放っている。新型マーチが乗る前から安っぽい雰囲気を感じてしまうのとは正反対である。写真で見ると、新旧スイフトはかなり似ていると言うイメージだったが、実物は良い意味で旧型よりも存在感が増している。きっと暫くは街中ですれ違ったときに「オッ」と目を惹かれるクルマになるだろう。
室内に乗り込んでみると、先代よりも格段に質感を増したインパネにまず感心する。軽自動車以下の新型マーチはともかく、ヴィッツ・フィット・デミオなどのライバル車には敵無し。さすがにソフトパッドは用いられていないが、内外装の高い質感が売り物の「VW・ポロ」(213万円~)と充分比較の対象になりえる。新型スイフトのオーナーは「良い買い物をした」という満足感を得られるだろう。
シートのサイズもタップリ取られていて適度なサポートがあり不満無し。先代スイフトはもう少しポジションを下げたいのに....って歯痒く思っていたが、新型はステアリングにテレスコ機能が追加された事も含め、好みのポジションがピタッと得られた。ドアミラーも比較的大型でとても見やすい。視界もスバ抜けて良いとは思わないが、昨今やたらAピラーが倒れこんだクルマが多い中では優秀な部類。とても運転のしやすいクルマである事は間違いない。ドアミラーの形状にもうひと工夫あれば斜め前方の視界が更に良くなるのではないか。
早速「プッシュスタートボタン」を押しエンジン始動。遮音性にも気を配られている様で予想よりも静かだった。今回、一番心配していたのが1.2L(NA)エンジンと副変速機構付きCVTのマッチング。VW・ポロは全車1.2Lターボ(TSIエンジン)+7速DSGへ移行した様に、欧州ではダウンサイジング+直噴ターボのエンジンが流行中だ。しかし、そんな不安は走り出して50mもしないうちに雲散霧消。もちろん胸のすくような加速とは言えないが、平坦な市街地を大人2名乗車程度の負荷では苦もなくスイスイと加速していく。おそらく、副変速機構付きCVTによって変速比が大幅に拡がった事の恩恵だろう。更に、先代スイフト(スプラッシュも)が採用していたCVTは低速域でのギクシャク感やトルクが痩せて感じられてしまう現象が残っていたが、それらもスッキリ解消。スバルの「リニアトロニック」と並んで、現時点では最高のCVTと言って良いだろう。おそらくソレと言われなければCVTと判らない程の出来栄えだった。
今回のテストコースには高速道路や山道が含まれない為、あくまで市街地に限ったインプレッションになる事をお断りする。足回りについては、リヤの踏ん張りが増したお陰で直進安定性が増した。先代がどちらかと言えば「軽快感」を重視した味付けならば、新型は「安定・重厚感」重視のセッティング。先代の味付けを好む人もいるだろうが、新型の走りは完全に欧州車のそれであり、長距離を走っても疲労感が少ないクルマに仕上がっていると思う。このあたりは別途機会を設け、じっくりとテストしてみたい。
私の好みから言えば、ステアリングはもう少し重めでも良い。先代スイフトの方が重めの味付けだったはず。欲を言えば、センター付近の落ち着きがもう少し欲しいところ。しかし、一般的にはこの位が丁度良いのだろうか。まぁそれでもライバル車より多少重めの部類だろう。ボディの剛性感も最新のクルマらしく、安心感に満ちたもの。リヤシートが起きた状態でのラゲッジスペースは決して広いとは言えないが、必要に応じてシートアレンジすれば充分なサイズが確保出来る。このクルマでは大きな問題にはなるまい。
クルマをトップグレードの「XS」に乗り換えて再びテスト開始。「XL」に比べて価格は+15.7万円程高価になるが、ESP(横滑り防止装置)・SRSサイド+カーテンエアバッグ・フォグランプ・クルーズコントロール・パドルシフト・フロントアームレスト等が追加される。私が新型スイフトを買うならば、この「XS」以外の選択肢は考えられない。パワートレーン系では先に乗った「XL」と比較し、リヤのブレーキが「ドラム」→「ディスク」に格上げされる事以外はほぼ共通の内容だから、僅かなテスト時間内では特筆すべき大きな印象の違いは無かった。ベースモデルの「XG」ならば、15インチスチールホイル+175/65R15のタイヤに変更されるから走り味にも少なからず違いが出てくるだろう。
そろそろ結論になるが、冒頭で「また1台、日本に名車が誕生」と書いた。この価格でよくぞここまでの内容と味付けに仕上げて来たと言う事にまずは拍手喝采を贈りたい。開発陣が心血注いでスイフトのモデルチェンジに取り組んで来た事がクルマからビンビンに伝わって来る様だ。私は御存知の通り、生粋のVWファンで有るが、「スイフトがあれば(価格の高い)VW・ポロに乗らなくても良い」とお世辞抜きに思った。そして、このクルマをベースに次のスイフトスポーツが開発されている。クルマ好きとして待ち遠しいモデルに仕上がるのは確実だろう。日本人として、このクルマが日本にある事を誇りたい。
◎追記◎
新型スイフトと比較する為、大好きな「スプラッシュ」を同時に短時間乗った。欧州(ハンガリー)製のスプラッシュは足回りの味付けが新型スイフトよりも更に堅めに仕上がっているのが特徴。しかし、全高が1590mmと新型スイフトより80mm(FF)高く、更にシートの着座位置も高めとなる分、スイフト比で体感的なドッシリとした安定感に若干欠ける。また、CVTの出来栄えが新たに副変速機構付きCVTを搭載したスイフトと比べてしまうとハッキリひと世代古く感じてしまった。シートもカチッと硬めの造りは好みでは有るが、新型スイフトのフィット感には一歩譲る印象。またステアリングはチルトのみでテレスコが無いのも惜しい。是非スプラッシュの2型改良時には、副変速機構付きCVTへの換装とESPを標準にして欲しい。スプラッシュのリヤシートはスイフトで省略された後席3名分のヘッドレストや3点式シートベルトがキチンと装備される事はスイフトよりも優れたポイントである。
これからスプラッシュ(1型)を買うならば、純正中古車が結構リーズナブルかつ潤沢に流通しているから、これを狙うと良いのではないか。予算重視でスプラッシュを選んでも後悔はしないだろう。スプラッシュと新型スイフト。共に良く出来たクルマだが、その乗り味は結構違っていた事を報告しておく。
Posted at 2010/09/19 18:47:00 | |
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