![[試乗インプレッション]スズキ・MRワゴン "T" (2WD/CVT) 新型エンジン搭載。 [試乗インプレッション]スズキ・MRワゴン "T" (2WD/CVT) 新型エンジン搭載。](https://cdn.snsimg.carview.co.jp/minkara/blog/000/022/243/149/22243149/p1m.jpg?ct=c97f20448a4f)
スズキの新型軽自動車「
MRワゴン」をテストした。もちろん一番の興味はスズキが16年ぶりに新規開発した「R06A」型ロングストロークエンジンのフィーリング。テスト車はトップグレードであり、唯一ターボ付きの「R06A」型エンジンを搭載する「T」であった。私が購入するとしたら「T」だろうと考えていたので好都合だった。価格は139.3万円と、軽自動車としては結構高価なクルマだが、話題の「タッチパネルオーディオ」も装着され、まず装備レベルに文句は出ないだろう。「T」の2WDには軽自動車として異例な事だが「SRSサイド・カーテンエアバッグ」と「ESP(横滑り防止装置)」がセットでメーカーOP装着可能。価格は+11万円高の設定で合計150.3万円となる。
スタイリングは基本的にオーソドックス。タイヤを四隅に追いやりロングホイルベース化。ボディ上部へ行っても絞込みを極力少なくし、ロングルーフを採用する事で室内の広さは驚くべきほど。愛嬌のあるフロントマスクのお陰で上手くカモフラージュされているが、MRワゴンの実用性能はかなり高く真面目なクルマと言える。個性的なフロントマスクに対して事務的な後姿には多少の物足りなさも感じるが、全般的に無印良品的なサッパリとした新しい魅力を感じるのが面白い。イメージ的には三菱「eKワゴン」がスズキの技術を使ってフルモデルチェンジした様な印象を受けた。残念ながら三菱にこのレベルの軽自動車は作れないだろうね。
室内は例の「タッチパネルオーディオ」とホワイトのインテリアパネルが目を惹く。高級感を感じる程では無いが、軽自動車にファーストカーの質感を求めるニーズにも応える内容だろう。折角の新エンジン搭載にタコメーターが無いのは残念。フロントシートはもう少し背もたれに高さが欲しいが、適度な堅さとホールド感は一昔前の軽自動車では考えられなかったレベル。139.3万円のプライスも充分に納得の範疇と思う。それに比べるとスプラッシュのインパネは若干チープな印象を抱くかも。
キーレスプッシュスタートボタンを押してエンジン始動。この段階から「R06A」型エンジンを実感。想像以上に低振動で静粛性が高い。2WD車はペンデュラム(振り子)式エンジンマウントを新採用した効果だろうか。「K6A」型は3気筒エンジン特有の振動を感じたし、アイドリング時にそれなりのエンジン音も聞こえていた。それらは必ずしもネガティブ要因とは思わないが、MRワゴンは軽自動車のレベルを一歩引き上げたのは間違いない。
インパネシフト型のレバーを操作し、走り出した瞬間から副変速機構付のCVTとロングストローク型「R06A」型エンジンの相乗効果が発揮され、グッと太いトルクで発進し加速していく。ターボも低回転域から黙々と仕事をしている様で、大人2名乗車程度の負荷では何ら不満を感じない。タコメーターが無いので詳細な回転数は不明だが、巡航時はかなり低回転に抑えられている様だ。副変速機構付のCVTは出来が良く、CVTにありがちな違和感(加速とエンジン回転数のズレ等)が少ない。これはちょっとした驚きと表現しても良い。従来の「K6A」型特有のエンジン音を響かせながら加速していたが、MRワゴンは余裕すら感じさせるフィーリング。「R06A」型はあまり個性を主張してくるような性格のエンジンではないが、16年ぶりの新エンジンはその進化幅を充分に感じさせてくれた。
売れ筋のNAエンジンについてインプレッションする事は出来ないが、贅沢にも吸排気VVTを装備。ターボ同様に副変速機構付のCVTも組み合わせる。車重も800kg前後と軽量に抑えられているから心配は無用だろう。ただ、NAエンジン搭載車はフロントスタビライザーが省かれ、タイヤが155/65R14 → 145/80R13へ格下げされるのは残念なところ。私が買うならば「T」と思う要因である。流石にABSは全車に装備されるが、そろそろこの価格帯の軽自動車はスタビライザーも標準装備して欲しい。まぁダイハツ製軽自動車の大半はスッパリとスタビライザーが省かれるのだが。
MRワゴンのターボモデル「T」はスポーツモデルという位置づけでは無い。内外装の装飾や足回りにも格別な差別化を施された印象も無く、全般的にサッパリとした穏やかな味付け。ターボも裏方に徹するマイルドなチューニングだから、MRワゴンをメインカーとして長距離走行や高速道路を多用するユーザーに最適なモデルだろう。「タッチパネルオーディオ」にiPodを接続し、のんびりドライブを楽しむのが似合うクルマと感じた。まぁ旧タイプのクルマ好きとしては、MRワゴンのポテンシャルを存分に生かしたスポーツ系のグレード「ワークス」があったら面白いのにと思う。タイヤも燃費指向から155/65R14をチョイスしたのだろうが、本来は165幅の15~16インチを奢った方が良かったと思う。
そろそろ結論を。MRワゴンは全身最新鋭の軽自動車。内外装の斬新さに加え、パワフルで静か。CVTとのマッチングやステアリングのフィーリングも良く、これまで経験した軽自動車の中で最も「上質」と言える。しかし、価格もそれなりに高価。
スイフトのトップグレード「XS」が147.5万円(2WD/CVT)だし、先日一部改良を受けた「
スプラッシュ」は128.7万円(2WD/CVT)で買える事も考慮しなければならない。私も含め「走り」の項目がクルマ選びの大半を占める様な好き者には「スイフト」や「スプラッシュ」を魅力的に感じてしまうが、軽自動車のコンパクトなボディを生かした機動性や後部座席・荷室の広さ等はMRワゴンが勝る部分。税金・保険・有料道路など軽自動車の優遇措置も通勤などで毎日クルマを使う方には無視出来ないポイントだろう。間違い無く、普通車と比較出来るだけのクルマに仕上がっている。
「R06A」型エンジンはこの先、ワゴンRやパレットなど既存の主力車種にもMCのタイミング等で搭載されて行くと思うが、第一印象として「パワフル・静か・低燃費」の優等生。しかし、私が気に入っていた「K6A」の心地良いビート感や回転フィーリング・サウンドも捨てられない魅力。「R06A」型が今後熟成していく過程で、これらフィーリング面でも進化していく事を期待したい。
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Posted at 2011/04/30 01:39:41 | |
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