![[ファーストインプレッション]ホンダ・S660 ようやく山道で本領発揮。 [ファーストインプレッション]ホンダ・S660 ようやく山道で本領発揮。](https://cdn.snsimg.carview.co.jp/minkara/blog/000/036/175/742/36175742/p1m.jpg?ct=0d60341f87a3)
「S660」が納車されて初めての週末。天気は良いが、もはや災害レベルの猛暑にクラクラしつつも「S660」の走りを堪能すべく、山道へ向けて走り出す。途中でホンダ「ビート」と数回すれ違ったが、熱い視線を感じた。(勘違いかも知れないが..。)やはり「ビート」のオーナー様にとっても気になるクルマだろうか。逆に私は「S660」と「ビート」を乗り比べてみたいものだ。思い返してみても、しっかりと「ビート」を駆った記憶が無い。確かスズキ「
カプチーノ」を購入した頃、「ビート」の中古車も試乗させて頂いた様な気もするが、もはや曖昧な記憶である。既に小学生の頃からクルマ屋さんを巡ってはカタログを頂戴し集める事を趣味としていたから、どうしてもその頃に邪険にされたメーカーの印象が悪く、特に「ホンダ」が大嫌いであった。それ故、ホンダ車を長らく無視していた傾向があり、結果として試乗経験も少ない。後に「
S2000」を購入するのだが、その際も長らく嫌っていたホンダ車を買って良いものかと約1ヶ月位は悩んだ(笑)記憶が有る。まぁ今となっては過去の話。今回「S660」の購入に何ら迷いは無かった。御存知の通り(?)今の私が嫌うメーカーは「日産」と「三菱」である。共に以前は熱狂的に好んでいたメーカーなのだが。
さて。肝心の「S660」のファーストインプレッションだが、納車から約400kmを走破し、色々と見えてきたことが有る。総論を言ってしまえば、よく出来た部分とかなりイマイチな部分が同居するクルマ。要するに、今日の自動車としては結構な荒削りであり、マーケティングやクリニック調査を経て開発される平均点主義の乗用車的な手法では誕生してこないタイプのクルマだと言えるのではないか。
「S660」を賞賛する記事は掃いて捨てる程あるので、あえて「オーナー」としてイマイチと感じる部分を2つ述べたい。まずは、メーカーOPで装着した「センターディスプレイ」(internavi POCKET連携対応)と、オーディオ(iPod対応のUSBプレーヤー/AM・FMチューナー)の使い勝手は壊滅的に悪い。まぁ慣れてくれば解決される部分もあるが、説明書の記述も不足しているし、画面を見ていても操作方法が判りにくい。例えば、iPodのプレイリストを切り替える方法などは未だに判らない(笑)。また、スマホにインストールした「internavi POCKET」のアプリと連動し、カーナビ画面をセンターディスプレイに表示させるのだが、これも四苦八苦してようやく映った(泣)。しかも、画面が鮮明ではなく、正直1万円台で売っているユピテルのポータブルナビが格段に使いやすい。これは要改善ポイントだろう。但し「S660」は後方視界が悪いクルマで、軽自動車といえどもバックカメラは必須。そういう意味で「センターディスプレイ」はお買い得と思う。
先日の納車報告でも書いたが、エンジンサウンドもイマイチ。エンジンの出力やフィーリングに不満は無いのだが、いかにも3気筒エンジン丸出しのガサついたサウンドはモチベーションダウン。パワーリアウインドウを下げてエンジンサウンドを積極的に聞きたいという気にならない。今後、エージングが進むことで改善されていけば良いのだが。どちらも乗車中は常に視界に入り、耳に入る部分なだけに早急なる改善を期待している。
一方で、「S660」美点も沢山書いておこう。何と言ってもシフトフィーリングの良い「6MT」に尽きる。ホンダスポーツのセオリーに則り、超ショートストロークであり、スコスコとシフトゲートに入る。これは先日試乗した新型「ロードスター」で若干期待に届かず、ガッカリした部分でもある。特に新型「ロードスター」は信号待ち等の停止時にシフトレバーがブルブル振動しているのが不快だった。(個体差かもしれないが)このシフトフィーリングだけで「S660」を買う人が居てもおかしくない。むしろもっと刺激的にクロースした設定でも良かったのだが、それは好みの問題か。但し、ミッションのダイレクト感では「S2000」に若干のアドバンテージが有ったと記憶しているが、それも僅かな差である。
そしてターボ化されたとはいえ、高回転までストレス無く吹け上がるS07A型エンジン。むしろ、今どきのターボエンジンとして珍しい低回転域でトルクが細いタイプ。当然ながら高回転域を多用することになる訳だ。草食系のエコエンジンに慣れてしまった人達にとって、相当異質で扱いにくいエンジンに感じるのではないかと心配になる。しかし、小排気量スポーツの醍醐味はエンジンを遠慮無く高回転域までブン回して走ることだろう。既に私は慣らし運転を諦めました(笑)。このエンジンを「6MT」で操るわけだが、当然ながら頻繁なシフトワークが要求される。エンジンのトルクに任せシフトダウンをせず追い越しをするのは難しい。しっかりとシフトダウンが必要。ついでに言えば、街中で6速は(合法的に)常用出来ない。70km/h以上で最低でも2000rpmは回っていないとノッキングが出る。6速は高速道路で巡航するためのポジションと考えるべきだろう。これを「楽しい」と思うか、「面倒」と思うかで「S660」の評価が変わる様に感じる。ライバルと言われるダイハツ「コペン」と大きく違う部分でも有る。恐らく、「S660」もCVT車はかなりフィーリングが違うと思うが。
そして、鋭いコーナリング性能に一役買っている(と思う)「アジャイルハンドリングアシスト」も面白い。かなり強引なラインでコーナへ侵入しても、グイッと鋭く切れ込んでいくのは大したもの。LSDの切れ味とは少し異なるが、「アドバン・ネオバ」のハイグリップタイヤと合わせ、ミッドシップ・スポーツの醍醐味を味わうことができる。軽自動車では贅沢な4輪ストラット式サスや4輪ディスクブレーキも大きく貢献している。ついでに言えば燃費が良すぎる(笑)事。遠慮無くアクセルを踏んでエアコンも全開で稼働しているが、メーター内の平均燃費計は20km/L前後で推移。正直、燃費なんて気にするクルマではないのだから、もっと過激な走りに振って欲しいくらいだ。
日本の狭くてクネクネと続く峠道をコキコキと「6MT」を駆使しながら走ることが楽しいクルマ。どうせ荷物もロクに積めないし、車内も窮屈で快適とは言いがたいクルマ。結局のところ前を向いて「走ること」に没頭する事がこのクルマ唯一の目的であり、最大の楽しみであろう。ただ、それ故に日本のクルマ事情に照らせば購入・維持のハードルは結構高いクルマ。すべて理解した上で購入したつもりではあるが、やはり「S660」でドライブした先で買い物をして帰りたい事はある。また、急な降雨に備えて傘を収納するのも大変。今後も色々と悩ましいことも有るだろう。これから「S660」を買われる方のために少しでも参考になれば幸いである。
冒頭で述べた通り、「S660」は隅々までしっかりと考えられ作りこまれたクルマでは無いが、ここまで走りに特化したスパルタンなスポーツカーがこの国で商品化まで漕ぎ着けられた事が奇跡だと感じる。「S660」が今後どう進化し、将来的にどんな評価を集めるのか非常に楽しみなクルマ。とりあえず、クルマ好きとしてホンダの英断に賛同し購入する事で一票投じる事が出来たのは良かった。
Posted at 2015/08/03 21:00:31 | |
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