![[試乗インプレッション]トヨタ「GR86」 RZ (6MT) 2.4Lの水平対向4気筒 [試乗インプレッション]トヨタ「GR86」 RZ (6MT) 2.4Lの水平対向4気筒](https://cdn.snsimg.carview.co.jp/minkara/blog/000/046/300/580/46300580/p1m.jpg?ct=b27f58ff4d52)
以前から乗りたいと思っていた「GR86」にようやく乗ることが出来た。
昨年7月に登場したスバル「BRZ」に続き、10月にはトヨタ「GR86」がフルモデルチェンジを実施し新世代への移行を完了しているが、不思議とタイミングを逸しており、今日まで触れることが出来なかった。
思い返せば、初代「86」/「BRZ」も2012年の発売当初に少し乗せて頂いた記憶が有るが、それ以降のご縁がなく、縁遠いクルマとなっていた。
今回は有難いことに、「GR86」には最適な山道ルートを含む1時間程度の試乗をさせて頂いた。スポーツカーの試乗が難しい北海道においては大変貴重な機会となった。更に、同日・同コースをトヨタ「GRヤリス」で再度トレースする事も出来たので、それは別途書き残す予定。
テスト車はトヨタ「GR86」のトップグレード"RZ"(6MT/FR)で価格は334.9万円。ボディ色はクリスタルブラックシリカ。
最近国産車も価格高騰が続く中、気がつくと「GR86」はパフォーマンスの割に価格はお手頃だな...と。
何故か6MT車には"アイサイト"等の先進安全装備が現時点で全く用意されない瑕疵が存在するのは世界のトヨタブランドで販売するクルマとしてはマズイと思うが、それ以外に大きな不満はない。(ディスプレイオーディオが用意されないのはチト残念だが...)
何より、初代「86」/「BRZ」の内外装デザインが個人的にどうにも好みではなかったが、2代目モデルのスッキリとしたクーペフォルムは嫌いではない。内装にはもう一段の質感アップを望みたいが、そういう類のクルマではないのだろう。
クルマオタクとして、2代目モデルが排気量を2.0L→2.4Lへ拡大したことにモヤモヤしているのは事実。初代2.0Lは(FA20型)86.0×86.0mmのスクエア型だったのに対し、2代目2.4Lは(FA24型)94.0×86.0mmのショートストローク型へと変更になっている。
水平対向エンジン特有の事情として排気量を拡大する際、ロングストローク化は全幅の拡大に直結するため、ボア(内径)アップしか合理的な方法が無かったのも理解出来る。しかし昨今のトレンドとしてショートストローク型へ変更される事案は稀だから、そのあたりの印象を確認したかった。
実車と対面。写真よりコンパクトな印象。全長4265mm全幅1775mm全高1310mmの寸法は理性的と評価すべきだろう。
早速室内に乗り込みエンジン始動。シートのホールドや、ステアリングの剛性感、そしてゴクッと入る6MT。私が事前に想像していたよりも、随分本格的というか、やる気に満ちたスポーツカーだな...と。
ボクサーエンジンのピストンを模したような形状のデジタルメーターはもう少し品質感が欲しい気もするが、必要な情報は得られるから大きな問題では無い。
テスト車で公道を走り出す。記憶にある初代「86」と較べ、確かに排気量拡大のメリットとして低速・低回転域からトルクが増し乗りやすくなった。更に言えば、エンジンの回転フィールも随分と滑らかになった(フリクションが減ったような)印象を得た。
低めのギアを選び、エンジンを高めの回転数でキープしていると、アクティブサウンドコントロールの効果もあり、なにやら快音が聴こえてくる。どこまでがリアルな音なのか判別する余裕はなかったが、今後このタイプの機能は必須になるだろう。自分が楽しく走ることと、周囲への騒音撒き散らしがセットである必要はない。
日頃乗っているマツダ「ロードスターRF」と比べると、やはり235psを誇る上に、前述した昨今珍しいショートストローク型エンジンの存在感は強い。言い換えれば、ちょっと懐かしい感じがする。
「その気になれば高回転域まで回せるエンジン」と「高回転域を使って走るエンジン」は全然違う。もちろんコレは後者のタイプ。正直言って、2.4Lへ排気量を拡大したとはいえ、「低回転域からモリモリとトルクが湧いてくる...」なんて印象はなく、ショートストローク型特有のトルクの細さは感じる。特にヒルスタートが装着されるから坂道発進も難なくこなすが、やはり排気量からイメージするほどのトルクではなかった。
ではショートストローク型のメリットは何か。当然、高回転域まで回したときのドラマチックさは格別だった。実用性は多少捨てても、回して楽しめるエンターテイメント性の高いエンジンを作ったと理解したほうが良い。もう回して楽しむ4気筒NAエンジンなんて出てこないだろうから。
コースが山道に差し掛かれば、「GR86」は水を得た魚。嬉々としてコーナーへ飛び込んでいく。日本の山道には日本のクルマが最適。そんな当たり前のことを再確認する瞬間。またオープンカーである「ロードスターRF」よりボディ剛性が高い分だけ、コーナーを攻め立てるモチベーションも上がる。
一方で「ロードスターRF」と比較し、好みではなかったのは「6MTシフト」と「クラッチ」のフィーリング。
「ロードスターRF」は教科書的とでも言いたくなるほど癖がなく、自然なクラッチ/シフトフィールだが、それに比べると「GR86」は若干癖がある。クラッチはミートポイントが唐突に浅く狭め。シフトフィールも渋さを感じるが、これは随分と重箱の隅のお話。オーナーなら慣れる範疇もしくは好みの問題か。
雑誌等で「GR86」を語る際「BRZ」との小さな違いを延々と語る記事が多いのだが、結局のところ一般ユーザーが同じ場所・環境で二車を直接比較出来る事は稀だろう。個人的には「GR86」/「BRZ」の兄弟比較より、違う車種との比較のほうが余程興味がある。
個人的な嗜好としては、「GR86」にもう少し脚回りがしなやか・穏やかな味付けを望みたいが、トップグレードの"SZ"は贅沢な215/40R18を履く。見た目を犠牲にしてインチダウンすると印象はガラッと変わるかもね。
よく考えると、結構実用的なトランクルームとリヤシートを備えるから、普段使いにもある程度は耐えられるだろう。(オープンカーはどうしても荷室が狭いから実用が厳しくなる)
最もベーシックな"RC"は279.9万円で買える。昨今珍しい鉄チンホイルだが、好みの社外品交換前提なら問題無し。サイズは205/55R16。コレなら前述した乗り心地も少しは穏やかになるだろうか。ん??よく考えたら、マツダ「ロードスター」の特別仕様車「990S」(289.3万円)よりも安い(笑)。
ポチポチと電卓を叩きながらうーんうーんと唸る。そんな妄想をしながら夜も更けていくわけです。

Posted at 2022/09/19 00:36:20 | |
トラックバック(0) |
試乗インプレッション | クルマ