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2010年01月10日

MF誌' 77/08号 "DETROIT"/クルマよこんにちは

MF誌' 77/08号 "DETROIT"/クルマよこんにちは 旧中島飛行機の航空技術者、後にホンダF1監督となった中村良夫氏のコラム。
毎号(ふ~ん)と考えされられる内容を、大変面白い文章と笑えるイラストで書き綴った「クルマよこんにちは」は後に単行本として発刊されました。

この号のタイトルは”DETROIT”で、もちろんそれがアメリカの都市名である事は言うまでも無いんですが 変革の始まろうとしていた米車の片鱗を氏独特の視線で見ています。

『デトロイトは、世界自動車王国の首都であった。それは(中略)1910年前後から、人類社会が経験した2つの世界大戦を経て、1960年代に至る半世紀の間、デトロイトは世界の自動車産業に君臨してきた。自動車のメッカであり、全ての躍進の原動力であり、全ての新技術の発生の地であった。全世界の自動車生産の7割近くを牛耳り、あらゆるものに卓越した王者として、ゆるぎのない地位を確保して来た。デトロイトとは自動車の代名詞ですらあった。』

『19世紀の末から今世紀にかけて、ヨーロッパで生誕し実用化し始めた自動車は、アメリカと言う新大陸に移って本当の意味で開花した。』

『・・・例えヘンリー・フォードが実在の人物でなかったとしても、誰か他のヘンリー・フォードが、ベルトコンベアーに自動車の生産をのせる事を考え、T型フォードに似たような自動車を作り、驚くほど短期間のうちに、自動車トランスポーテーションの波を拡散していったに違いない。ただし他のヘンリー・フォードもやはりアメリカ人であり、デトロイトを母胎としていたであろう事も疑問の余地はないであろう。パリでもロンドンでも、はたまたシュツットガルトでもなかったはずである。』

ここで余談として、戦時中にパッカードが「直立液冷V-12 2段過給機中間冷却器付きのロールスロイス・マーリン61型」を多数生産した(本家イギリスのロールスロイスよりも多かったと言う噂もあるらしい)事に触れています。氏は戦時中に このエンジンを分解・スケッチ・図案化するように軍に命じられたが、それは単なる航空機エンジンではなく芸術品とも呼べるものだったらしく(飛行機がジェット化する前夜が大戦末期であり多シリンダー高過給高出力というピストンエンジンの極限形だったそうな)、故にデトロイトが単に多量生産のお化け工場ではなかった証しであると述べています。

話は本題に戻り
『絶対的な世界のリーダーであったデトロイトから、我々は自動車について学び、教えられて来た。それは日本の自動車のゆりかご時代(1920~1930年代)、兵器産業の時代(第二次大戦末期)、戦後のつい最近までの急成長期まで続いてきた。』


『デトロイトの持っている開発能力(頭脳も手段設備も何もかも)は依然として世界No.1であるのに』
・・・もかかわらず氏は
『デトロイトの自動車設計ポリシーは1950年代の初期以来 完全に停滞してしまったように思える』 と。

これはフルサイズカーに代表されるアノ乗り味が、旧態依然としていて全く進歩していないと言う事を表しているのですね。
なので ”デトロイトの敵はデトロイトでしかない”のは分かるけれども、その上にアグラを書いているという意味の事を書いています。

ところが、氏はこの年の2月にアメリカで借りたレンタカーがたまたま'77シボレー・カプリスで’76型に比べて軽くなった事は聞いていたけれども、
『・・・これがただ単に軽くなっているのでは無い。正に軽くて、しかも剛性の高いカチッとしたボディ、デトロイト伝統のフンワカしているけども、グニャグニャの足ではなく、カチッとしたボディをカチッとした足で支持して、しかもバネ、ダンパー、コンプライアンス・ラバーを巧みに配して乗りごこちの粗さを排除し、5.7LのV-8エンジンは、触媒とEGRのイヤラシサを露骨に示さないどころか、静かにスムーズに大型エンジン並みの力強さを発揮し、ステアリングも足と同じくグニャグニャでなくカチッと応答してくれるのである。デトロイトもとうとうやってくれたか・・・と言うのが(中略)私の印象である。』

そしてMF誌の過去記事を引き合いに出して来て、自分の借りたカプリスがF-41ポリスサスペンション付でも無かった事を(つまり標準車であった事を)強調しています。
『クルージングは驚くばかりに静粛であり(ただしその静かさはロールス・ロイスの静かさとは異質の)、スロットルを全開にして加速に入ると、豪快な排気音を発して急速にクルマを引っ張ってくれる、そのようなデトロイトのフルサイズ・カーであると私は思う。』

最後に、自身が数多くの新型車に乗っているわけでは無い事を理由にこのカプリスには「褒め過ぎかも知れない」と素直に述べてデトロイトにがんばれ!と声援を送っています。

30年経った今、氏はこの世にいないけれどビッグ3は倒れ中華が台頭・・・「こんな世の中は間違ってる」と言ってくれるでしょうか。
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Posted at 2010/01/10 02:30:14

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この記事へのコメント

2010年1月10日 9:12
このコラムは初めて知りましたが、中村良夫さんの物を見る目は的確ですね。
特に中盤の
『デトロイトの持っている開発能力(頭脳も手段設備も何もかも)は依然として世界No.1であるのに』
『デトロイトの自動車設計ポリシーは1950年代の初期以来 完全に停滞してしまったように思える』
これはフルサイズカーに代表されるアノ乗り味が、旧態依然としていて全く進歩していないと言う事を表しているのですね。
なので ”デトロイトの敵はデトロイトでしかない”のは分かるけれども、その上にアグラをかいている

アメリカに憧れてアメリカ車を目標にしてきた技術者の率直な感想ですね。
コメントへの返答
2010年1月10日 18:04
>物を見る目は的確

はいヒコーキ屋、技術者としても第一級の人でしょうし。
本田宗一郎氏との確執も取り沙汰されたみたいですが、強烈な個性を持った宗一郎さんとはどんな人も対立もしくはイエスマンに成らざるを得なかったのかも知れませんね。
極端な言い方をすれば彼がホンダに入ってなかったら、F-1どころかホンダの4輪進出は無かったのでは?

既に第一線を退いたと言っても、欧州は元よりアメリカまで・・・世界中を飛び回っておられた氏のこのコラムは、回顧録的な内容から、この号のカプリスのような日常チョット気付いた事、はたまた現代F-1についての考え等々、月日を追うごとに文章も砕けて益々面白くなって行ったんです。
その読者をグングン引き込む文章力、そしてプッ と、吹き出してしまう直筆のヘタくそなイラスト・・・・・機会あれば是非、単行本を読んでみて下さい。

>技術者の率直な感想

そうですね、デトロイトが何故進歩しなかったか?それが「デトロイトのデトロイトたる所以であるから」と、カーン女史なる人物に言われたそうですが、変化を見せ始めたシボレーに触れたのを機に、氏は大きな声援を送ったのです。旧態依然とした米車に魅力を感じてしまう僕はチョット複雑な心境ですが(笑
しかし、彼等(デトロイト)が以後 次々に生み出した「日本車や欧州車を模倣した小型車」はことごとく失敗したんですよね。

30年前の中村氏の警告と声援をビッグ3が真剣に聞いていたら?・・・・・全てはあとの祭りです、残念ですが。
2010年1月10日 14:26
戦時中中国戦線で苦労して捕獲したP-51はエンジンのプラグだけがどうしても調達できなくて、試験や演練の後、放置されちゃった由。あと、日本のエンジンはちょっと使うとすぐ完全分解整備を要していたのに、アメリカ製エンジンは暫く分解しなくて良いようにパッキンは接着だったってどこかで読みました。
コメントへの返答
2010年1月10日 22:15
P-51ってマスタングって言われてたヤツでしょ?
昔、父から「プロペラの先端が尖ってて空気抵抗が少なく有利だった」みたいなハナシを聞いた覚えがあります。・・・つまりあらゆる面で進んでいたと。しかし有名な零戦は「ゼロファイター」と呼ばれ恐れられた とも・・・。

>プラグだけがどうしても調達できなくて

仮に特殊なサイズだったとしても、軍のやる事は国家プロジェクトだった訳だし、内製出来なかったんでしょうかね?
2010年1月10日 15:27
なるほど。中村良夫氏たる人は知りませんでしたが、おっしゃる事はよく分かりました。
まったく同感ですね。
確かに子供の頃はアメリカ車が全てにおいて上をいってましたから、他メーカーが追いつけ追い越せでがんばって来たのを鼻で笑いながら高みの見物をしてたんでしょうね。
まさか自分達が遅れをとることになるとは夢にも思わずに…

でも!
いつまで経っても大きく変わることがないアメリカ製OHVエンジンというものにとても魅力を感じているのは事実です。ブン回してパワーを稼ぐのではなく、ズ太いトルクにモノを言わせてグイグイ加速していく、ある意味カーオーディオに耳を傾け、タバコを吸いながらでもそこそこ速く走れる寛容さも魅力です。
僕がレーサーレプリカのバイクからハーレーに買い換えたのも、小型のエンジンで目を吊り上げながら走るのがイヤになったからでした。

今の時代、一般受けしにくいのは仕方ありませんが、なんとか倒産せずにがんばってもらいたいものです。
でも生き残る為とはいえ、エコカーには手を出さないで欲しい(笑)
コメントへの返答
2010年1月10日 22:09
>小型のエンジンで目を吊り上げながら走るのがイヤになったから

分かるような気がします。低速トルクで引っ張ると言うのは実用的と言うか、街乗りも楽なんですよね、かなり「ずぼら な運転」ができる。
道が狭いとフルサイズはさすがに困る場面もありますし、日本じゃコンパクトがちょうどイイ。

日本の高速道路では、気ぜわしくてアメリカ車で走るのは遠慮したいです(笑
せっかく100km/h巡航したくても数km走ると必ずトラックなんかに出会うし、カーブやアップダウンもイヤですね、あと路面の荒さ・・・。

やっぱり砂漠の一本道が一番かなぁ(あんな足のクルマで、数日かけて大陸横断なんてゾッとしますが・笑)

ハーレー・・・福井のような田舎でもちゃんとDラーがあるんですよ(昔は鯖江市って言う処にしか無かった・汗)
2010年1月12日 1:05
液冷V12 マリーン・エンジン、、
WWⅡ最高の戦闘機と云われた P51マスタング の発動機ですね。
パワー、燃費、信頼性が高く、現在も パワー・ボート等に搭載されているとか。

時代の流れを感じるコラムです。
単行本、現在は入手困難なのでしょうか??
コメントへの返答
2010年1月12日 12:56
>P51マスタング の発動機ですね

そうですね(って言うか、知らんかった・滝汗)
それで↑きぬた さんがP-51のエピソードを出してきたんですね。

今でも現役とは凄いエンジンですね~。
このコラムの本文には、マーリン61型を分解し個々の部品を観察した際に、その仕上げ方に感嘆(芸術品と表現)した理由が書かれていましたが、僕には全く理解不能(爆)

とにかく当時の日本の技術力では、到底造り得ないモノであった事は確かなようです。

>単行本、現在は入手困難なのでしょうか??

分かりませんが、入手可能ではないかと思うんですがね。ぜひ購入・ご一読を!



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