
1978年8月のある夜。
場所は福井市の中央大通り、福井放送会館ビル前。
この辺りは県庁や市役所のすぐそばで、いわゆる『駅前』と呼ばれる一等地である。
旧国鉄福井駅から西に約200m程、地元市民が単に「放送会館」と呼ぶこのビルは地元ローカル局『福井放送』の建物だが、最上階には映画館、テナントには多くの店舗が入り、いわゆるデパートのような活気をみせていた。
その夜は、当時としては異例のTV番組『24時間テレビ』の第一回放送日。この放送会館前にも募金会場が設けられており、夏の夜とは言え福井のような田舎としては 何時にない多くの人で賑わっていた。
2人の男子高校生・・・一人はそのマシン赤いZ400FXのオーナー、後ろでしがみついている もう一人は彼の幼なじみ。
「しがみつく」?・・・後ろの彼は自動二輪の免許を持っておらず、それどころか原付であっても満足に倒せない男。そう、直線はともかくマシンを倒されると実は非常に怖いのである(そのくせ低速のジグザグ運転は好きな方なのだ)。
さて このマシンの排気管は、エンジンの真下あたりで左右2気筒ずつがパイプで連結されているのだが、このパイプは取り外されており、当然の事ながら排気ガスの殆んどはサイレンサーを通らずに大気中に放出されてしまう仕組みとなっていた。
「愛は地球を救う」・・・チャリティ、募金、福祉、恵まれない人に愛の手を・・・番組の主旨を上手に言い表したこのキャッチフレーズは名言といっても良いだろう。
そして本当にそれに共感し、わざわざ此処まで募金する為にやって来た人達が大勢いる。
しかし今の彼らには、そんな番組など「お涙頂戴・茶番」にしか過ぎない。
ぶわ~~ん!ぶぉんぶぉんぶぉん!ぼんっぼぉ~~~ぼんぼんぼん!!!!!
物凄い轟音をまき散らして彼らがやって来た。中央大通りを西から東へ、駅のロータリーでUターンしてまたもや放送会館前へ、西側の「大名町交差点」でUターンしてまた・・・を繰り返す。
この中央大通りは70年代初めにはサーキット族とギャラリーで賑わった場所である。
サーキット族・・・福井のこの場所が発祥の地であると聞いたが定かではない。
かつて大名町交差点ではサーキット族同士の死亡事故も起きている。
さて、警察が来る前にそろそろトンズラするのが得策のようだ。彼らは夜の闇に紛れて消えていった。
夏の夜のほんの数分のエクスタシー。はたして彼らの犯した罪は・・・。
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Posted at
2011/06/17 00:34:56