
80年代の前半、京都府の日本海側 久美浜湾に面した とある海水浴場付近。
真夏の夜 7~8時頃、民宿が立ち並ぶこの界隈は、夕食後に付近を散策する宿泊客と往来する車でごった返していた。
すぐ近くでは花火の音が響く・・・珍しくも無い夏の海岸の風景だ。
元は漁村であったと思われる この集落の狭い道を、'75~'76年式と思しき紺色のマーキュリー・クーガーがやって来た。
中には若い男4人・・・この混雑する海水浴場に「張り出し」掛けにやって来た風情だ。
(自分たちより偉いヤツはいない)
そう、これがその時の彼等の心境、怖いものなんて無いのだ。
強いて言えば、怖いのはK察とこのクーガーを貸してくれた兄貴だけ。
そこへ反対側から来たのは310サニー・・・日本の普通のおとうさんが好んで選ぶ目立たないセダンである。
しかし、くどいようだが民宿の並ぶこの道は狭い。普通車同士だとすり替えもまま成らない。
案の定、別方向から各々やって来た2台はここで止まってしまった。
310サニーはビビッてピクリとも動かない。当たり前だ、こんな時もし擦ったら 動いた方に責任が及ぶ。しかも相手は一目でガイシャと判る「巨大で派手」なクルマ(付け加えればGM流クラシックルネッサンスの波に呑まれたかの如きセンターグリルとオペラウィンドゥ付ハーフルーフ、それでいてフォード特有のファットなプレスを持ったパーソナルクーペだ=これがかつてのマスタングの兄弟車とは!?)、絶対に動かない方が得策だ。
(ジョ、ジョ~ッ) 注:何のチューンも施されていない、複雑な排気デバイスをまとったアメリカンV8の音
クーガーは何とかこの危機を脱しようと、Dレンジのまま僅かずつガスペダルをあおったものの、これ以上は進めない。
どうしたって左側にいる彼には、グローブボックスにさえ手が届かないほどの車幅の向こうに居る310サニーとの距離など掴めないのだ。
しばしの沈黙の後・・・
『はよ行かんかい、コラぁ!!!!!』
と、この手のチンピラにありがちな、変に黄色い大声が周囲に響いたのである。
このクーガーには絶対にキズ一つ付けてはダメなんだ!・・・兄貴に叱られるから。
どうやら、310サニーはビビりながらも、慎重にすり替えに成功した様だ。
おにぃさん達、相手がリンカーンだったらどうしたんだろうか?それでも啖呵を切ったのか?
一つ言えるのは、真の危険人物もサニーやカローラに乗っている可能性が充分あると言う事。
それでも
(ジョ、ジョ~ッ) と、一応はすり替えを試みた彼らが可愛いです。
Posted at 2011/06/11 00:29:28 | |
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