
話題のニューモデル、フォード・マスタングを池田英三氏がリポートしています。
記事抜粋・要約:
『アメリカの自動車業界が抱える大問題は1985年までに燃費を激減させる車種体系の確立である。だが、省エネルギーの法案で追われる大義名分の裏には、アメリカ本土に上陸し、品質・性能・経済性の上で高い支持を受けている西独、日本に対する防衛戦略が意図されている事は明白である。大食いで、品質も消耗品的に作られたアメリカ車の体質をどのように改良してしてゆくか、日本の自動車業界が排気対策の研究に追われている間に、アメリカ車の体質は見事に変わりつつある。』
『ニューカペラと近い時期にデビューしたのが印象的。その訳は、まったく異質のクルマを作りながら知名度の高いネーミングを取り入れたことである。』
『マスタングは、ポニーカーのブームに火をつけた張本人で手堅いカテゴリーを確立した。その後7リッターのパワーを与えられ、アメリカン・スポーツカーの代わりとなった。この点では1979のマスタングはその原点に戻ったように見える。』
『同時にデビューしたマーキュリー・カプリはフロントノーズとフェンダーの膨らみ、あとは飾りの差でしかない。発表で来日したフォード社デザイン担当重役 J・ナルテック氏の言によれば、《まずマスタングを先にデザインした。カプリのノーズ部分はフォード会長の鶴の一声で変化を付けざるを得なかった。》 との事で、最終段階までこの両車は似たもの同士だったようである。』
『ドアのウエストラインの低さはアメリカ車の雰囲気ではない。』
『インテリアは配色・トリムなどがまだ大陸的である。しかも、ダッシュボードの成型が継ぎ目で形状が違うような荒削りのところが気になった。今の国産車ではもうこのあたりの神経は行き届き、それだけに仕上げに定評がある。』
『アメリカ車として見た場合、いわゆるシートの感触が欧州化された。上下調節のついたものは、リクライニングのないハイバックシートでも推奨できるポジションが得られる。』
『国産車では主流となったストラット/4リンクを採用。それは3種用意され2.3Lには標準型が、その他はバネレート・ショックとも強化されスタビライザーが後輪にも付く。欧州車並にパワー・重量によって足回りのチューンが違うが、興味深いのは偏平率が82%であること。国産車が何でも70シリーズに傾いているのとは違っている。』
『バイアスを履く2.3Lはピッチング・ノーズダイブも意図して消されているが、直進性は路面によって乱される。コーナーでは予想以上に食いつきが良く、標準型サスとよくマッチしている。パワステが無くても駐車場で不満が出ない程度の操舵力であった。』
『5.0L版は重量が重く、相対的に乗り心地もよく感じられる。日本的なコーナリングでは決して軽快ではない。』
『現在輸入されるのは、直4 2.3L(マニュアル4速のみ)、V6 2.8L、V8 5.0L の3種。
HT2.3Lは197万円とアメリカ車最低価格、V6 2.8Lギア仕様は297.8万円、V8 5.0Lは317.8万円。試乗した5.0Lファストバック・ギアは327.8万円。来年輸入予定の2.3Lターボ仕様とコブラ(2.3Lターボと5.0Lがある)の価格は未定。』
『最も気になるのは200万円を割った2.3Lの性能だろう。車重は1175kgと軽く、2298ccは96x79.4mmと言うビッグ・ボアで得られ、その結果は圧縮比が9.0と高いにもかかわらず、驚くほどの低速トルクがある。出力としては78HP/4800rpm、14.4kgm/3200rpmだが、実感としてはそれ以上である。1、2速は国産2.0L4気筒クラスと似ているが、3速は急にトップに入った感じ さらに4速に入れるとODの感じになる。これは省燃費の目的で極端に高いファイナルを用いているからで100km/h巡航では2800rpmで静かに走れる。したがってこのクルマは3速+ODくらいに考えて走るのが適当であろう。』
Posted at 2011/09/24 11:10:56 | |
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