
198X年春。
俺は故郷を離れ学校を卒業し、大都市圏にある会社に就職 晴れて社会人1年生となった。
30近くの拠点が点在する中の一支店(N支店)に配属されたが、地方出身者はほぼ全員 社員寮に入って新生活が始まるのだ。
寮の隣にはA興業と言う広域指定の任意団体(三次or 四次?定かではない)事務所があった。
Scene 1:
・・・会社にも寮生活にも慣れた頃だったと思う、ある朝出勤しようと玄関を出た俺にA興業の社長が声をかけた。
『おう、1B11君!良い処に来たな。バッテリーが上がったんだが、コレどうすればいい?』
・・・見れば、事務所前に社長の前期型マーキュリー・モナーク・セダンがボンネットを開けて止まっている。
救援車がモナークの前に居たはずだが、それが何であったか既に記憶が無い・・・とにかく俺は社長の持つブースターケーブルをつないでエンジンを掛けてやった。
一件落着・・・その後、社長が新品のバッテリーに換えたかどうかは不明だ。
Scene 2:
夏の夜、俺たち新米寮生は先輩達にアイスクリームの注文を聞いて廻り、近所の食品店へ買出しに出るのが習慣だった。
近所の食品店・・・当時コンビニなるモノが出始めた頃で、ソレは現代のように全国津々浦々に浸透してはいなかったから、八百屋という表現が適切かも知れない。
そんな時、いつも事務所の窓を開けて 外を眺めている 50歳代と思しきスキンヘッドのA興業社員に
『いつものヤツ、買って来てくれ。』
と、千円札を渡されるのだ。
いつものヤツ・・・とはワンカップの清酒^^
(事務所詰め・・・いや勤務中(笑)の時に酒なんか飲んでイイんかな?)と毎回思いつつも、買って来て手渡すと
『はい、ありがと ありがと』
と言って受け取るのだ。
近所で大きなイベントがあった時、会場の満杯駐車場を締め出された何も知らない一般マイカーがA興業の前に駐車しようとしたのだが、例のスキンヘッドが
『おい、おいっ!!こらぁ!!!!!』
と、窓越しに恫喝し、気づいたそのマイカーが慌てて逃げて行ったのを見た事がある。
例えそれが一般道であっても、事務所前はモナーク・ギアの駐車スペースなのだ。
Scene 3:
12月のある日の事、俺がS30Zで出掛けようとしたら A興業社員の一人が
『ワックスを買いたいから、○○(近所のカー用品店)まで乗せて行ってくれ。』
と言うので、乗せて行った。
店であれこれ選んで(多分2~3千円分)、俺に
『お前も何か買えや。』
と言う・・・
『あ、俺はイイっすよ。持ってますし・・・』
と答えたが彼はレジでメモ紙に
『12月○日 A興業 ××』
と書き込んで店員に
『年末に払うから、取りに来てくれや。』
と平然と言ってのけたのだ。
(メモ紙かよ!)
俺はそう思ったが、その時は彼のお供だったし、彼に異論を唱えられる筈もないではないか。
店が集金に来たのかどうか、俺はいまだ知らない。
余談ながら
先輩がちょっとした交通事故を起こした。
相手がゴネ始めた・・・どうやら相手は品行方正で善良な一市民ではなさそうだった。
その時、誰も頼みもしないのに A興業の社員が出向き
『ウチとは近所付き合いさせてもらってる。』
の一言で事態は穏便に収まったのである。
Posted at 2012/06/15 01:19:15 | |
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