N-WGNのサスペンション部品、ダンパーアッパーマウント交換の間代車を借りたので乗り回してきました。
写真1

車両はN-BOX。
現在日本で一番売れている車両。
型式はJF5型。
エンジンはNA(自然吸気)で、軽乗用車なのにVTEC搭載。
N-BOXは以前から気になっていたけど、JF3型N-BOXはサスペンションがふわふわ過ぎて家族全員が酔う始末。
今回はモデルチェンジでサスペンションの設定が変わっている事で、期待して乗ってみました。
結果としては
・家族は酔わない
・走りに文句無し。ただきちんとしたタイヤで再評価したい。
・日本一売れているのは納得
という所。
今回はスタッドレスタイヤ装着なので、本来の性能からはずいぶん離れているのですが。
エンジンをかけて、まず感じるのが静かさ。
軽乗用車ってエンジンかけた瞬間から割と賑やかなんですけどね。
N-BOXはエンジンの音が遠くで聞こえる感じで、車内の静粛性は高い。
車外は割とノイズが聞こえるので、遮音が上手くいってるんだな。
走行中もかなり静かで、後部座席と普通に会話ができます。
高速道路走行中もノイズがうるさくて会話できないなんてことは無く、普通に会話できる静けさがあります。
アクセルを踏んで走り出すと、結構硬質な走り出しをします。
普通はトルコンが滑ってじわりと動力が伝わって前に進む感じがしますが、N-BOXはトルコンを極力滑らせずグッと加速する感じ。
スムーズと言うか硬質な感じで、近いのはスバルのリニアトロニックか。
低速域ではクラッチ直結みたいな硬質な動きをします。
また加速時にリアサスペンションがあまり沈み込まないのが特徴的。
リアサスペンションが沈まないので、より前に出る感じが強調されていますね。
トラクションが強く、まるで4WDに乗っているかのような出足を見せます。
直進安定性はあまり良くない。
恐らくこれはスタッドレスタイヤの影響が強いのだろうけど、随分左右方向のふらつきが大きいな。
具体的にはサスペンションが動いていないのに走行ラインが勝手にずれていくので、高い確率でタイヤの剛性および直進安定性が低いものと推測されます。
特に高速道路走行時は常に左右にラインがずれていくので、安定した走りは少し難しい。
更に高速道路では車線維持支援システム(LKAS)が非常に悪い動きをし、そのために常に動きが安定しなかったのもあるかな。
まっすぐ走らせるために存在する車線維持支援システムだけど、そもそもの直進安定性が低い車両もしくはタイヤではより直進安定性の低さが助長されるンですよ。
きちんと車両性能が高い状態を維持しないと、システム非搭載車より車体挙動が安定しないんだな。
残念ながらシステムキャンセル方法を知らないままだったので、高速道路では常にふらついたままでした。
あるいはステアリングアシストの速度が早過ぎるか、アシスト量が大き過ぎるな。
旋回性能はワンボックス形状から想像できる通り、俊敏なものではないですね。
ただし挙動が非常に素直で、特にリアサスペンションの剛性が高い事を強く感じる仕上がり。
リアタイヤを軸に旋回してゆくイメージで、リアはただ踏ん張っているのではなく最大限グリップを発揮させようとアクティブに動いている感じ。
とにかくリアの剛性が高く車体挙動が安定しているので、高負荷旋回時にも安心してアクセル踏んで行けますね。
フロント駆動の2WDで一番怖いのはリアタイヤがいきなりグリップを失う事なので、このリアタイヤのグリップは非常に安心感が強い。
ホンダって昔からFFスポーツ作っているから、こういうリアタイヤをただ踏ん張らせるではなくアクティブに使う方法が凄く上手いんですね。
スポーティに走るのは無理だけど、限界が高く走行安定性は高いので旋回に不満は無い。
きちんと荷重をかけてやると、フロントもリアもかなりの仕事をします。
あとブレーキが効く。
市販乗用車全般に言える事ですが、日本車はとにかくブレーキをケチりたがるんですよ。
スポーツカーのGR86でさえ、オプションの高制動型ブレーキパッドを入れても満足できる制動力は出ない。
旧形式のN-ONEもそうでしたが、ホンダでさえ例外ではありません。
コントロール性が低く、制動能力の低いブレーキを平気で採用する。
はずだったのですが。
N-BOXのブレーキはきちんとフィーリングがかっちりしており、なおかつ制動力もそこそこ高い。
そしてコントロールできる。
踏み込み量ではなく踏み込む力でコントロールするので、非常に扱いやすい。
コントロールできるのは非常に大きいですね。
これだけで制動時の安心感がまるで違う。
搭載されるS07Bエンジンは私の愛車N-WGNに搭載されているS07Aエンジンの改良型となりますが、NAの660ccなので当然パワーは無いです。
ただS07Aエンジンと違い高回転での伸びが素晴らしく良くなっています。
上の回転になるとエンジン音が変わっていき、レブリミットまできちんと伸びる。
ホンダらしい高回転型エンジンで、レブリミットに近付くにつれ変わっていくエンジン音のおかげで回すのがとても楽しい。
回れ回れブン回れ。
どうせ速度が伸びないから思う存分ブン回れ。
またホンダNAエンジンらしい鋭いエンジンレスポンスは健在。
カローラの重ったるい1NZエンジンと比べるとスポーツユニットみたいな鋭さ。
ただエンジンが回るだけではなく鋭いレスポンスのお陰で旋回時の姿勢制御などとてもしやすく、限界が非常に低いスタッドレスタイヤでも限界を探りながら曲がれます。
速くは無いけれど、ワンボックスボディだけど、走るのが楽しい。
これはマニュアルミッションもしくはマニュアルモードが欲しくなるエンジンですね。
えっ、グレードによってはマニュアルモードあるの?
あとドライバーに最大限のストレスを与えるために搭載されているエンジンのアイドリングストップは例外なく邪魔。
何で一時停止する度にエンジンが止まるのか意味が分からない。
アイドリングストップはハイブリッド車以外全撤廃して欲しい。
先代N-BOXと比較してサスペンションが非常にしっかりしているため、家族が酔う事はありませんでした。
これならある程度の長距離もこなせるかな。
後部座席と普通に会話できる静粛性。
ボディとサスペンションの剛性を確かに感じる乗り心地。
ドライバーが運転していて楽しいと感じる運転空間。
ファミリーカーとして、大変に優秀と思います。
N-BOXは日本一売れている乗用車ですが、そこにはワンボックスボディだから、軽乗用車だからという言い訳は無く、きちんとクルマとしてまともに走るクルマを作ろうという心意気が感じられました。
きちんと大人四人が快適に乗れ、走りもかなり良い。
タイヤさえマトモな銘柄はいていれば高速道路の長距離移動もこなせそうです。
走行性能に劣るスタッドレスタイヤではなく、せめて純正サマータイヤで評価したいと思いましたね。
N-BOXのようないわゆるプレミアムコンパクトカーが売れている背景には、普通乗用車が大きくなりすぎて乗れるクルマが無い方の退避所という性格があると私は分析しています。
そんな普通乗用車に慣れている方が乗り換えても、これなら不満は出ないと思いますね。