
試乗した機体はGP3型インプレッサスポーツ。
1.6L、AWD、リニアトロニックのモデル。
タイヤはヨコハマタイヤのデシベル 205/55R16を装着。
路面は終始ウェット。
気温は20度近辺。
評価
エンジン 70点
トランスミッション 30点
シャシー 100点
ブレーキ 15点
総合評価 60点
インテリア
シートに座り込んだ時点で違和感が。
「ふわっ」と柔らかいシート。
インプレッサと言うと固いシートを採用してきたのに、ここにきて方向転換?
乗っていて違和感を感じるし、体のホールド性に不満を感じるのですが…。
不満ならばSTIのスポーツシートを買えという事か。
インテリアは以上。
エンジン
今回のインプレッサスポーツはマイナーチェンジ後の機体だけれど、明らかにエンジンのパワーが出ている。
全域でトルクが出ており、大変に走りやすい特性。
しかも今回はマニュアルモード付きなので、高回転を積極的に使えるのもパワーがあるように感じる要因の一つか。
しかしそれ以上に速く感じるのは、エンジン自体が良くなっているからか。
表に出てこない何らかのマイナーチェンジが行われたのか?
スバルはマイナーチェンジでエンジンが別物になったりとフルモデルチェンジ以上のことを何事もないかのようにやってくるので、その可能性は否定できない。
とにかく、エンジンが良くなっている。
ただし高回転まで一気に回るタイプではなく、高回転まで回るけれど回転は渋い。
アタリが付いていないからかそういう特性のエンジンだからか。
前回は「1.5Lと大差ない」エンジンに感じていましたが、今回の1.6Lエンジンは明らかに1.5Lエンジンよりも、マイナーチェンジ前のFB16エンジンよりも良いです。
「NAインプレッサは加速が悪い」とはGHインプレッサになってから聞かれなくなってきましたが、FB16エンジンはマイナーチェンジを経てさらにパワーのあるユニットへと生まり、スポーツを名乗るだけのパワーは十分にあります。
毎度の事ながらアイドルストップは邪魔。
インプレッサスポーツハイブリッドは静止状態からモーターで加速し、その後エンジン始動と言うのでインプレッサスポーツハイブリッドならば不満はないのかもしれないけれど。
トランスミッション
ブレーキを離し、クリープ状態からアクセルを踏み込むとアクセルの踏み込みと同時に前に出る。
まるでマニュアルミッションのごときレスポンス。
でもCVTの制御は落ち着きがなく、先に回転を上げて加速するタイプだから直線を一定速度で巡行するのはとても苦手。
ちょっとだけ加速したいときにエンジンが「ウォン!」と回転を上げてしまうので、一定速度で走ることが難しいのです。
さじ加減と言ったものができないので、カーブを曲がるときは無用な緊張を強いられる事になってしまう。
インプレッサスポーツの持つコーナリングパフォーマンスが群を抜いて高いだけに、この煮詰めが甘すぎるCVT制御だけは最優先で何とかしてほしい。
エンジンのトルクだけで加速したい場面ってのは走っていて相当に多いわけだけど、それが難しいってどうなのよ?
走りの良さが売りのスバル車なのに、こんなCVTで「走りがいいね!」なんてとても言えない。
こんな制御で苦情が多いからマニュアルモードでお茶を濁そうとしているのでは無いのか?とまで勘ぐってしまう。
あるいはトヨタから「目に見えないところにお金かけてどーするの。車なんて走ればなんでも同じだよ」と突っ込みを入れられてCVT制御にお金が回せなかったか。
Dレンジの出来は、マニュアルモードがなかったらスバルに行って代車を交換してもらうレベルです。
シャシー
走っていて驚くのがボディ剛性の高さ。
とにかくボディが頑強で、走行中はタイヤのみが動いているような感覚。
荒れた路面を走っても、ボディのふらつきが少ないことでそれが分かる。
他車に比べて頑強なボディ剛性感を持つ私のアネシスも9万キロ走行でボディが緩んでいるのだろうけれど、それ以上に以前乗ったインプレッサスポーツよりもボディががっしりしていて確実に以前乗ったインプレッサスポーツよりも乗り心地が良くなっている。
ボディ剛性が高いから、コーナリング能力も高い。
残念な事にヨコハマタイヤ・デシベルはウェットインフォメーションが大変に希薄で怖いけれど、それでもコーナリング速度は速い。
前述の通り回転を先に上げるCVTのために少しでもスポーティに走行する際はマニュアルモード必須となるけれど。
スバルのAWDらしく、ハンドルを切った方向にぐいぐいと曲がっていく様はドライバーとして非常に安心できる。
剛性バランスも素晴らしく、こういったハッチバック車にありがちなフロント剛性重視ではなくてリア剛性も大変に高い。
だからコーナリング中の挙動も非常に素直で、ウェット路面なのにリアがブレイクする気配すら見えない。
マニュアルモードならかなり楽しめます。
先代GHインプレッサと比較しても、ボディの仕上がりは非常に良いです。
国産で同クラス、同価格帯でこれ以上のボディを見つけるのは困難でしょう。
ブレーキ
シャシーとエンジンの出来は非常に良く、CVTもマニュアルモードを選べばそれなりに走るというのに、すべての楽しさを無に帰すのが全然効かないブレーキ。
ペダルが折れるんじゃないかと思うほど踏み込んで、ようやく欲しい制動力の7割くらいしか発揮しない。
16インチタイヤがウェット路面でようやくロックするほどの貧弱なブレーキは、昔からNAインプレッサで指摘されてきた弱点。
コントロール性は良いのに、絶対性能が全然足りていません。
しかもただでさえ効かないのにリアブレーキがドラムブレーキからディスクブレーキになっている。
これだけ効かないブレーキなのに、せめてリアブレーキはドラムブレーキにならなかったのか?
エンジンとシャシーにこれだけカネをかけているのだから、ブレーキぐらい良いものを積んでほしい。
私のGEインプレッサはフロントブレーキを16インチブレーキに換装してようやく十分とは言えないけれどマトモな制動力を得ていますので、インプレッサの重量ならば最低限15インチくらいのブレーキは必須でしょう。
とにかくブレーキが効かず、ちょっとでも強い制動力が欲しいのならばパドルシフトでシフトダウンすること必須。
それでもガックンガックン効くブレーキと違ってコントロールが効くので、まだマシといったレベルですが…。
今回のマイナーチェンジで1.6Lモデルにもアイサイトが装着されるそうですが、アイサイト装着の前に強力なブレーキを装着するのが先決じゃないのかなぁ…。
総合評価
良くも悪くもスバルの作った感じのクルマです。
昨今スポーティなクルマがいろいろと出てきていますが、スポーツドライビングの入門用には最適かと。
とにかく高いボディ剛性と扱いやすいエンジンの組み合わせは走っていても全然怖くないし、短距離も長距離も余裕でこなします。
けれど何て言うのかな、CVTの制御は過敏すぎて使いにくい。
過剰反応がスポーティだとすれば確かにその方向なのでしょうが、スバルが大事にしてきた疲れにくいクルマとは全く違う方向を向いてしまっています。
エンジン、シャシー共に正常進化しているというのに、CVTだけが残念。
もし買ったら、まずはウェットでインフォメーションが消えるタイヤをミシュランかピレリに交換して、ブレーキをGP7などの強力なものに換装すると幸せになれるかと。
そしてCVTがとにかく癖のある特性なので、買う前に試乗することを強くお勧めします。
私が買うならマニュアルミッションでしょう。