
気が付けば今年納車されたグレイスも走行距離が約2万7千キロになりました。
納車時1万7千キロでしたので、約1万キロを走行した事になります。
ここで現時点でのグレイスのインプレッションでも書こうかなと。
一言で言うと、癖が強いけど良いクルマ。
普通に走るには何も考えずボケーっと乗れるけど、速く走ろうと思うと何となく乗れて何となく速いクルマじゃない。
ハイブリッドシステムではなく、むしろ7速DCTの癖が強い。
いや7速DCTもハイブリッドシステムの一つだから結局ハイブリッドシステムに癖があるのかな。
でも上手く乗れると非常に走りが気持ち良いし、大変に快適。
まず内装だけど、ホンダと言えばミニバンのホンダらしくあちこちに細かい収納が有る…と期待していたのに、物置は小さいコンソールボックスとシフトレバー前にあるふたつのドリンクホルダー、サイドブレーキレバー横の謎の小さいスペースだけ。
せめて格納式ドリンクホルダーくらい欲しかった。
でもUSBポートが標準で付いてくるからハイドラとナビアプリの同時起動ができるし、後部座席のシガーソケットも有るので長距離ドライブは快適に使える。
あと後部座席は私が頭を打つ。
私が後部座席に乗る時はフリード使うから良いと割り切ったけど、大人4人(5人)が快適に乗れないセダンは非常に評価が低くなってしまう。
もちろんインプレッサは後部座席に私が座っても頭を打つ事なんて無かった。
内装は以上。
肝心の走りについて。
グレイスはインプレッサと比べると速度感に乏しいクルマだから、気がつくと結構速度が乗っていたりする。
これは空力の良さと静粛性の高さ、乗り心地のソフトさに起因するものかな。
だから加速感が乏しく感じるのだけれど、実は信号発進などは後続車を引き離していることが多いので実際は速かったりする。
さらにスピードを感じにくいからドライバーも同乗者も疲労少なく走れる。
高速道路を長距離ダラダラ走っている時には、特に快適性を実感する。
サスペンションの初期当たりはソフトなんだけど、路面からの入力が大きくなるとギュっと踏ん張るので全然怖くない。
そしてとにかく安定しているのでアクセル踏める。
サーキットのコーナー出口では何の不安もなく、テールが滑る気配すら無くガンガン踏んで行けた。
とにかくフロントは逃げないし、リアもガッチリ路面に張り付く。
しかもハンドリングの中間からでもグイグイ曲がるようになっています。
乗り心地も大変に良く、フィットハイブリッドと比べると路面の凹凸などを柔らかくいなしているのが分かる。
セダンだから気を使っているとのことだけど、フィットハイブリッドとの大きな差を感じられます。
良い意味で路面状況に鈍感。
だから公道を走る限りはサスペンション変更する意味は無いかな。
特に高速走行時の直進安定性と車体安定性は素晴らしいの一言。
ロングホイールベースによる直進安定性もあってホンダらしくビシっと真っ直ぐ走るので、気がつくと速度が出ているからオートクルーズで走るのが懸命かな。
当初はインプレッサには遠く及ばないと思っていたけれど、今ではインプレッサの少し落ちくらいと感じるほどにクルマのレベルは高いです。
パワーは過不足ない丁度良い感じで、体感的には2Lの実用ユニットみたい。
アイドリング回転数からほぼ最大トルクを発生するし、5,000rpm付近までトルクが落ち込まない感じ。
ハイブリッドカーなのに何故か高回転型特性(最大トルク5,000rpm、最大出力6,000rpm)のエンジンを搭載していて、高回転でもパワーが鈍る事がないのでブン回すとかなり速い。
最近は最大トルク発生が5,000rpmなんて極端な特性のエンジンって中々見ません。
更にDCTは4速までクロスしているため、DCTの超高速シフトチェンジと合わさって加速が途切れない。
またクラッチ式オートマなのでCVTのような高回転域でのパワー抜け感は無い。
加速が途切れない上にフルフラットアンダーフロアなど空力特性が非常に良いため、超高速域でもグイグイ加速します。
実はグレイスで初めて電子制御VSA(Vehicle Stability Assist:車両挙動安定化制御システム)付きのクルマに乗った。
あ、いや、RX-8にもDSCが付いていたっけ。
一般的な道路では、例えば峠道を楽しんでいたりするとアンダーステアが強くなる。
これは恐らく速度を落とせという意味でアンダーステア特性を作る事により速度超過感を出そうとしているんだろう。
また一般的な走行ではアクセルを踏み込んだ際のレスポンスが緩慢になる。
他の方の試乗記でも老人向けレスポンスなどと言われるレベルで、ホンダらしいキビキビ感は一切無い。
おそらくホイールスピンを予測して動作しているのだろうけれど、あまりに緩慢。
しかしインプレッサでやっていたみたいにトルクで走るようにすると気にならなくなる。
グレイスはアイドリング回転数でほぼ最大トルクが出ているので、トルクでゆったり走るように心掛けると気にならなくなる。
だからドン!と発進させたい時にはVSAをOFFにしたほうが良いかもしれないが、安全装置をOFFにする危険性を考えると運転方法を変えたほうが良い。
ただし雪道ではVSCが誤作動して動かなくなったりするので、雪道などイレギュラーな路面ではVSAをOFFにしたほうが良い。
操作に関しては基本的にフィットセダンだから何も考えずボケーっと運転しても普通に走りますが、上手く走るとなると繊細な操作を求められます。
アクセル、ブレーキ、ステアリングのどれも繊細に操作しないといけない。
そして教科書的な走りを求められます。
つまりしっかり減速してターンイン、何も起きないと確信できるタイミングでアクセルを踏み込む。
まるでサーキットを走るかのように教科書的な走りをすると、大変に速く舞えます。
インプレッサはドライバーの思い通りに動くマシンだったけど、グレイスはマシンの特性通りに操作するマシンって感じかな。
噂に聞くホンダのドライバビリティとほぼ相違ない感じです。
気になるというか不満点は以下の三点。
プリウスと同じHシフトパターンは本当に意味不明。
しかもバックが前進方向にレバー操作するので、マニュアルミッション感覚で車庫入れしようとすると前後逆移動する事があって非常に焦る。
オートマならば上からPRNDと並んでいる一直線シフトパターンにして欲しい。
更に言うと、Dレンジの横にシフトレバーを移動してマニュアル操作でシフアップ、シフトダウンできるともっと良い。
最低なのがパドルシフト。
率直に言って付いている意味が無い。
Sモードならば比較的操作を受け付けるけれど、通常モードではシフトインジケーターが点滅するだけでほとんど操作を受け付けない。
機能しない機械ならば装備しないほうが良いし、シフト操作が効かない場合は警報音など視覚以外の方法でシフトチェンジ失敗を教えてほしい。
操作が効かないシフト操作は危険なので、Sモード以外では一切使う事はない。
せっかくエンジンブレーキなどに活用しようと楽しみにしていたのに、非常にがっかりした。
もっと言うと、シフトインジケーターは常時シフトポジションを表示して欲しい。
そしてシートが安物過ぎる。
サイズは小さいし、左右ホールドも乏しいし、特にショルダーのサポート部が無いのは手抜きとしか思えない。
しかも私の体に合っておらず、腰痛が酷い。
今時は軽乗用車のシートでももっと良いの積んでる。
クルマとしての性能が大変に良いのに、シートをケチって安物を採用しているので交換必須…なのだけれど、社外シートレールは出ていない。
正直シートに搭載されているサイドエアバッグなんていらないから、その分マトモなシートを装着して欲しかった。
純正シートがダメなら社外シートを入れれば良いと考えていたので、社外シート、シートレール使用不可能は大きな不満。
グレイスはスポーツセダン?と言われると、スポーツセダンではないと感じる。
確かに走りは良いけれど、五感に訴えるものは少ない。
速さ感も少ないし、官能的な走りを楽しむモデルじゃない。
もちろんサスセッティングも良いしパワーも有るしボディ剛性も有るから走ると速いけど、事務的な走りに徹するマシンって感じ。
インプレッサのように走っていて気分が高揚することは無いけれど、気がつくとギュンギュン走っていたりする。
という事で、グレイスは快適にツーリングするのが向いているクルマかな。
サスペンションの限界は恐ろしく高いし、シャシー性能も高いから、気兼ねなく元気に走るには最適なクルマと言える。
ドライバビリティの所にも書いたけど、ドライバーの思い通りに動くクルマではなくマシンの特性通りに動かすクルマ。
好みはハッキリ別れると思う。