
薪ストーブの選択基準は以下の3点でした。
①煙突からの煙や匂いが少ない事
②薪の使用量が少ない事
③メンテナンス性が良い事
キャタリティックコンバスター(触媒)搭載機が①と②に有利であると考え、触媒機の中から選ぶことにしました。
触媒機は「バーモントキャスティングス」と「ダッチウエスト」の2社からしか販売されておらず、
必然的にこの2社のどちらかにするべく検討していたのが前回のブログです。
検討を続けてネットを徘徊していたら、見たこともない薪ストーブに出会いました。
その名は「AGNI(アグニ)」
なんと岐阜市の岡本という会社が製造販売している純国産の薪ストーブでした。
このアグニはクリーンバーンと触媒のハイブリッドタイプ。
針葉樹で焚くことを目的に開発されたようです。
針葉樹は、広葉樹に比べると成長が早いので木としての密度は低く、薪ストーブで焚くと早く燃え尽きます。また、寒さに対応するために油分を多く含み、高温燃焼になりやすく薪ストーブ本体や煙突を傷めやすいと言われています。高温燃焼を抑えるためには空気量を抑えればよいのですが、あまり抑えると不完全燃焼をおこします。従って、薪ストーブでの使用においては焚きつけ時にのみ使われることが多いようです。
アグニは、針葉樹燃焼時に空気量を絞っても触媒で完全燃焼させようというシステムです。
ストーブトップ(天板)にはクッキンググリドルが3つも配置されており、デザインもオクムラ好み♪
これはもう決まりかな!?なんて感じで、実物を見に行ってきました。
結果は・・・・残念。
まだ完成品では無いとのこと。
実際に薪を焚いていましたが、サイドロ-ディング(横の薪入れ用扉)を開けるときは大丈夫なのですが、正面扉を開けると灰が手前に舞います。これから改良されいていくとのことでしたが、改良品を待っている時間はありません。2月までには決めないといけないので。
落胆を隠せない状態でしたが、触媒機を検討していることを理由付きで薪ストーブ屋さんに説明したところ、触媒機はお勧めできないとの意見を頂いたので、以下に要点を記載します。
そもそも触媒機の誕生は、1988年にアメリカ環境保護局(EPA)が薪ストーブに厳しい排ガス規制をかけたことに始まります。これをクリアできた触媒機だけが生き残ったのですが、のちに規制緩和されて基準がゆるくなり、クリーンバーン機が普及しました。
ちなみに現在の排ガス規制値は、触媒機4.1g/h それ以外は7.5g/h です。
(アメリカお得意のダブルスタンダード)
触媒の技術自体は25年以上も前のものであり、改良点は触媒の材質がセラミックスからステンレスに変更されたぐらいしか無く、その触媒も高温に曝されているので(800度程度)徐々に崩壊して能力は右肩下がり。針葉樹ばかり焚くと1000度を超えることもあり、触媒の崩壊は顕著である。
クリーンバーン機は改良を重ねており、触媒機と比べても遜色ない性能を持ったものも多い。
触媒機やリーンバーン機は炉の内部構造がクリーンバーン機に比べると複雑であり、炉内の部品点数も多い。炉内の温度が800度を超える薪ストーブにとっては炉内の全ての部品が消耗品である。焚き方次第ではあるが、アンコール・エヴァーバーン(リーンバーン方式)を3シーズン使用していたユーザーが炉内の部品を全て交換しなくてはならなくなったが、その見積もりを見て修理を断念しクリーンバーンに買い替えたぐらいコストが掛かるらしい。
メンテナンス費用については心配事の一つだったので、やっぱり・・・という感じ。
2~3年に1回の触媒交換で25,000円程度はみていましたが、薪の使用料を節約できるのでその差額でお釣りが来る計算だったのですが、炉の内部部品を全部交換となると薪代の差額だけでは足が出るのは明白。
ここでちょっと休憩して、薪の使用量を計算してみます。
薪価格は1立米で送料も込みで考えると26,000円ぐらい。
(楢以外の広葉樹であればもう2,000円ぐらい安いようです)
1立米を65束とすると1束は400円。
平日(月~金)は夜間のみ焚くとして、1日1束として合計5束(2,000円)
土日は1日中焚くとして、1日3束として合計6束(2,400円)
1週間で11束(4,400円)
1ヶ月を4週とすれば44束(17,600円)
11月後半から4月前半まで焚くと考えて5ヶ月で220束。
1シーズンで薪代として88,000円かかる計算になります。
現在はエアコンを使用していますが、月に4,000円程度。
1シーズンで20,000円。
エアコンを2台にしても40,000円なので薪ストーブは2倍コストが高いです。
薪ストーブが趣味の暖房だと改めて実感しました。
話しを戻して、触媒機で薪使用量が15%削減できたとして、1シーズンで13,200円の節約。
3シーズンで39,600円、触媒が25,000円なので差額は14,600円。
メンテナンス費用を3シーズンで14,600円以下に抑えることは、どうやら難しそうです。
ちなみに薪を3.3立米保管する薪棚も必要。
薪は45cmの長さの物を使うとして、積み上げれる高さは1.3mまで。
薪同士の隙間も考えると長さは6mは必要になる計算です。
触媒機は薪の消費量が抑えられるのは事実ですが、
メンテナンス費用がかさむのでトータルではコスト高であると結論付けました。
次に最大の特徴である排煙のクリーン化について。
乾燥した薪を使い、巡航運転している状態では触媒機に軍配があがります。
排気煙量は、ダッチウエストのFA225が1.1g/h
バーモントキャスティングスのアンコールが1.6g/h
クリーンバーン機は機種やメーカーによって幅広く2.5~6g/h
EPAの触媒機への規制値が4.1g/h なので、これより低い値であれば
実際の使用においては差はほとんどないとのこと。
触媒機も焚き付け時は触媒が働かないため、このような数値にはなりません。
焚きっぱなしにすれば触媒の性能を十二分に発揮できますが、週末と平日夜間しか焚かないような使い方では、焚き付けの回数もその為に必要な時間も多くなり、排気煙量も比例して増えます。
薪ストーブの性能よりも重要な事は、十分に乾燥した薪を使うこと。
18ヶ月以上かけて乾燥させた含水量20%以下の薪を使用すれば、クリーンバーン機でも煤はほとんど出ない。逆に、十分に乾燥させていない薪を触媒機で焚けば、排気煙量は数十倍にも増加する。
煤の量は煙突から出る白い煙の量で判断でき、白い煙が見えなければ煤はほとんど出ていないと判断して良いようです。
以上のことから、クリーンバーン機でも排気煙量が4.1g/h以下(出来れば2.5~3g/h)であれば、
触媒機との排気煙量の差はほとんど無いであろうと結論付けられる。
『参考資料』
アメリカ環境保護庁(EPA)は、薪ストーブや暖炉をこの冬も利用する人たちに向けて、より効率的かつクリーンに薪を燃やすためのヒントを提案している。薪を燃やして発生する煙には、子どもや高齢者、肺疾患や喘息を抱える人たちに特に健康リスクのある微粒子汚染物質やガスが含まれるが、よく乾燥した薪をEPA認定薪ストーブで燃やすことで、こうした煙の排出を抑制できるという。具体的なヒントは以下のとおり。
1)未認定の旧式モデルをEPA認定の薪ストーブや暖炉用インサート(暖炉埋め込み式ストーブ)にグレードアップする。煙の量が約70%減少し熱効率も約50%良くなる。
2)色が黒っぽく木目に割れ目があり、叩くと中が空洞の音がする薪を使う。こうした薪は含水率20%以下に乾燥している。塗装や化学処理された木材は燃やさない。
3)年一回の点検・保守サービスを受ける。
4)開放型の暖炉は、ガス暖炉などに転換する。
以上が薪ストーブ屋さんで聞いたことを、オクムラなりに裏付け調査したものである。
≪今日の結論≫
触媒機はヤメて、クリーンバーンにしよう(苦笑)
薪ストーブ機種選定は、まだまだ続くのであった。。。