スバルは乗用車4WDの先駆者といって差し支えはないのですが、ご存知の方もいると思いますがフルタイム4WDを出すのが結構遅かったのです。1972年にレオーネバンの4WDを出してから、1986年春にレオーネクーペRX/Ⅱを発表するまでずっとパートタイム4WDのラインナップだけであり、1980年発表のアウディクアトロは言うまでもなく日本でも、マツダファミリアに約半年ほど遅れてようやくフルタイム4WDがデビューしたのです。(ちなみにこの時、レオーネのフルタイム4WDはマニュアルトランスミッションのみです)
しかし、実は4WD・オートマチックトランスミッションの方では1981年秋の段階でフルタイムと称して差し支えのないものが発表されていたのです。(この事もご存知の方多いと思いますが)ただ、この時のAT・4WDは、4WDのON、OFFスイッチがシフトレバー横に設けられていたのでフルタイムとは言ってなかったのですが・・。(下のカタログ写真は1983年秋のもの)
発表時からしばらくは、カタログではその事が書いてありませんが、他の書籍ではこのような記述があります。(鈴木五郎著、「4WD乗用車」、山海堂、1982年初版、158ページより抜粋)
トランスミッション後部に設けられた油圧多板クラッチにより、前後輪の回転差(これがあると、タイトコーナーブレーキング現象が起きる)を吸収することが出来たのです。センターデフはないけど、4WDに入れっぱなしでも、タイトコーナーブレーキング現象が起きずに走れたという訳です。家の3代目レオーネもこの4WD・ATのモデルでしたが、4駆に入れっぱなしで車庫入れや、住宅地の交差点をゆっくり曲がっても、同じく当時家にあったレックス4WD(マニュアルのパートタイム4駆)で同じ事をした時のようなギクシャク感がなかった記憶があります。(下の写真は1986年秋のレオーネ4WDATのカタログでの説明。常時4WDで走行できるとの記述が下の方にあります)
このタイトコーナーブレーキング現象ですが、経験したことのない方の為に少し説明しておくと、4駆にしたまま乾いた路面をゆっくり右左折したり、Uターンなんかをすると、ハンドルや車全体がぐっと重くなって、普通にアクセルを踏んでもなかなか車が進まず、マニュアル車だと少し回転を上げないとエンストするという状態に陥ります。しかもその時になって2駆に戻そうとしても無理なのです。駆動系にいかにも無理がかかっている感じがよくわかり、とても嫌な状態です。
その嫌な現象をなくしてしかもMTに比べイージードライブができるATに搭載したのですから、私個人の意見ですが、ON・OFFスイッチを設けず、ATのフルタイム4駆として発表すれば良かったのにと思うのです。1981年の段階でオートマのフルタイム4駆と宣伝すれば、世界初、だったかどうかわかりませんが、相当にインパクトがあったのではないかと。もし機会があれば富士重関係者にその辺の話を聞いてみたいです。ちなみに、ATでフルタイム4WDと富士重が言いだしたのは1987年にアルシオーネに6気筒が出た時からのようですね。
Posted at 2015/06/20 23:43:50 | |
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