新東名高速を「世界一のソーラーカー」が駆けた
東海大チーム 14日の開通前に走行実験
http://www.nikkei.com/tech/trend/article/g=96958A90889DE6E2E1E4E2E4EAE2E3E0E2E6E0E2E3E0E2E2E2E2E2E2;p=9694E3E7E3E0E0E2E2EBE0E2E3E2
高速道路に乗り入れたソーラーカーはまさに「水を得た魚」だった。音もなく走り出すと、時速60キロ、80キロ、そして100キロと速度を上げる。規制が厳しい日本の公道で「実力世界一」の走りをなかなか披露できなかった東海大学の「Tokai Challenger」。遮るもののない道で、富士山を従えての疾走はクルー、そして車にとっても留飲の下がる出来事だったに違いない。
富士山をバックに快走する(8日、新東名高速道路)
■日本初、高速道をソーラー車が走行
「日本で高速道を走るのは初めて。画期的なことです」。東海大チームを率いるソーラーカー研究の第一人者、木村英樹教授(47、電気電子工学)も感慨深そうだった。
4月14日に開通する新東名高速道路の一部、新富士―清水パーキング間(約17キロ)で走行実験が行われたのは8日。当日の午前は曇りがちで「ソーラー日和」とはいえなかった。しかも、この区間は最長4.5キロのトンネルを含め6つのトンネルがあり、半分くらいが日の当たらないコースだ。
道路を管理する中日本高速道路(NEXCO中日本)の関係者が見守るなか、Tokai Challengerは苦もなく4往復した。しかも時速60キロ走行では発電分を使い切らず、蓄電に回すという余裕すらみせたのだった。
むしろ試されたのは道路の方。勾配やカーブを極力減らし、燃費のいいエコ道路として造られた新東名の性能テストにソーラーカーが胸を貸した、という面があった。
開通前の新東名を疾走するソーラーカー
■「エコ道路」の性能を試す
詳しい解析はこれからだが、発電量と消費量を逐一モニターチェックしているソーラーカーはこの手の実験にうってつけなのだ。
ソーラーカーと初めて対面する新東名の関係者からは、異形のフォルムについて「SFの世界だね」「空飛ぶじゅうたんみたい」というものから「こりゃ、板だ」とのあられもない感想まで漏れた。確かに「戸板に車輪をつけたよう」といえばいえなくもない。しかし一度走り出すと、静かで滑らかで機能美に満ちたパフォーマンスに、だれもが魅せられていった。
東海大チームは世界最高峰といわれるオーストラリア大陸の縦断レース(隔年開催)で2009年、11年と連覇している。ダーウィンからアデレードまでの3000キロのコースを11年は平均時速91.5キロで駆け抜け、オランダのデルフト工科大や米ミシガン大などの強豪を破った。
オーストラリアの赤茶けた大地を疾走する=東海大学提供
連覇の値打ちはレギュレーションの大改変をものともしなかったところにある。09年大会は宇宙船などに採用されている高性能の化合物太陽電池が使えたが、11年大会ではより汎用品に近いシリコン太陽電池に、事実上限定された。
大会に参加する各国の関係者は地球上のすべての車をソーラーカーに、という共通の夢を抱いている。そのためには、より手に入りやすい汎用品の素材で作れるようにすることが不可欠で、大会を重ねるに従ってレギュレーションを厳しくし、技術革新を促している。こうして設定された新たなハードルを越えて、タイトルを守った東海大は押しも押されもせぬ世界王者になったといっていいだろう。
■日本の先端技術の粋を集めた車
勝因は日本の総合力。パナソニックの最新鋭太陽電池に、車体を極限まで軽くできる東レの炭素繊維、ヤマハ発動機の空力解析のノウハウなど、Tokai Challengerは先端技術の結晶といえる。国産でないのはミシュランのタイヤぐらいだ。
試験走行を指揮する東海大・木村英樹教授(右、8日、清水パーキング)
「板」のようなソーラーパネルも、子細にみると丸みを帯びた3次元構造になっている。発電だけを考えると、米スタンフォード大などが採用するフラットな構造が一番だが、強度や空力性能に難があるという。その点、Tokai Challengerのものは満遍なく光をつかまえながら、空気抵抗を減らしつつ、強度も保てる形状になっている。
発電パネルをこまかなブロックに分け、独立させているのもミソだ。複数の電池を並べたときに「一番出力の弱いところに右ならえしてしまう」という電池の弱点が出ないようにし、日の当たり具合のバラツキによる影響を抑えている。
「日本にはまだまだ誇れる技術があります。それがこの車に詰まっているのです」と木村教授。昨今の日本には珍しく、勇気がわいてくる話ではないか。
1987年の第一回大会を制した米ゼネラル・モーターズ(GM)の車の平均速度は時速67キロだった。以来四半世紀。ソーラーカーはより厳しい条件をクリアしたうえで、平均時速90キロ超は当たり前、1日の走行距離も700キロ以上という驚くべきレベルに達している。
こうなると実用化の見通しも聞いてみたくなる。
優雅な走りを披露する Tokai Challenger(8日、新東名高速道路)
「レース用は1人乗りですが、実用化しようと思えば、2人は乗れないと困るでしょうね。大丈夫です。きつきつの設計にすれば人間2人を乗せても1日400キロは走れます。これじゃ狭すぎるとなって、ゆったり座れる設計にしても1日300キロは走れるはずです」(木村教授)。
ソーラーカーが街を行き交う日はまだ先かもしれないが、開発の過程で培われた技術はすでに実用の技として生かされている。
■ソーラー技術で被災地貢献も
東日本大震災の被災地に飛んだ木村教授らは宮城県石巻市と岩手県大船渡市の2カ所で、公民館の建設をサポートした。
被災地の公民館建設にソーラー技術で貢献(岩手県大船渡市)
照明、パソコンはもちろん、冷暖房関係でも石油ファンヒーターくらいなら動かせるだけの電気が太陽光でまかなえる。一筋の太陽光も漏らすまいというこれまでの研究の成果だ。
ソーラーカーの電力消費は時速90キロ走行時で、ヘアドライヤー1台分、時速100キロで大型の電子レンジ1台分にすぎないという。身の回りの家電製品を動かすだけのエネルギーで人や物を高速で運べるとは、よくよく考えるとすごい。
「家一軒の生活レベルの電力なら、その家で受ける太陽光だけでまかなえるようになりました。これからは電車などの乗り物まで太陽光で動かすための研究が進むでしょう」と木村教授は話す。
地球に外部から供給されるエネルギーは原則的に太陽光だけだから、その「収入」の範囲に「支出」が収まるようにするのが究極のエコ生活ということになる。地球そのものを巨大なソーラーカーに見立てることもできるだろう。
未来に向けて、道も変われば車も変わる。ところで人間様の暮らしぶりは変わるのでしょうか? 疾走するソーラーカーにそう問いかけられた気がした。
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こんなテスト走行は良いな。シムドライブやapevやZEVEXとかも呼べば良かったのに。
って、どう言う伝手で出来るようになったのかな。
その辺りの伝手の作り方ってのが一代限りってのが日本のビジネスでの問題かもね。
Posted at 2012/04/13 22:52:46 | |
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電気自動車 | 日記