中嶋一貴のダイレクトメッセージ
なぜクルマを運転する機会が減ったのだろう レーシングドライバー 中嶋一貴
http://www.nikkei.com/article/DGXZZO47630660U2A021C1000000/
有言実行でチャンピオンを決めた(鈴鹿サーキットのフォーミュラ・ニッポン最終戦で。トヨタ自動車提供)
皆さん、初めまして。
11月4日、鈴鹿サーキットのフォーミュラ・ニッポン最終戦で2012年チャンピオンをようやく決めることができました。F1世界選手権から国内レースに復帰した後の昨シーズンは2位に終わり、タイトルを必ず取ると有言実行でのぞんだ今年。数人が優勝争いに絡むとても厳しいシーズンでしたが、応援してくれた方々のおかげでタイトルを取ることができました。ありがとうございました。
さて、僕はレーシングドライバーとして2006年に欧州F3に参戦して以降、ドイツや英国を拠点に活動していました。F1にフル参戦した08年、09年も多くを車で移動しながら各サーキットを転戦していました。
車を運転するのはやはり好きです。車内は自分だけの空間で、一番落ち着ける場所だからです。欧州F3に参戦する前も、国内ではよく運転していました。レースを除く、公道での走行距離も3年で10万キロはいっていたと思います。
ところが、国内レース復帰で帰国して以降は、残念ながら車を運転することが減りました。例えば、東京から三重県の鈴鹿サーキットまでは400キロほどですが、最近は「新幹線通勤」が多いです。
日本で400キロ走るのは結構、長く感じますが、イギリスではさほど長く感じません。なぜか。欧州での運転環境に慣れてしまうと、日本でのドライブはフラストレーションがたまるのです。
職業柄、人より速く走れるように車に手を加えたり、山道を走るのが好きなのだろうと思われるかもしれませんが、僕は公道ではごく普通のドライバーです。
車は一般の道では新車で買った時が最高の状態だと思っていますから、車をいじるチューニングは基本的にしませんし、山道にドライブに行く趣味もありません。確かに、ライバルのレーシングドライバーのなかには車マニアのような人もいます。僕のような人間は、この世界では珍しいのかもしれません。
公道での一般の運転免許は、18歳の時、高校の卒業試験が終わってから、友人と教習所に通って取りました。最初に乗った車はトヨタのアルテッツァでした。今は、レクサスのCT200というハイブリッド車に乗っています。とても美しい車です。僕はサーキットの外で走る自分の車については明らかに「見た目重視」ですね。
プライベートには「レース」を持ち込みません。当たり前のことですが、普段の公道での運転はサーキット走行と明確に分けています。時々、友人と一緒にドライブすることはありますが、一人で走りに行くということはまずありません。もちろん、公道でスピードを出して練習することもしません。
普段はごく普通のドライバーだと自他共に認める僕のような人間でも運転していてストレスを感じるのは、なぜなのでしょう。
移動の自由を与えてくれる道具である車は、「動いてなんぼ」だと僕は思っています。だから、渋滞が嫌いです。できるだけ、止まらず、走っていたいのです。ところが、日本では様々な交通ルールや道路事情から、「無駄に止まる」ことが多いのではないでしょうか。
例えば、深夜は誰も通らないような道でも赤信号で止まらなければならない。制限速度が時速100キロの高速道路でも80キロで走らなければならないことがよくあります。これではドライブは楽しめません。楽しめないとなると、長距離の移動はどうしても楽な鉄道や飛行機になってしまいます。
欧州と日本のドライブ環境の違いで感じる最大の違いは、欧州では「車は走って動くもの」という前提で道路が作られていることです。信号は少なく、その代わりに町中には「ラウンドアバウト」があります。ラウンドアバウトは円の中心に近い車が先に行きたい方向に行く優先権を持つという仕組みなのですが、車が他にいなければ止まらなくてもいいので自由に動けます。運転手の主体性に任されているという状況には感動しました。
◆ auto tips 高性能でも走らない…日本のクルマ事情
日本で車がスイスイ走らない状況はデータで一目瞭然だ。1台あたりの年平均走行距離は1万5000キロ超の英国に対し、日本はわずか9896キロ(99年)。日本自動車工業会などによると、東京での平均時速は19キロでミュンヘンの35キロやロンドンの30キロに及ばない。ノロノロ運転の影響か、燃費の新車カタログ値に対する実燃費の比率は日本で64%どまり。91%の米国や94%のドイツと明暗が分かれる。日本ではせっかく車を買っても、モトを取りにくいことになる。安全に配慮しつつ、車を前に走らせるための規制緩和などを議論する余地がありそうだ。
信号という仕組みは、赤で止まり青で進むというシンプルなものですが、車も歩行者もあまり考えることなく、半ば機械的に赤で止まり、青で進むというのは危険なことだと思います。
日本は一時停止も多い。徐行すれば済むようなところを、一時停止させられてしまう。しかも、完全に止まっていないという理由で罰金を取られることさえあります。自分では安全運転をしていると思っていても、そういう細かいところで違反切符を切られてしまうと、運転する気も次第にうせてきます。
最高速度100キロでしか走れない日本の高速道路。一律の制限速度には事故が起きた場合の被害を減らすという利点があるのかもしれません。しかし、自分の責任で安全確保につとめながら、移動する自由を楽しむという車の本質を犠牲にしてはいないでしょうか。
日本では「乗用車がなかなか売れない」「若者のクルマ離れが深刻だ」とよく言われます。景気が悪いので、仕方がない部分もあるでしょう。でも、原因はそれだけなのでしょうか。
車が国内でもっと売れれば、景気も上向くはず。そのためには、世界有数の自動車産業を持つ国として、クルマを取り巻く環境やドライバーの意識がもっと成熟する必要があると思います。この連載では欧州での数年間の活動を経て感じることを、皆さんにお伝えしたいと思っています。
中嶋一貴氏(なかじま・かずき)
自動車レースの国内最高峰、全日本選手権フォーミュラ・ニッポンの2012年チャンピオン。カートを経て2002年、トヨタが運営するレーシングスクールを受講し奨学生に。03年、初参戦のフォーミュラ・トヨタで年間チャンピオン。06年からF3で欧州を転戦。07年ブラジルグランプリでF1世界選手権への昇格を果たした。08年、09年も名門、ウィリアムズのレギュラードライバーとして出走。11年から国内レースに復帰。今年は国内最高カテゴリーのフォーミュラ・ニッポンに加え、トヨタのハイブリッドレーシングカーで世界耐久選手権(WEC)に参戦した。父は日本人初のF1フル参戦ドライバー、中嶋悟氏。1985年1月11日生まれ、愛知県岡崎市出身。
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またぞろ欧州賛美、ラウンドアバウト・マンセーな意見かよぉ。
まあドライバーの個人としての意見はそうなるかも知れない。
でもそれが社会的に妥当かどうかは検証する必要があるよ。
つー訳でここがわかり易いので、まずは読む様に。
https://minkara.carview.co.jp/userid/906619/blog/27852916/
日本の道路と言うインフラに対して自動車はもう飽和してるのだから楽しく走れるはずもなし。
かなりの田舎に行って、こんな道誰も走らないよね、と言う感じの道に分け入っても、軽自動車がチンタラ走ってて糞詰まる、ってのが日本と言う国土。
それに交差点とラウンドアバウトでは必要な面積が5倍くらい違う。日本の街中で、その面積を道路に供出しろ、なんて事をやると、そりゃもう大騒ぎだな。欧州の街中の土地って昔は城主の持ち物だったから都市計画での立ち退かせもやり易かったんなろうけど、日本は昔から土地は私有物なんだからさ。
馬だって欧米じゃ当然だったのかも知れないけど、日本じゃ街中を走り回る事は無かったんだし。馬車文化の地域が自動車に移行するのと、徒歩文化の地域が自動車に移行するのでは、環境が違うのは当然だ。
そう言う風土に合った運転を身につけるってのが運転者に求められる事。んで、その運転が気持ち良いもんじゃないからって、インフラを責めるのは酷だろう。
そう思う人が運転しない事でインフラの余裕が生まれるんだから、運転が気持ち良くないと思う人はぜひ新幹線通勤して下さい、としか言い様が無いな。