
フォーミュラ1のレーサーの脳はどうなっているのでしょうか?あんな高速で素早い反応をしなければならないのですから脳は超人的機能を持つのでしょうか。 そんな疑問に一部答える論文がありますので紹介します。
論文の題名は: 「いかに熟練が脳の機能的構築を型づくるか: プロレーサーと素人の視空間処理および運動機能処理の核磁気共鳴機能画像による研究」
Bernardi G, et al: How skill expertise shapes the brain functional architecture: an fMRI study of visuo-spatial and motor processing in professional racing-car and naive drivers. PLoS One 2013; 8: e77764.
要約:
本研究は高度に訓練された個人における視空間情報処理および運動機能処理に資する脳の機能的構築を研究するため計画された。磁気共鳴機能画像法(fMRI)を用いて、11名のフォーミュラ・レーシング・ドライバーと11名の"素人"ボランティアに運動反応および視空間課題をそれぞれ1つ遂行させ、脳機能を測定した。両群において課題遂行における差のために脳活動に交絡的影響が及ぶのを避けるため、両群において同様の達成率となるよう、比較的困難性の低い課題を定めた。脳の機能的構築は脳領域反応、領域間相互作用、血中酸素濃度依存的(BOLD)シグナル変化について解析された。両群間に達成レベルの差はなかったが、"素人"ボランティアに比べて、プロドライバーの課題に関連する脳領域の利用容量はより少なく、より高い信号時間変化に反映される情報統合性は高かった。結論として、我々の結果は、素人の被験者に比べ、プロ・レーシングドライバーにおける視-運動機能情報処理に係る脳機能構築は、極度に要求度の高い条件下で訓練され、比較的単純で要求度の低い課題にかかわるときでも明白に示される"量的"および"質的"変化をきたす。これらの結果は、高度に訓練された個人においては"神経機能効率"が強化されることを支持する新しい証拠となる。
原人解説: 文を読んだだけでは、ものすごく難しくて理解できない人もおおいことでしょう。
イタリアにはFormula Medicine (フォーミュラ・メディシン)という医師団、トレーナーなどが最新の医学知識を応用してフォーミュラカーレーサーのトレーニングを行う会社があります。

この論文はその会社が協力して行われた研究です。
まず、フォーミュラメディスンでトレーニングを受けているフォーミュラカーレーサー11人と素人11人に下のような課題をやってもらいます。

左は運動機能処理。赤いシグナルが緑に変わったらボタンを押すという簡単なテスト。
右は視空間処理。赤い〇と青い〇のなかに同じ色のボールが入ったらボタンをおします。
両方とも簡単なテストで、レーサーと素人に成績の差はありませんでした。

しかし、脳の活性化状態をfMRIでみると素人は黒い部分が広い範囲で活性化しているのに、レーサーでは赤い範囲が活性化しているだけでした。つまり、レーサーは効率よく課題をこなしていたのです。

そしてレーサーでは赤い部分で示すところが素人よりもより強く活性化していました。すなわち、訓練の結果、効率よく、脳の活性化が無駄なく強くおこるのです。
運転のうまい人は無造作に運転しているように見えるといいますね。よく訓練を積めば、脳を効率よく大事なところだけを強く活性化させて、省エネで運転をやってのけるようになるということだと思います。サーキットを繰り返し回るプラクティスにて脳を訓練することがF1ドライバーとして栄冠を手にするためには必要なようです。
「F1入門」関連ページ:
Posted at 2017/01/17 05:11:31 | |
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