アッシュフリーのオイルがあればいいなといういいトスを頂きましたので、DPFはアッシュフリーでも堆積物が溜まる話をしておきたいと思います。
粘度指数向上剤はエンジンオイルに欠かせませんが、反面恐ろしい面もあります。今回の話は、皆さんが知らない粘度指数向上剤について考えて行きます。
粘度指数向上剤と聞いて感の良い方は、ははぁ~ん、ポリマーせん断の話しだと考えるとおもいますが、
ブッブーです
●ディーゼル用エンジンオイルは大体ですが
基油(78.5%)+粘度指数向上剤(8%)+各種添加剤(13.5%)
各種添加剤=清浄剤(5%)+分散剤(6%)+極圧剤(1.5%)+酸化防止剤(1%)
※1991年日本石油中央技術研究所井上清氏のレポートを編集
その他微量ながら泡立ち防止、防錆、流動点降下剤、FM剤などが配合される
現代のオイルではVHVIなど基油の性能が上がり、また、エンジンの進化によりエンジンオイルに求められる性能も格段に厳しくなっており、添加剤の役割が大きくなっています。
●粘度指数向上剤の配合量
基油はVHVIで5W-30くらいのDL-1もしくはC3(SP)をお使いの方が多いと思います。DL-1とかC3では硫酸灰分に目が行きがちですが、今までの検証でスカDエンジンにおいては、DPFを詰まらせる原因物質の主犯は未燃焼オイル由来成分で、本当のアッシュ量は意外に少なそうだという事が解かってきたと思います。
・普通W-30だと動粘度は10.5くらい。ではVHVIの動粘度は?世界の50%位を占めているといわれるSKルブリカンツ(韓国産VHVI)のYUBASEという製品がVHVIで、国内産のエンジンオイルのVHVIはほぼほぼこれかと思います。
・9種類の内、どれかを使ってVHVIオイルを作るのですが、YUBASEの4を使って動粘度10.5のDL-1を作るとすると、単純計算上、18.5%ほど粘度指数向上剤を使用する事となります。
※YUBASEの4:4.2cSt、粘度指数向上剤:600cStで計算
※粘度指数向上剤は色々ありますので、オイル屋さんが何を使っているのかは解りませんが、想像で600cStの物を使ったとしました。
★VHVI(81.5%)+粘度指数向上剤(18.5%)・・・これに他の添加剤が添加されている感じでしょうか。
※計算はTemperamentLube製の簡易版で、ワコーズのブレンディングチャートとは微妙な違いがありそうです。
●高温特性 ここからが大切な情報
VHVI基油は燃焼室等で高温にさらされますとほぼ蒸発するようですが、粘度指数向上剤は7%がドロっとした粘着状の炭化物となるとのことです。これが、非常に燃えにくい炭化物でEGRクーラーやDPF閉塞を招く主犯であり、DPF閉塞のアッシュは共犯くらいの位置づけでしょうか。
・ふぃでぃっくさんのインジェクターの軸が茶色の粘性の高いものが付着していたとあり、燃料由来成分説を唱えましたが、粘度指数向上剤かもしれませんね。高分子の炭化水素の成れの果てですので、もしこちらだとフューエルワンなどPEA系かもしれません。
・VHVI基油の高粘度オイルW40とかW50は、YUBASEの8J位だと期待しますが、いずれにせよ、W30より大量に粘度指数向上剤が使用され、その内7%程度がDPFやEGRクーラーにとって危険な物質であるとの認識は必要となります。
・実際のDPFにまわる量は微々たるもので、長い時間を掛けて蓄積されるものなので、即どうすべきかの対策は無く、当面オイルキャッチで対策するとか定期的にDPFクリーナーで強制燃焼を行うのが正攻法でしょう。
・シェルルブリカンツの話が傑作で「粘度指数向上剤の添加量の少ないオイルを選べ」とあるがユーザーにそれが解るすべはありません。
・こういう事を踏まえてオイルの錬金術でほぼノンポリマーオイルの実験をしましたがお金がかかりすぎるので残念ながら継続できません。研究としては成功、コスト的に成立しないという事です。
●PM中のDPFを閉塞させる要因物質
シェルルブリカンツの資料を見ますと、硫酸ミストとアッシュはPM時点では分かれていますがDPF内では反応してCaSO4となって行きます。
①CaSO4 :38%
②スス・カーボン:41%(普通のススと粘度指数向上剤の死骸)
③未燃焼潤滑油 :25%(通称黒マヨ)
④未燃焼燃料 : 7%
これは燃焼により発生したPMの成分で、DPFに入っていきますが、DPF再生を経て燃焼したり変質していきますので、DPFの堆積物とイコールにはなりませんので、くれぐれも誤解しないように。
・①はどうやっても燃えません。②のススは燃焼します。②のカーボンの一部は粘度指数向上剤の死骸で燃えません。
・③と④もDPF再生で蒸発したり一部が燃焼するでしょうが、黒マヨから水分や油分の軽質分が抜けてドンドン燃えにくい成分が残り、堆積して行くものと思われます。
・粘度指数向上剤の死骸と黒マヨの死骸は早い内ならDPFクリーナーの強制燃焼である程度燃焼できると考えております。
・DPF再生促進剤などがありますが、成分中のセリウムやFeは低温で酸化触媒の活性を行うだけで②のススしか燃えませんので大した意味は無く、DPF再生時にエンジンを3速2250rpmでDPF温度を650℃以上に上げる方がよろしいかと思います。あまり問題となったという情報はありませんがセリウムとFeは使用量に応じてDPF内に堆積するようです。
●まとめ
良く知られたアッシュ以外にもDPFに堆積していく物質は多いので、そこだけに注意をせず、全体を通してオイルの銘柄やオイル管理、オイルミスト対策が必要という事です。
・ちなみに低アッシュのDL-1は清浄剤濃度が低いのと塩基価が低いため、汚れやスラッジが溜まりやすく、また、エンジン保護性もオイルとしては低いのでロングドレンはできません。
■参考情報
スタンダード石油(YUBASE)
https://www.ssoh.jp/mobil/baseoil/group3/
シェル ルブリカンツ ジャパン(粘度指数向上剤)
https://shell-lubes.co.jp/lubes-grease/lubes-technology/tech-crt/1128/
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エンジンオイル | 日記
Posted at
2023/06/14 23:43:06