
ドラポジを一時的に変えたら車の挙動を掴めるきっかけになったお話。
マツダはドライビングポジションに拘った車作りをしていますが、運転手の体格は十人十色、万人に共通の完全正解ドラポジというのはおそらく存在せず、その人その人に合ったポジションを見つける必要があります。
マツダの取説や動画でドラポジの決め方を説明する際も「背もたれの角度は○度」のような説明はせず、「お腹の窮屈感が無くなるまでシートを倒す」というようなフワっとした説明になってます。
このお腹の窮屈感がなくなる角度というものが私はイマイチ分からず、やむなくマツダのドラポジ解説サイトの画像のこの方を参考に、背面シートの角度を60度くらいにしていましたが、
先日i-DMsメンバーの方より「シートを倒しすぎ」とのご指摘をいただき、自分のドラポジを見直してみる事にしました。
メンバーの方曰く「骨盤を立てて、背骨がまっすぐ上に伸び、その背骨に頭が楽に乗っかるように座るべし」とのこと。「歩く時、直立する時の姿勢がそのままドラポジになるのが最も楽でかつ繊細な操作を素早く出来る姿勢である。肩や首に力を入れずとも重さ5kgの頭を支えられるように。」と。
自動車評論家五味氏も「MX-30はシートを立てて座る車」と評しておられましたし、なるほど一理あると実践してみることにしました。
目測85度くらいまでシートを立てるその姿勢はかなり窮屈に感じます。慣れ親しんだスタイルから新たな領域に踏み込む事は得てしてそういうものと割り切り、暫くこのドラポジで練習してみることに。
そうして1,000kmほど走ってみましたが、やはり窮屈感は消えず、やむなくシートを少し倒し、現在は75度くらいの角度にしています。
しかしこのシートを立てるドラポジで練習している間に思わぬ副次効果を得る事ができました。サスの沈み込みを感じ取れるようになったのです。
恥ずかしい話、私は今までブレーキを踏むと車体前方が沈み込むという挙動を感じ取れずにいました。
ですが、しなやかな運転をするためのコツの一つが車の姿勢変化を操る事ではないかと、i-DMs諸先輩方の言動やブログから察しておりましたし、更にはあの國政久郎先生もこうおっしゃっております。
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少し慣れてくると、クルマのいわゆるピッチング――制動によって姿勢が前のめり方向へ変化していく様子を感じ取ることができるようになる。フロントタイヤがつぶれる感触。アームやリンクの関節部分のゴムブッシュがたわむ感触。フロントのスプリングやダンパーが縮む感触。
(中略)
制動Gの傾きをどれだけ立てればいいのか。それを決めるのが、制動中のクルマの姿勢変化。イメージとしては、クルマが前のめりになる速さよりも速く急激にならないよう制動Gを立ち上げる
民明書房刊「四輪の書」より
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四輪の書を読んで我が意を得たりとブレーキ踏み始めの姿勢変化を感じ取ろうと試みましたが、感じるのは前方への制動Gばかりで、フロントが沈む動きを掴むことは出来ませんでした。
それから数ヶ月、一向に姿勢変化を感じる事が出来ずにいましたが、シートを立てるドラポジがその壁を打ち壊してくれました。
シートを傾けて体を後ろに預けるこれまでのドラポジは、重力により上体に対し常に斜め後ろにGがかかっているような状態です。
ブレーキを踏むと体に前方向へのGがかかりますが、寝かせたシートに預けている何十キロの上体を浮かすほどのGではありません。
そのためGの発生は主に座面との接点やフットレストを踏ん張る足で感じていました。

対して垂直に座るドラポジは、体にかかる重力が真下に作用し、前後方向へのGはデフォルトゼロの状態です。そこにブレーキによる前方Gがかかると容易く体が前につんのめります。
もちろん体が前に倒れないように体幹に力を入れて姿勢を維持するわけですが、この「上体に前方Gがかかる」「それに体幹で抗う」という走りを繰り返しているうちに、サスの沈み込みを感じ取れるようになりました。

マツダの某イベントではこんな椅子での運転体験が催されたようですが、垂直シートはこれに近い経験ができるのではないでしょうか。
そしてこの沈み込みを感じ取ることが、しなやかなブレーキング、i-DMの青1ランプを点灯させる大きなきっかけとなりました。

ブレーキペダルに軽く触れると、写真の白丸辺りで僅かなGが発生。
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同乗者が意識出来ない、速度計にも変化が表れないほどの微細な制動Gにより、車体が僅かに前に沈む。
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沈み込みを追いかけるように、ブレーキを踏み足していく。沈み込みを追い越さないようジンワリと。沈み込みに離されないよう素早く。
そうすると同乗者に優しくかつ確実なブレーキングとなります。
微細な初期制動に対し同乗者が無意識レベルで備え、そこから滑らかに制動Gを増加させていくと、既に備えが出来ている同乗者にとり「いつの間にか減速が始まっていた」状態になり、ブレーキ不快指数を低減出来ます。
と、理屈では分かっていましたが、微細な初期制動からブレーキを踏み足していく匙加減が分からず、なかなか実現出来ずにいましたが、フロントの沈み込みに合わせて踏み足していくこの感覚が良い匙加減ではないかと感じております。
優しいだけではなく、制動距離についても急制動(白ランプ)と比べても遜色ない距離で停止できるように思います。制動Gの積分を鑑みれば白ランプの方が短いはずですが、心理面ではむしろ青ランプの方が短く止まれる不思議な感覚。
i-DMs先輩のブログで「青1ブレーキはタイヤが地面をギューっと掴む感覚」と仰っていましたが、なるほどと今ならその感覚が分かります。
まだ青1ランプ点灯率は5割にも達しておりませんが、狙って練習できるようになったのは我ながら大きな進歩だと思います。
前方への沈み込みは掴めるようになりましたが、横への沈み込みは未だわかっておりません。たまに垂直シートで練習してコツを掴みたいと思います。
車の挙動を身体で感じ取れる垂直シート運転練習、体感も体幹も鍛えられてオススメです。
おせちを羨ましがる犬の図
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2023/01/18 09:42:18