
皆様そうだと思いますが、私もクラシックカーを眺めるのが好きです。
車に限らず年月を重ねた一級品に魅力を感じるのはほぼ全ての人間に共通の感性だと確信していますが、といってもその大小は人それぞれで、私はその度合いが一般平均よりほんの少しだけ大きいようです。
そんな気配をみんカラ上でほんのり漂わせてしまっていたのか、嗅覚鋭いみん友のクラシックカーオーナー様から大変有り難くもお声がけいただき、所有されている50年ものの逸品を拝見・・・どころか乗せて頂けるとの嬉しさ過剰な機会を頂戴しました。
加えて現地には他にもマニア垂涎古今東西の名車が集うとの魅力的なお誘いに一も二もなく飛び付かせていただきました。
日曜朝、都内某所に名車達が集います。
現地に着くとすぐに目に入ったのはジャガーEタイプ。ドライブゲーム「ザクルー2」で苦労の末入手したあの車が目の前にある非日常感に脳の反応が少し遅れ、その周囲に並ぶ数々の名車旧車に徐ろに気分が高揚して行きます。
希少な野鳥や蝶がワラワラ集う秘境の生息地に出くわした気分です。
少し離れた所に茶色がかった渋い赤のベンツ450SLC、そしてそこに今回お誘い頂いたみん友様がいらっしゃいました。
ご挨拶して早速450SLCをじっくりたっぷり舐め回すように拝見させていただきました。
四角く低く重厚なデザインは、現代の車では諸々の制約で再現不可能なロストテクノロジーということで幾分混じった憧憬を差し引いてもやはり魅力的で、ガッツの大剣のようなダンディズムの香りを視覚で嗅いで下腹部がキュンキュンしてしまいます。
一方で、絶妙に配置されたメッキパーツや四角い車体と相反する丸みを帯びたリアガラスにグリフィス刺突剣のしなりのような淑女のエロティシズムすら感じ、自分が両刀使いになった気分、はたまたネコタチ兼任かと脳が錯乱。
50年経てもなお輝きを放つ美魔女なメッキに歴代および今代オーナー様の愛情と誠実さが伺えます。
個人的なツボは、テールランプの造形。
言わずもがなのボルテックスジェネレータの概念が50年前の車に採用されている事に温故知新。
次に内装を拝見致します。
外装でも感じましたが内装においても樹脂パーツがほとんど見当たらず、必要なところに最小限に使用しており、高級感というより上質感を強く意識させます。
目に見える個所は革張りで、ご教示いただくまでそれらが合皮であることに気づかないほどの作り。50年前の合皮は現代のものに劣ると先入観を持っていましたが、とんでもない思い違いでした。加水分解もせずにどうやって維持されているのかとも不思議に思いつつ。
アクセントのファブリックも、千鳥格子過ぎないドットがハイセンスセンスですね。
驚くべきはパワーウインド。私の実家の車がパワーウインドになったのは二十うん年前と記憶しており、それより何世代も前の車にこのような機構が組まれていることに驚きを超えて感動すらします。
外国車は電装系が弱いとよく耳にしますが、このクラスともなると話が違うようで、あるいはこの頃だからこその品質なのかモーターも健在。
内装の個人的ツボはドアミラーの調整機構。車内のドアミラー近くにレバーがニョキっと付いており、これでミラー角度を調整できるようです。運転視界が変わってしまうので弄れませんでしたがあわよくば小一時間弄り回してみたい。
モーターによる調整機構よりむしろ羨ましいパーツと思います。
もう一つ感動とともに哀愁も感じたのが、ラジオはPanasonicならぬNational製であったこと。この時代のわーくにはお疲れ様の国として頑張っていた。
写真はないですがエンジンルームも拝見。
ロータリーエンジンと見紛うばかりの巨大な吸気が目を引きます。そしてエンジンルーム自体がデカい!でも基本的な機構は現代も車もさして違わないところに車の奥深さと進化の行き詰まりを考えます。
ロングノーズに加えてフロントとリアの大胆なオーバーハングを見て、運転出来る自信がかけらもない車体に尻込みしている私を右助手席に乗せて数十分のドライブタイムです。
まず驚愕したのは綿密かつ贅沢な足回り。クラシックカーとはガタガタ走って楽しむものと思い込んでいましたがとんでもない思い違いで、私がこれまで乗ったどの車より、なんなら30年前に一度だけ乗ったベンツより上質な乗り心地でした。路面の凹凸をしっかり吸収し、でもフワフワしない。
話を伺うと、この当時の高級車は現代の高級車よりある意味上等な部品がこれでもかと盛り込まれていたそうで、これもある意味経済的ロストテクノロジーとも言えます。現代の車ではなかなか味わえない乗り心地を体験させていただいたみん友様、歴代オーナー様、当時の作り手の方々に改めて敬意を抱いた次第です。
低速域でも高速域でも変わらぬコンフォートを携えた走りに、早起きした要因も若干ありつつ眠たくなってしまった私を、トンネルに入って響きわたるエンジン音が一喝。
雄々しくもあり官能的でもあり。
外装にも感じた二律背反な要素を同時に味わえるお得感。
そういえば走りもコンフォートでもありスポーティでもあり。一体この一台にどれだけの要素が詰め込まれ味わえるのか。人生で一口か二口味わったきりのそこそこ上等なフランス料理の一皿でもここまでの奥深さ複雑さはなかったと詮無い比較。
また、車の性能ばかりと思い込んでいた乗り心地はオーナー様の技量にもよると判明。3速AT、5リッターV8エンジンのロングノーズを手足のように操り揺籠のような心地よさで走らせるその姿は、i-DMで技量向上を目指す私にとって大変刺激となり、さらなる指標を頂きました。
懐古主義、レトロ、クラシック、少し趣きを変えてスチームパンクなど表現が多々あるのは、それら魅力の構成要素も多々あるからだと思います。少し成分分析をしただけでも
当時の世情を感じ取る
歴史に思いを馳せる
古いものが今なお残る事の嬉しさ
今には無い技術
それに関わってきた人々の思いの地層の美しさ
等々、論えばキリが無いほど様々な要素がクラシックな一品には詰まっており、総じてそのこと自体がクラシックの魅力に思います。
散々クラシックカー讃歌なブログでしたが、じゃあ自分は所有するかと鑑みると、手間暇・費用・実用・知識、誠実さ、足りないものが多すぎてオーナーになる未来は全く見えず、改めて希少な体験の機会をいただいたオーナー様への尊敬と感謝の念を抱きました。
加えて言うと、当日出がけに奥様から「いってらっしゃい。クラシックカーを勢いで買って来ないでね」と、ロードスターに突然乗り換えた事への不満と皮肉が9割9分を占める見送りのお言葉を頂戴した事も、クラシックオーナー妄想ビジョンが今一つ鮮明にならない阻害要因と推測します。
ブログ一覧
Posted at
2023/03/07 20:49:24