前に書いた記事のコメントを
健太@名古屋さんに戴いて、同一エンジンの2.0GTでも5MT(ノーマル)と6MT(Spec.B)とでかなり公称燃費が違うのは、10.15モードでは6速を使えないからでは?というご指摘を戴いた。
なるほど、同一エンジンで異なるMTが採用されている例は気がつかなかった。レガシィって、つくづく面白い車だし、スバルってつくづく面白い会社だ。発売車種が少ないからこそこんな“お遊び”ができるのかもしれないが、一口に「レガシィ」と言っても、実はグレードやSpec.によって全く性格が違う車だと考えた方がいいのかもしれないなと思う。
それはさておき、Spec.Bだと公称燃費が悪くなる理由を改めて考えてみた。エンジンは全く同じだから、燃費の差はエンジン以外の差によるものとしか考えられない。確かに一番ありそうなのは、MTの違いによるものなので、例によってトランスミッションのギア比と減速比を乗じた値を比較してみる。すると、1~5(6)速の順に、
5MT: 13.01/7.737/5.328/3.996/3.034
6MT: 14.22/8.717/5.932/4.434/3.868/2.948
といった感じになっており、6MTの方は確かに全体としてローギアードにシフトされているし、これで6速目を封じられると高速域での燃費(15モード燃費)が大幅に悪化し、公称燃費に悪影響を与えているという可能性はおおいにありそうである。
ただ、カタログをよく眺めてみると、ノーマルとSpec.Bとでは実はタイヤ径が異なることに気づいた。Spec.Bの方はホイールが1インチ大きいので、タイヤ周長にすると4%ほど長くなる。従って、車軸の回転数が同じならSpec.Bはノーマルより4%余計に進む、すなわち、速度が4%速くなるということである。よって、燃費を議論するには上記の総合ギア比を補正して比較する必要があって、実際には
5MT: 13.02/7.737/5.328/3.996/3.034
6MT: 13.67/8.381/5.704/4.264/3.641/2.835
(補正値)
という比較になる。これでも、1~4速では平均6%程度、5速では20%ものローギアードなセッティングになっているから、公称燃費の比1.14、即ち、14%ほどの燃費の悪化の原因の一つであることは間違いなさそうである。ただ、10.15モードというのは時速40km程度の低中速セクションである10モードが3回も繰り返され、15モードは1回のみであることから、これほどの燃費の悪化を全てギア比のせいにするのはちょっと早計な気がする。おそらくは、タイヤ径が大きいことに起因する車重やバネ下加重、転がり抵抗の増加なども、その要因の一つであろう。
AT車の方は、トランスミッションは全く同じで減速比のみが違う設定で、Spec.Bが約10%ほど減速比が高い、すなわち、同じ車軸回転数を得るのにエンジンをそれだけ高回転にする必要がある。これは先ほどと同様、Spec.Bのタイヤ周長が4%長いことで一部打ち消されるので、理論上は5%ほどの燃費増加が見込まれる。実際には、公称燃費の比が 13/12=1.083 であるので、やはり3%分の差はタイヤ径が大きいことに起因する差と推測される。
こうしてみてくると、ギア比の設定は燃費にかなり大きな影響をもたらすものであることがわかる。逆に言えば、自分の車のギア比の設定を熟知した上で、無用な加速・無用なアイドリングを無くし、より燃費の良い運転を心がけることが肝要、ということでもある。つまり、心がけと運転の仕方次第で、車の特性をフルに引き出しつつ、燃費の良い運転をすることもできれば、逆に(無駄のない範囲で)愉しくスポーティな運転をすることも可能、ということだ。特に、レガシィの直近モデルのAT車にはほぼすべてパドルシフトが搭載されているところでもあり、ATに積極的に介入して、AT車でも良い燃費と愉しい運転を両立させることは、案外楽にできることかもしれない。
Posted at 2008/01/13 01:06:34 | |
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